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ボディーガードは次元戦艦オイナリサン!  作者: 矮鶏ぽろ
第一章 次元戦艦オイナリサン!
32/196

酒盗になったニュースキャスター

次元戦艦は遂に日本でも被害者を出してしまう。真奈美はイナリに激しく抗議するのだが、「寿命が1年早まっただけ」とイナリが言い訳をする。

 酒盗になったニュースキャスター


 いつの間に眠ってしまったのだろうか。瑠奈が私の部屋に勝手に入ってテレビを見ていた。

「あ、やっと起きた。大変よ、これ見てよ」

 目をこすりながら見るとそこには、私がさっきまで居た高校が映っている!


 校門のところには、映画等で目にした黄色いテープ「KEEP  OUT」が張ってあり、自衛隊が校門の両端に数人立っている……。

「何よ。どうしたのこの騒ぎは?」

「今日からしばらくお姉ちゃんの学校は閉鎖になるらしいわよ。事件の真相が何か分かるか、安全が確保されるまでだって。それとお姉ちゃんの高校だけでなくて、付近の小中学校や会社とかも今日からしばらく休みだって。受験はどうなるんだろう……」

 昨日の閃光の発射元がこの辺りだってことで色々調べに来たのね……。何も出てくるはずないのに……。

 妹が私の部屋から出て行った。休憩時間の終了ってことだろう。


 私はそのままテレビを見ていると、今日、出会ったニュースリポーターが早速テレビに出ていた。

 学校から続々生徒が下校するところを撮影し、生徒数人にインタビューしていた。

 ――あ、則子と佳奈が後ろを通ったわ!

 事件じゃなかったら……往復して何度も映ろうとするんだろうな……。そんなつまらないことを考えながら、全国的に有名になってしまった学校を眺めていると、画面が突然スタジオに戻った。


「突然ですが、たった今、昨日の決定的瞬間のスクープ映像が当番組に送られてきました! 何と! 昨日の日本列島全地域で観測された閃光の発射シーンの模様です! えーと、何とそこには、女性らしい姿が映っているそうです! 当局独占のスクープ映像です――!」


 ――何ですって! それって私のことじゃないの! 

 

 テレビに近づくと、画面が真っ黒の夜を映し出す画像へ切り替わった――。

 スマホかドライブレコーダーで撮影されたのだろうか……。画質はかなり荒い。

 音声では、「人が浮いている~」とか、驚いている声が入っている。


 私が見ると……暗くてもよく分かる。

 足元にせり上がってきた散核波動砲の砲門は、恐らく異次元シールドで周りからは見えなかったんだ……。

 だが、私の姿だけは、しっかり映ってしまっている――。


 そして、その足元の暗闇が突如真っ白に輝き、撮影者の悲鳴と感想後に、その撮影は終了した――。

 しばらく空いた口が塞がらなかった……。


「それではもう一度今の映像を見て頂きましょう。今の女性が映っているところを拡大できますか?」

 ニュースキャスターがそう言う。


 拡大なんて――やめて――!


 ――生まれてからこれまでに、これ以上強く心をあらわにしたことはなかっただろう――。

 テレビに向かって手を差し出していた――。

 私の映像は再度放映されることはなかった。――全く違う結果で放映が中止した――!


 ブッ、ドドドーン――!


 ――真剣な顔をして話していたニュースキャスターが……、瞬時に真っ赤な塊に姿を変え、爆煙と共にスタジオの後ろへ吹き飛ばされた――!


 ――全国中継で……その残虐な光景が放送されてしまったのだ――!


「キャー――もうやめてったらー!」

 手を伸ばしたまま叫んでいた。

 

 テレビはまだ……煙などを中継したままになっている。

 何が起こったのか分からないまま時だけが経っている――。10秒くらい生々しい黒く焦げた塊りが撮影され続け、ようやく画面がテストパターンのような映像に切り替わった。


 私の目にはこう映っていた。

『危険信号レベル大を検知。表裏反転処置後、火炎激直砲速射。対象物機能停止確認。待機中』

「なんてことするのよ。説明しなさい!」

「危険信号レベル大を検知。表裏反転処置後、火炎激直砲速射。対象物機能停止確認。待機中」

「そんなこと……見ればわかる! 何でまた罪もない人を殺すのよ!」

 頬を冷たい涙が流れ落ちるのが分かった……。


 ――イナリに気持ちが伝わらない。私の気持ちがまるで伝わらない――


「危険信号レベル過剰。血圧上昇、興奮錯乱状態抑制実施中。完了」

「だから、それはもうしなくていいって。イナリ」

 私はどうにかなりそうだったが、……イナリの興奮錯乱状態抑制処置にて、今だけは気を落ち着けることができた。

「イナリ。私の護衛が任務なのはもうわかった。土曜の夜までそれを続けるのが任務であっても他人を殺しては絶対駄目。危険信号とかを検知しても決してしないで!」

「処置としては最適と判断。滅亡時期が推定一年早まっただけ。待機中」

「だから――、滅亡するのは私達人間の定めって言いたいんでしょ! って言うか、イナリはあのニュースキャスターが一年後に死ぬって分かったわけ?」


 だからといって殺した事実に何も変わりはない――!

 決して許されない行為よ――!


「ニュースキャスター以外も、地球上の生物は一年後に滅亡と推定。真奈美も我が護衛がなければ同時期に滅亡。待機中」

「なんでよ。未来のことは分からないんでしょ! 昨日、多くの犠牲者を出したけれど、核兵器を全部破壊したんだから五年間は滅亡しないって言ったところじゃないの! あんたの制御装置は本当に不良品になったの?」


 私も興奮している。私こそ不良品になってしまいそうだ――。


「地球へ向けて隕石接近を確認。現在火星軌道を通過。一年後の衝突確実。回避、破壊ともに現在地球上の兵器では不可と推測」

「はあ? 隕石? そんなのどうせ嘘でしょ」

 涙を拭って問い掛ける。

「次元戦艦嘘つかない。冗談はまれに言うが」


 ――大事な話では冗談と嘘の違いを明白にしてくれてないと困る――!


「隕石なんて聞いてないわよ。一体いつ分かったっていうのよ!」

「先程の火炎激直砲を発射するちょっと前。それまでは分からなかったのではない。それまでは無かった。つまり……、


 ――突如隕石が出現した――。


 私の異次元索敵レーダーは高性能。完璧。私は不良品ではない。待機中」


「なんでよ! 隕石なんてそんな急に降ったり湧いたりするもんじゃないでしょ!」

『光速から突如減速すれば現象としては降ったり湧いたりという表現と一致。出現状況を分析すると光速以上からのワープアウトをして出現と推測』

「なんで声に出さないのよ!」

 急に表示のみになったイナリに憤りを感じ、問いただした。

『樋伊谷瑠奈接近を確認。待機中』


 ドンッ!

 荒々しく部屋の扉が開けられる――。

「お姉ちゃんうるさい! 静かにしてよ」

 相当怒って瑠奈が入って来た――。

「なに一人でトチ狂って喋ってるわけ? 受験勉強できないじゃないのよ!」

「――受験勉強どころじゃない! 勝手に入ってくるなバカ!。出ていけ――!」

 血相を変えて枕を投げつけてそう叫ぶと、妹は逆ギレされて驚いたのだろう……。

 唖然とした顔で部屋を出て行った。


「――で?」

「で、出現角度より、故意的に地球軌道へ射出されたものと推測。ただし目的が不明」

「なんでよ! 地球に向けて隕石飛ばしてくるのなら、征服か侵略が目的に決まっているじゃない。あなたの主の仕業じゃないの?」

(あるじ)及び全ての次元戦艦には返答確認済み。征服が目的であれば、それは不可。何故なら征服対象が原型を保つことは不可能」

「どういう意味よ」

 あまり聞きたくない。寒気が背中を掛け下りていく――。

「真奈美に分かるように言うと。隕石の直径は約1万キロメートル。月の約三倍。ぶつかった瞬間に地球は木っ端微塵」

「そんな馬鹿なこと――あるわけないじゃない!」

「元時刻なら、窓からでも火星軌道上に肉眼で確認可能」


 言われるがまま窓を開けて仰ぎ見ると、昼間なのに小さいが明るい星が一つ見えた――。

「あ……あれのことなの……」

「拡大投影」

 イナリがそう言うと、目の前の小さな点のような星がどんどん大きく見えてくる。

 

 その姿は隕石ではなく、まるで惑星だ――。

 球状を保っているが表面は月のように、無数のクレーターがハッキリ見える。


 また足が震えてきた――。

「あれが一年後に接触するというのね……何とか……何とかできないの?」

「人間には不可。核兵器が昨日までの一〇〇倍あっても割ることも、軌道を逸らすことも不可能。待機中」


 ……。

『……待機中』


 いくらなんでも都合が良すぎるかとも思う。でも今は、そんなことに構っていられない。

 少々の犠牲……? 私は被害者……?


 もしかするとこの地球の行く末が今、私の手にゆだねられているのかもしれない――。


「……イナリなら……何とかできるの?」

「真奈美の護衛は土曜まで。それまでなら護衛のために隕石の破壊は楽勝のラッチャン。待機中」


 夜になるのを……待つことにした。


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