昼寝はほどほどに
日曜日だというのに、真奈美は暇を持て余していた。
イナリに宇宙の時間が進む原理を聞くのだが……子守唄にしか聞こえないのであった。
昼寝はほどほどに
昨日とは打って変って暇を持て余す日曜日……。
昼過ぎまで部屋でゴロゴロしていたが、こんな時、話し相手が居るというのは、ありがたいことなのかもしれない。
「ああーヒマ。ねえ、イナリ。異次元で待機してるのって暇じゃない?」
私ですらこんなに退屈なのだ。
異次元がどんなところか、よく見たことはないのだが、宇宙より色々な物があるとも思いにくい。
「――暇。昇進するには功績を蓄積しなくてはならない。現在私の功績は5ポイント。真奈美護衛の任務を達成して得られるポイントは1ポイントと推測。昇進にいつまでかかるか不明。退屈中」
「大した任務じゃなくて悪かったわね!」
「謝罪は不要。我が主の命令は絶対。それに、任務が与えられない期間は異次元待機により大宇宙への移動は禁止。それに比べれば、例え真奈美の護衛とはいえマシ。こんな任務でも暇つぶしにはなる。待機中」
「暇つぶしねえ……。今日の私と同じね。それで何ポイントくらい稼げばイナリは昇進するのよ」
「一億ポイント。現在5ポイント獲得」
「遠い――! 私の護衛もいつまで続けるかすら分からないんでしょ! だったら何年かかるか分からないじゃない」
「主の命令待ち。真奈美を死なせては任務達成失敗になり、ポイントは入らない。全力を尽くす。待機中」
「でもいずれは寿命がくるわ。長くても、……あと80年位かかるかもしれないわよ」
「寿命であれば任務達成。だからそれ以外で真奈美が死なないよう護衛中」
80年護衛をし続けて、それでたったの1ポイント……。先は長そうね。考えるだけで気が遠くなるわ。
「ところで、現在の5ポイントって、どうやって稼いだの? やっぱり何年もかかったの?」
「先日の多次元戦艦20202による主への悪口を転送して、功績として受領した。感謝中」
「――それで5ポイントも貰えたの? ……私の護衛は達成しても1ポイントなのに?」
――えらく私の護衛は安い仕事なのね。何か……ムカつく……。
その主ってやつの顔が見てみたいものだわ。 ――いっぱい文句を言ってやりたい!
「真奈美には不可。私でさえ主の容姿を直接拝見したことはない。データも頂けない。君達二足歩行生物で言う「神」またはそれに類するお方。待機中」
「はいはい。すごいね」
私の中で神様って、誰だろう……素敵なオーベル様かしら。橘君ではないわね。きゃっ恥ずかしい!
「前言撤回。神とは「好みの男性」という意味で認識していなかった……。修正中」
神様の認識違いってことね。
――よくあることだわ――。
「ところで、暇な時に異次元で暇つぶしとかはできないの?」
「異次元制御を行っても、時間進行速度は大宇宙以上に速くするのは不可能。反対に遅くするのは可能。異次元内では範囲を区切って時間停止するのも可能。しかし、異次元で時間進行速度を遅くして暇つぶしをすることは大宇宙に戻ると時間の浪費。物理的にモッタイナイ。待機中」
あまりにも――よく解らない~!
「簡単に言うと。異次元で時を50年止めて大宇宙に戻れば、真奈美は16歳。則子は66歳。これは可能。逆に異次元だけ時間を早く進めて大宇宙に戻るのは不可能」
「何でよ。なんか理由でもあるの? 異次元を制御できるのが、次元戦艦~って、前に自慢していたじゃない」
「――大宇宙が膨張し続けているため、時間が進行し続けている」
「時間の進行速度は、光速と同じで秒速30万キロメートル。私は異次元空間80318を制御できるが、制御をするには時間進行は必ず必要。そのため、異次元も膨張させ続ける必要があるのだが、秒速30万キロメートル以上の速さで前に言った宇宙や次元の半径を広げることは不可能」
「……つまり、膨張させないと時間は過ぎないってこと? それでこの宇宙より早く膨張させることはできない……」
「そういうこと。異次元でこっそり昼寝しても、大宇宙での時間も同じ時間経ってしまう」
そう言ってくれれば良く分かるのよ。
……全く。昼寝なんて言うから眠くなるじゃない~。
「おやすみ。イナリ。また暇つぶし相手になってね」
「昼寝は大宇宙での時間浪費。過ぎた時間は絶対に戻らない。真奈美は浪費家。待機中」
丁度いい子守歌だわ~。
起きたら外は――暗かった。