侵略は続く
ついに宇宙人(?)が地球を侵略し始める――!?
侵略は続く
「――イナリ! イナリなの!」
「真奈美! 久しぶり。また会えて感激の極み中」
「じゃ、じゃやあ、復元してもらえたのね! 良かった……本当に……うう良かったあ~」
必死に涙をこらえて鼻をすする。
「でも、……どうして? あのバカサラマンは、そうそう自分の言ったことを変えたりしないんでしょ?」
「真奈美を生き返らせたのは、ローパジウムであった。ローパジウムにとっての大宇宙は自分の異次元同様。機械とは違った特殊な制御が出来ると推測。その為、サラマン様が私を消滅させるのはおかしいと、あれから……あれこれ言い争いになった……とゴジュルヌが言っていた」
「良かった! 本当に良かったわ! ティッシュ頂戴!」
「――ちっとも良くないと憤慨中!」
差し出した手にはティッシュが現れず、なんか……怒ってる~?
「私は! 私は! 宇宙制御戦艦から恐るべき四段階降格し、次元戦艦に成り果ててしまった~! 任務も宇宙制御の重大な任務から、たかが真奈美の護衛などという陳腐な任務へと降格! 落胆を隠しえない状態。はあ~ため息中。いや、ため息大! 極めて大中!」
「バカイナリ! 機械のくせに、ため息なんかつくな! どれほど心配したと思っているのよ」
「心配? 真奈美が私を? ――私の事より自分の心配をした方が利口と判断! 現在も偽物にコロッと騙されかけていた。危険大と忠告中」
――人間の目に有機粘土細工と本物の見分けなんか出来るか!
そう怒る私の声に対して……イナリの話し声が聞こえてくる……。誰か他にも異次元にはいるようだ。
「このヌガヌグ帝国の生き残りですが、許可を頂ければどこか辺境の地で存続を許可して頂きたいのですが、構いませんか?」
「うむ、許可する。いくら軍事勢力国家といえども、全てを滅ぼさなくてもよい。再建の機会を与えてやれ。ただし、我が『サラマン共和平和明日も平和帝国星団』へ絶対の忠誠をさせよ――」
「――御意!」
瞬時に橘君もどきとディアブロ君もどきは……目の前からその姿を消しさった。
イナリが異次元へ転送したのだろう。
そして振り向くと、そこには……このあいだ、バーベキューを共にした面々が立っている……?
豚のような鳥が、青と赤の二つの石コロの宇宙人と……公園で遊び始めるてる~!
そして……人の姿をしたサラマン3Dとゴジュルヌ3Dまでもが地球の地に降り立つ。
「おいイナリ。ヌガヌグ帝国の残党に伝えておいてくれ、「忠誠」なんて堅苦しい縛りが嫌ならいつでも小宇宙へ来てゴ・ジュルヌ共和平和星団へ入るようにとな。こっちは自由だぞ~」
「フン! 却下! 敵星団の言う事は聞く必要皆無! さっさと小宇宙へ帰れと進言中。第一……なんで地球へ着いてきたか尋問中」
「俺がどこへ行こうと、俺の勝手だろ」
大きく深呼吸する――。
「あ、コラコラ! 地球の空気を吸った分は必ず返せと忠告。他星系内物質横領罪! 極刑!」
「なにを言ってる? この星はまだサラマンの占拠領域じゃないだろ」
「時間の問題!」
ゴジュルヌとイナリが言い争いを始めているわ。
……決して珍しくないんだけど……あきれてしまう。
「細かい事は別にいいじゃないの」
イナリとの再会を果たし、私も本当は嬉しくてたまらないのだが……その他大勢のせいで、その興奮すら冷めてしまった……。
「それよりサラマンはなんで地球に来たのよ。いつも忙しいって言ってるくせに。また暇つぶし?」
「違うわい! この星に……このあいだのどさくさに紛れて、私の養鶏所から勝手に脱走したニワトリが二羽いるのが分かったのだ。そいつらを捕まえて帰らないといけない。そうしなくては数千年後、地球の生態系が大きく変化してしまう」
どうやってニワトリが地球まで辿り着いたのか……まさか、
「脱走したニワトリが二羽って……おっさんギャグ?」
「おっさんではない! 宇宙の神、サラマン・サマー様と呼べ。この星がニワトリの惑星になっても私は構わないのだぞ~!」
ニワトリが地表を埋め尽くし、サラマンがそれに餌を与える姿が頭をよぎり、寒気がした。
「寒気は緩和不可。待機中」
イナリまでそう言っている。
「緩和なんてしなくてもいいわ。そんなことより、とっととサラマンとかを追い返しなさい!」
「了解。異次元へ転送――。あ――! 異次元消失の為――不可能!」
イナリがそう言うと、……サラマンとゴジュルヌがニヤニヤしている……。ちょっと危ない。いや、怪しい顔だわ!
「――たかが次元戦艦ごときの異次元転送がこの私に通用するものか。さあ、ニワトリを探すとするか」
「俺も暇だから手伝ってやろう。ハトト、ハトト、はよ来いよ~」
「ニワトリは鳩じゃない! ハトトと呼ぶのはやめろ!」
「ハッハッハ、いいじゃないかどっちでも。ハトト~ハトト~」
「良くない! だいたい貴様は3D映像のくせに呼吸などするな」
「お前もしてるじゃないか……」
そんな話をしながら……二人は歩いて……おいおい、公園を出て行ってしまったわ……。
問題だけは起こさないで欲しい……。
ちょっとした、宇宙人の侵略なのかもしれない……。




