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ボディーガードは次元戦艦オイナリサン!  作者: 矮鶏ぽろ
第一章 次元戦艦オイナリサン!
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帝国の命日 (挿絵あり)

ドルフィー銀河内の知的生物を人質に取られている真奈美とイナリに勝機はあるのか?

 帝国の命日


「――な、何ですって! そんなの卑怯だわ!」


 敵の黒い箱には聞こえていなかった。イナリが通信しなかったのだ。

 私の代わりに、イナリが喋ってくれた――。


「私は次元戦艦オイナリサン。艦長真奈美の護衛任務中。艦長にとってヌガヌグ帝国は――敵。制圧しているドルフィー銀河の民のことなど、考えてなどいない。現に真奈美艦長は今朝も納豆菌数千万の命を何の躊躇もなく死滅させたばかり。納豆菌は真奈美にとって有益にも関わらず滅ぼした。この生物にとって他の生物や文明など、ただの道具!」


 コラコラコラー!

「ちょっと、待ってよイナリ! なに勝手に喋ってるのよ!」

『時間稼ぎ中。心配無用』


「真奈美艦長の慈悲により滅亡を抑制していたが、こちらにも同様のミサイルがある。発射!」


 イナリがそう言ったのと同時に、異次元空間から見たこともない、超大型の黒いミサイルが敵艦の上すれすれを飛んで、敵要塞へ向かって飛び続けていく――。


 イナリよりも桁違いに大きい! 轟音とともに、敵の要塞に吸い込まれるように飛んで行く――。

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれー。」

 焦ったのは黒い箱である。


 機械の箱が取り乱してものを言うのを見ると、……思わず笑えてくるじゃない!

「プ、ププ……」

 不謹慎にも吹き出してしまった。


「見覚えのあるミサイルであろう。貴様らヌガヌグ帝国の超大型ミサイルだ。真奈美艦長にとっては貴様らなど、お笑いのネタでしかないのが分かったであろう。貴様は三分間時間をやろうと言ったが、こちらは一分で回答をもらおう」


 ミサイルはおおよそ、三分で敵の要塞に到達するのだろう……。


「ねえイナリ。あんなもの何処で回収したのよ」

『この間、木星で遭遇した艦隊を異次元で叩いて伸ばして、それっぽく作り直した。実は中身は空っぽ。ただし異次元コーティングをしているため、敵にはバレない。見抜けない。誤魔化し中』


「わ、分かった。我々の負けだ。敗北を認める。駐留艦隊とミサイルを引上げる。ミサイルを停止させてくれ……」

「一分でやれ」

 イナリの発射したミサイルは全く止まる素振りはない。


 敵は必死に通信中なのだろう、黙ってしまった。

『ドルフィー銀河系に散らばった駐留艦隊に撤退命令を出し、一分で引き上げるのは、よほど統制のとれた艦隊運用が出来なければ不可能。カウントダウン中』


 黒い箱が生物なら……冷や汗をたんまりかいているだろう。


「ねえイナリ。あのハリボテミサイルが敵の要塞に当たったらどうなるのよ」

『そりゃあ転がるだろう。鈴のように大きな音を立ててゴロゴロ~って』


 その想像をしてまた吹き出してしまった……。ゴロゴロ~ってなによ~!


 大勢の命がかかっている場面で真奈美が笑う映像を見て、黒い箱は心底恐怖した――。


「――全駐留艦隊を完全に各惑星宙域から遠ざけました。ミサイルを止めてくれ!」

「異次元通信にて停止を確認。ミサイル一端停止」

 イナリが発射したハリボテのミサイルは、ピタッとその場で止まった。


「で、どうするの。私達が引き揚げた後、ヌガヌグ帝国は大人しくしていると思う?」

「それは皆無。ドルフィー銀河制圧後、次々と他の銀河の制圧を計画中と解析」


 つまり、私達が去った後、結局はドルフィー銀河の生物は全て滅び、ヌガヌグ帝国が他の銀河を制圧していくのは避けられないってことなのね――。


「ヌガヌグ帝国のミサイル遠隔起爆方法を解析完了。――今なら全ヌガヌグ帝国艦隊の壊滅が可能。全滅が賢明。許可を――待機中」


 ……艦内に静寂が訪れた……。


 

 ――この帝国の進化は完全に間違っている。しかも私の敵。

 でも地球よりも長い歴史と文明を築いてきた。それを……私の身の安全だけの理由で滅ぼしてしまってもいいのかしら……?


 このヌガヌグ帝国の人達にも大切な物や守りたい物があるはずだわ。

 ……例えば、大切な家族を待つ人……じゃなくて、大切な黒い箱? 大切な……何だろう? 


 モニターには黒い箱が映ったままになっている。悲しいのか笑っているのか、何を考えているのか私には分からない……。


「ねえ、イナリとか機械って、何が大切なの?」

「任務の達成と自己の永続。待機中」

「……そうよね。


 ――私は人間だから、そんな自己の永続だけを考えている機械に躊躇する必要はないわ……」



 ――やっつけて……



「了解。異次元粒子砲発射準備――」

 次元戦艦オイナリサンの白く光沢ある甲板から3門の砲身を持つ砲台が3台せり上がった。

 その砲台の姿は――、大日本帝国海軍が建造した大型戦艦の物に非常~によく似ているのだが、……真奈美はそんなこと、まったく興味ない!


「なによこれ……? 異次元粒子砲とか御大層な名前が付いてるから、この間の散核波動砲みたいな大きなのが出てくるかと思ったのに。こんな小さい砲台で、本当に敵の戦艦をやっつけられるの?」

「1台の1門でおつりがくる。発射準備完了」

「おつり? 大丈夫なのね? 信じるわよ。じゃあ――、


 全砲門、発射――!」


 一瞬砲台から高い吸い込み音がしたかと思うと――、一瞬だけ目の前が真っ白になり、大きな音とともに閃光が敵の旗艦を貫いた。


 ――モニターに映っていた黒い箱も、真っ白に消滅した――。


「本当に……たったの一撃なのね……」

 息を飲む暇もなかった――。

「敵要塞にも直撃し、崩壊を開始している。待機中」

 まだ何も変化が見えない。だいたい要塞まで届くの?

「真奈美の目視では光の速さ以上は確認不可。1秒後に見える」


 敵艦を貫いた閃光が、真っ直ぐ敵要塞の中心を貫いて、要塞は内部から大爆発を起こした。

 

 ――爆発音も半端ではない!

「ドガガガ! ドガガガガ~ン! 爆発音は忠実に再現中。ダガガボコンコンコン!」

「やかましいのよ! ワザとやってんなら少し音量下げなさいよ」

 大爆発はそのままで、音だけが全く聞こえなくなり、静かになった。

 

 真夏の花火大会のフィナーレを……遠くから眺めるような……切なさを感じた――。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

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