意味のない戦争――。意味のある犠牲――
大宇宙の中に突如現れた小宇宙の謎が、明らかになる……。
意味のない戦争――。意味のある犠牲――
「……そう、宇宙における戦争など、所詮は小競り合い。自己陶酔。私に言わせれば遊びでしかないのだ。しかし、そうも言っていられない事態が生じてしまった。戦いの最中にこのド阿呆が戦艦の力ではなく、自分の力を使い始めたのだ」
サラマンはハイパジウムをゲンコツで叩いた――。
ハイパジウムの赤い宝石のような頭に丸いタンコブが膨れ上がるのだが、気にすることなく肉を食べ続ける……。
「だから私は戦乱を食い止めるべく、十万隻もの次元戦艦を急遽作成し、一瞬で全艦を排除し、大きな力による宇宙の歪みを未然に食い止めたのだ――」
イナリは黙って自分の生い立ちを聞いている……。
「……自分も宇宙戦艦遊びをしたくなっただけだろ?」
ゴジュルヌのその指摘に……サラマンは反論しない……。
「そうしたら……ハイパジウムが――怒った怒った! 怒るだけならど~うでも良かったのだが、この質量飽和状態に達している大宇宙内で、無茶苦茶にエネルギーを極限凝縮させ、自らの力でビッグバンを巻き起こしてしまったのだ――!」
興奮しながらサラマンはそう語り、更にハイパジウムをどついた。頭にはダブルアイスのようなタンコブが膨れ上がる……。
「それで小宇宙なんて特異空間が出来てしまい、大宇宙の歪みが急増した! 私は次元戦艦を駆使し、歪み除去をする毎日に追われてしまったのだ! 許すまじき行為だ! 忙しすぎて、大好きなニワトリの飼育にも力を入れられん苦痛な毎日が始まったのだ!」
持っていた箸を握りつぶすほど……ニワトリの飼育は大事なのかと、皆が疑問に思ったが、誰一人としてそれを聞く者はいない……。
「それで次の日、……昼寝中のハイパジウムを超異次元粒子砲で粒子状にまで一気に粉砕し、ランダムに作成した異次元に幽閉し、その異次元制御コードも、異次元の存在も、私自信の記憶中枢から消去した!」
――サラマンはハアハア息を切らせて言い切る。興奮している……。
頭に×印の血管が浮かび上がっている……。
「ところが……何の偶然か知らないが、その一つの粒子が大宇宙に残っており、一人の有機生物に取り込まれていた。その一つの粒子は巧妙な手段でその有機生物を操り続け、巧妙な方法で異次元や小宇宙を移動する術を手に入れてしまったのだ……」
そして着実に自分の粒子を回収し……反撃の機会を伺っていたわけだ。
「二、三粒くらい集まった状態で……よく他の異次元を引き寄せて復活出来たものだ。――って笑うな! 誰も誉めてなどいない!」
ハイパジウムが……照れ笑いをしてさらに赤くなっている……。
「申し訳ございません……サラマン様。意味が理解不能でございます。地球ではイミフと申します」
「ふん、別に構わん。……異次元消失も解けたようだ。さっさと異次元へ帰るがいい」
サラマンがそう言うがイナリは従えなかった……。
「異次元転送不可能です。……しかし、私はどうなっても構いませんが、一つだけお願いがございます」
「なに……。この私に……願いだと? あんだけ……失敗しておいて?」
サラマンはいささか不機嫌な顔を見せる。
「……はい。それは……、樋伊谷真奈美を復元して頂きたいのです」
「ならん」
即答し、焼き肉のタレをサラマンは少し零した……。




