オイナリサン
真奈美は必死に宇宙制御戦艦オイナリサンの復元を求めるが、サラマンにしつけの悪い犬のように叱られてしまう。
オイナリサン
「そうよ、私のイナリはどこにいるのよ! 早く修理して返してよ。……一緒に地球に帰るんだから……」
「だから~。何度言ったら分かる? それは出来ん! 宇宙制御戦艦オイナリサンは任務に失敗した。その責任を取る為に自己犠牲として樋伊谷真奈美の復元を望んだ。こんなサービスは滅多にしないのだが、寛大な私はそれに従ってやった。以上だ――。とさっきも言っただろうが!」
「冗談はやめてよ! こっちは真剣に話しているんでしょ!」
サラマンはワザと肉をまた食べ始める。
――このままではイナリは復活出来ない。私の為に消滅させられてしまい、二度と宇宙に復元されない――。
嫌だ――それだけは――!
「サラマン……様! イナリだけでも復活させてよ。今の宇宙にも、サラマンにもイナリは必要でしょ?」
「――駄目だ。イナリが自分の意思で自分の身を犠牲にしたのだ。その申し出すら私は仕方なく従ってやったのだ……。これでイナリを復元などしたら、話がチグハグではないか。――断じてならん!」
「いやよそんなの! イナリを返してよ。私の方こそどうなっても構わないわ。だからイナリを修理して」
「ええい、やかましい。軽々しく女子高生が「どうなっても構わない~」などと言うな! ……もう会う事もない。さっさと地球に帰るがいい――!」
必死にすがりつく私は、強制転送され――地球の自分の部屋へと送り込まれた。暖かな日差しが急に冷たく感じるそこは、私の部屋だった。
ベッドの上には人形や枕が詰め込まれた布団が横たわっている。窓の外は宇宙のように暗い。
「サラマンのバカー! イナリ……、イナリ~……!」
大きな声を上げて泣き崩れた。……もう誰の声も聞こえない。イナリの表示する文字も映っていない。
私は……本当に、一人ぼっちになってしまったのだ……。




