異次元粒子砲の威力 (挿絵あり)
次元戦艦オイナリサンは、主砲である異次元粒子砲を発射する!
異次元粒子砲の威力
テレビのニュースは昨日の閃光からテレビ局の事故になり、さらには急に出現した隕石の報道となっている。
世間はまだパニックにはなっていない。但し隕石の映像がハッキリ公開され、その軌道が地球に衝突することが分かれば、混乱は回避できないであろう。
「今回は地球規模にデフォルメされた兵器ではなく、私の主砲の一つを使用する」
「ええ、ええ。どれでも構いません。どうぞ派手にやってしまって下さい」
さすがに少々の犠牲はやむを得ない――などとは言わない。
だが、土曜日までに何とかしなくてはならないのだ。夜にまた、学校の裏山へ来ていた。
前回の散核波動砲は外国や宇宙へ移動して発射していれば良かったと後悔している。今回はもう開き直りだ。閃光もあえて隠さなくてもいいと言った。
不安と恐怖を一刻も早く消し去って欲しかったのだ。……私の身勝手にイナリは、つくづく嫌になっているのかもしれない。
「異次元粒子砲発射準備中」
また足元を見たが、今回は足もとにせり上がってくる物はない。今回は……頭の上からニョキニョキと、竹の子のように生えてきた~!
「ちょっと、何か絵的にすごく恥ずかしいんだけど!」
頭の上の竹の子は、電柱サイズに大きくなり、さらに直径1mくらいの白色の筒状になり、正確に小さく光る隕石の方を向いた。
「じっとしていないと……外れると大変よね……」
秒読みの間、本当に大丈夫かしら……。足がカクカク震えそうだわ――。
「前回より短時間での発射が可能。発射!」
「え、ちょっと待ってよ」
少し高い音が一瞬聞こえ、思わず眼をつぶってしゃがんで耳を塞いだ。
動いたら外れてしまうかもだわ!
近くの星とかに当たったら大変なのかも!
「発射完了。目標物破壊完了。待機中」
その声に、ゆっくり立ち上がって空を見た。
発射前にも見ていた小さな星は……まだある――。外れた――?
「何してるのよ。まだ発射していないの? もしかして、急にしゃがんだから外れた?」
発射中にしゃがんでしまったのだ。方向が大きくズレてしまったのだろう……。
「発射は一瞬で完了。目標物の破壊は目視で確認できるまで二〇秒必要」
「二〇秒? ……ああ、遠過ぎてまだ見えないだけね。でも主砲の閃光が見えなかったのは何故?」
「主砲は光速以上の速さのため、見上げていても真奈美は目視は不可。待機中」
ゆっくり数えながらその目標物を見守っていると、音も立てずに一度煌いて、消え去った――。
一息吐いてイナリに言った。
「あ……ありがとうイナリ。帰ろうか」
「樋伊谷家前へ転送中。完了」
瞬時に自分の家の前に降り立っていた。夜はまるでゴーストタウンのように静かだった。
次の日のニュースは、決して見ないと心に誓った――。