表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボディーガードは次元戦艦オイナリサン!  作者: 矮鶏ぽろ
第一章 次元戦艦オイナリサン!
27/196

天秤

橘君に急接近した五十鈴佳奈だったが、彼の気持ちに変化がないことを知り、傷付いてしまう……。

 天秤


 放課後。いつもなら佳奈と帰るのであるが、今日はどうやら一人で駅まで向かわなくてはならないようだ。

 掃除が終わり鞄に教科書を詰め込むと、則子が私のところへ来た。ここ最近、則子と急に仲が良くなった気がする。もしこれで則子も橘君を狙ったりしたら、話はさらに複雑な方向に発展してしまうのだが、イナリに言わすと、

『田中則子の頭にはソフトボールのことしかない。偏った脳の使用は非生産的。待機中』

 だそうだ。何を生産するのやら……。

「真奈美、部室までなら一緒に帰ろうか」

「うん」

 則子は私と違って大きなスポーツバックで通学している。私は鞄を持つと二人で教室を出た。

 

 最悪なタイミングとは、前触れもなく急に訪れるものである。私と則子が1階まで階段を降りて下駄箱へ向かうと、なんと前方から橘君が歩いてきた――。

 しかもその隣には――佳奈が居る。

「うわっちゃー」

 言ったのは私でない。則子だ。なんとマズイところで鉢合せになってしまったことやら……。

 ――私は何も言わない。佳奈とは目も合わさない。

 ――佳奈も分が悪い顔をしていた。

 黙って通り過ぎるはずだったが、……口を開いたのは、橘君だった――。


「則子さん。俺、まだ諦めてないから!」

 

 ――急に何を言い出すの!


 そう思ったのは、橘君以外の女子3人であった。

 やっぱり橘君の気持は何一つ変わっていない。でも、そんなことは佳奈だって知っていたはずなのだが……。

 ――佳奈は下唇を噛みしめながら、急に廊下を走り去ってしまった。そんなことに構いもせず、則子の方を見て目を放さない橘君を、……私は許せなかった。


 橘君の頬をビンタしていた――。


「佳奈の気持ちも知らないで! 最っ低!」

「――!」

『――!』 

 振り返り、走って佳奈を追いかけた――。


 橘君は……何が起きたかわからない顔をして突っ立っている。

 一つ大きくため息をついて則子が橘君に話しかけた。

「橘君って意外と不器用でしょ。私みたいに、どちらかに決めたら?」

「……? え? 樋伊谷真奈美か、五十鈴佳奈かってことか? 僕は二人には興味はないんだ!」

「――そのどちらかじゃない!」

 橘君は叩かれた頬を軽く触って、則子を見つめる。

「不器用なあなたが、野球と恋愛の掛持ちなんて無理でしょ。どちらか一つに絞りなさいよ。――それで恋愛って言うのなら、私も思いっきりぶん殴ってあげるわ――!」

 そう言って則子は下駄箱へ歩いていった。則子の両手は堅く握り拳をつくっていた……。


 橘君は練習試合の時と同じように、その場に立ち尽くしていた――。


「――佳奈、待ちなさいよ!」

 泣いて走る佳奈を追いかけていた。

 ――何で私が佳奈の心配をしているのだろう? さっきまで喧嘩をしていたのに――。

「来ないで! どうせ分かってたんだから!」

 ――だったら、泣きながら走ることはないじゃない!

 ……何か佳奈を止める方法はないものだろうか? 


『橘太郎と田中則子を、二人っきりにするのは失策と判断――。危険』

 

「――! そ、そうよ佳奈! いま橘君と則子は二人っきりよ! まずそれを何とかしなくちゃ!」

 佳奈は校内シューズが磨り減るような音を立てて急に方向転換をした。

 先ほどの場所へ戻ろうと走って行く~! 真奈美の目の前を今度は反対に走り抜けて行った。


 ――あらら?


「な、なんて単純なの。――それでいいの、佳奈?」

『躊躇している時間が危険。適切な判断。待機中』

 ――じゃあ、私もウカウカしてられないわ! 来た廊下をまた走って、佳奈を追いかけた。


 下駄箱近くで橘君が座り込んでいるのを、佳奈とこっそり覗いた……。

「可愛そう……」

 励ましに行こうとする佳奈の手を握って――それを制した。

「しばらく放っておいた方がいいわ。橘君だって考える時間が必要よ――」

 佳奈も分かってくれた……。笑顔で頷いてくれた……。

「そうね。……ごめんねマナ。私もどうかしていたわ……私……」

 色々話そうとする佳奈に、

「分かってるって。それに、そんなのお互い様よ……」

 二人で笑い合った。


 ――そうよ、私達の友情はそんな簡単に壊れるようなものじゃないのよ。


『友情も愛情も築き上げるには長期間を要する。そのくせ、些細なことで一瞬にして崩壊する。理解不能。私には不要。ただし二足歩行生物には必要と認識。待機中』

 イナリがそう表示していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ