立ち直るために――
地球へと帰ってきた真奈美は、イナリを失った悲しさと寂しさから立ち直る為に、男子二人に電話を掛ける……。
立ち直るために――
泣いてばかりいられない。
私はこれから一人で生きていくの……。
いや、今までが特別だったのだ。それに私は一人じゃない。家族も居るし、友達も大勢居る。普通の女子高生に戻るだけなのだ……。
もう私は昔の私じゃない。自分の考えで強く生きていくのだ。あの宇宙人達が自分の考えるまま自由に振舞っているように――。
メモを見てスマホの画面をタッチする――。
「トゥルルルル、――はい橘です」
「もしもし、あの……樋伊谷です。明日、会って下さい。話したい事が……あります」
「……分かった。じゃあ学校前の公園に十時でいいかな?」
「はい」
短い通話であった。
デートではなく、話したい事があると言ったことで、橘君も分かってくれたのだろう。
学校前の公園であれば、彼は部活中でも抜け出してこれる。橘君は私や女子と付き合っているよりも……今は野球を一生懸命やって欲しい……。
そしてもう一人にも電話を掛ける。
「もしもし、樋伊谷ですけど。明日、十時に学校前の公園に来てもらえますか?」
「……デートの場所としては素敵じゃないけど、分かったよ……」
ディアブロ君はそう返事すると、電話を切った。
一つため息をつく……。
「これでいいのよ。今の私は……恋なんてしている心境じゃないわ」
イナリの事をずっと考えていた。
一週間前までは日常のように口喧嘩をしていた。今になって分かったこと……それは、イナリは私が男子二人に告白されて嫉妬していたこと。
……だから勝手に喋り出したり、なにかと理由をつけて、宇宙へ連れ回したりしたのだろう。
「やる事がまだまだ子供なんだから。一億歳の制御装置のくせに……」
宇宙戦艦が一人の女子なんかに惚れる?
嫉妬する?
サラマンの作る制御装置なんて全部あんなものなのかしら……。
――それでも、今は心が苦しい――
また上を向く。涙が溢れてくるから……。
イナリは私に干渉し過ぎたのよ。二四時間べったり一緒に居たし、私の考えまで読み取って一緒に考えて……。
そして私を生き返らせる為に――自分を犠牲にしたですって?
「自己犠牲なんて制御回路に皆無~なんて言ってたくせに――。嘘だって……つかないって言ってくせに――イナリのバカ!」
何度も何度もイナリのバカと口ずさんでいた……。
これでは駄目だ。私は立ち直れない……。
立ち直る為に男子二人に電話までしたのに……。もうトキメキも緊張もしなかった――。
「帰って来てよ……イナリ」




