絶滅のリスクは回避されたのに……
散核波動砲で世界中の核兵器を破壊した次元戦艦オイナリサン。真奈美はこれで平和に過ごせると思ったのだが……。
絶滅のリスクは回避されたのに……
朝起きて階段を降りていつものようにパンを頬張ると、父親がテレビにくぎ付けになっている。
「お父さん会社遅れるわよ?」
「ああ、すまない。みんなも気をつけるんだぞ」
一体何に気をつけろって言うのよ? また痴漢でもニュースになっているのだろうか?
昨日の私は、悩みがスッキリ解消され、グッスリ眠れて……、まだ頭は半分しか起きていない。
新聞の一面記事は特に普段通りのことしか書いてなかった。
異変に気がついたのは、電車に乗る時だ。
乗客が少ないのだ。いつもの半分も乗っていない。恐怖の四両目でもないのに……変だなあとは思いながら、学校へは行かないといけない。客の少ない電車へと駆け込んだ。
他にも変なところはあった。
何人もの警察が、駅やその周辺をうろうろしている……。
電車を降りて学校へ向かう途中、佳奈に会い、いつものように挨拶を交わし、
「ねえ佳奈。この辺で何か事件とかあったのかしら?」
「ええ! マナ……今朝のテレビ見なかったの? 昨日の夜、一回光ったでしょ。丁度その時に世界中で被害が起きたんだって! 最初は宇宙からの侵略とかが疑われたらしいんだけど、衛星写真からその被害を起こした光線が日本のこの辺りから出たって確認されていたらしいのよ!」
「へえー、そうなんだ」
何のことだか分からない……フリをした。
昨日のイナリとのイタズラが、どうやら大騒ぎになっているらしい――。
いつもの教室へ入ると、その大騒ぎは、ただのイタズラでは済まされないほどの騒ぎだと知った。
窓から見える裏山の形が、えぐり取られたように消えている――。
ところどころで地下水が溢れている。直径数百メートルの半球体状に、山が奇麗にえぐり取られているようだ。
「どうなってるのよ! 裏山が無いじゃない!」
「トンネル掘る必要もないわね……」
「やっぱりこれは宇宙人の仕業に違いないわ!」
そうなのだ! これは宇宙人の仕業なんだけど……そうさせたのは地球人の仕業なのだ……。
知らないうちに足がカクカク震えているのに気がついた――。
則子が……近づいてきた……。
「おはよう真奈美。佳奈。朝のニュース見たでしょ」
「うん、見た見た! 世界中の色々な軍事施設で、何百人も犠牲者が出たんでしょ」
それを聞いて耳を疑った――。
「え、犠牲者が出たって――どういうことよ!」
二人は私に教えてくれた……。
「昨日の光が原因かどうかはまだ分からないけど、世界各国の軍事施設で、何人も人が死んだのよ――」
「新しい兵器の開発が危惧されるって、各国が日本に説明を求めているらしいんだけど、これからどうなるんだろう――」
思わず後ずさりをしていた……。
「どうしたの、真奈美。顔色悪いわよ」
則子がそう言って近づいてくる……。
「わ、私のせいじゃないわ!」
ガクガクの足で、なんとか教室から逃げ去った――。
「真奈美、何言ってるんだろ?」
「さあ?」
則子は両手を見せて、分からないって姿をしていた。