大いなる宇宙の……石?
大いなる宇宙の意思により、樋伊谷真奈美は息を吹き返す!?
大いなる宇宙の……石?
「まったく、有機生物ごときに思考回路を侵されるとは情けない――」
立ち上がると、サラマンは草原をゆっくり歩き始めた。
「サラマン最近、冷たくなったブヨ。」
「いいや、あいつは昔からあんな奴さ。冷たくもなっていないさ」
ゴジュルヌはまた肉を食べ始めた。
気が付くと私は……、草原で風を頬に受けていた……。
一体ここがどこで、今まで何をしていたのかが……思いだせない。別に思いだそうとも思わなかった。
体の上でピョンピョン跳ねている青い石コロの様なものが、地球外生物だという事を確認すると、思い出さずにいるわけにはいかなかった――。
起き上がると、青い石……ローパジウムは肩に乗った。重さは殆ど感じない。紙風船のような軽さと温かさを感じる……。握り拳くらいの大きさのこの宇宙人も、赤色のハイパジウムと全く同じ大きさと形をしている。
「……なんだ? 私が復元する前に、ローパジウムが生き返らせていたのか……」
その声に振り返ると、サラマンが歩み寄ってきていた。
イナリの姿が……見当たらない――。異次元で修理でもしているのだろうか……?
先程の記憶が少しずつ……蘇ってくる。……私の……怒りと共に……。
「うん。可哀想だから……」
顔の横でローパジウムが呟く……。可哀想って……なにが?
「やれやれ。大いなる宇宙の意思なら……仕方がないか」
そう言ったサラマンの横顔を、真奈美の本気のパンチが炸裂する――!。
「アンギョア~!」
情けない悲鳴と共に、一回転して一度宙に舞い、サラマンはその場に倒れた。
「サラマンのバカ! あんたのお陰で……ほんっ~とうに大変だったんだからー!」
宇宙制御戦艦の反乱――、小宇宙との小競り合い――、地球の危機――、私の危機――っていうか、私の私生活の歪み~!
――全部サラマンのせいだわ!
「私もイナリも――死にかけたんだからね!」
「いやいや、真奈美……。君は実際にさっきまで死んでたんだぞ。……お前はすでに死んでいた……だぞ! それをローバジウムが勝手に生き返らせたのだ。覚えてないのか……って、覚えてないよね……」
「なにを勝手な事ベラベラ喋ってるのよ! それより、私のイナリは何処? どうなったのよ。この星もあんたも無事なんだから、イナリだって無事のはずよね?」
周りを見渡す――。
空も見渡す――。
湖も見渡す――。
宇宙制御戦艦コスモロニーの大きな破片が大気圏外に浮かんでいるのだけが見える。
「オイナリサンは消滅させられてしまった。……サラマンに」
ゴジュルヌが歩いて近づいてくる。そしてサラマンの横に並んで立った。
「ゴジュルヌ! やっぱりあんたもサラマンとグルだったのね!」
「グル? いやいや、俺はサラマンほど物分かりが悪くはない。考えも違う」
イナリが消滅させられたなんて、信じないわ――。
「ここにイナリがいないって事は、異次元は復旧しているってことでしょ! だったら今頃、異次元修復に必死になってるはずよ! ……イナリは艦も異次元も……ボロボロにされちゃったんだから――!」
悲しみや怒り、そういった感情を出来るだけ抑え、平静さを保って問い掛ける。
「一体、なにがあったのよ! サラマン! 納得できるように説明しなさいっ!」
サラマンはまた面倒そうな顔を見せた……。
「やれやれ……」




