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ボディーガードは次元戦艦オイナリサン!  作者: 矮鶏ぽろ
最終章 宇宙制御戦艦オイナリサン!!!
182/196

血と共に流れ出る心?

墜落し炎上する宇宙制御戦艦オイナリサン。そして真奈美も力尽きる……?

 血と共に流れ出る心?


 白い物に覆われて……何が何だか分からない。

 分からないのだが、体の落下速度は遅く、地面にタンポポの綿毛のように降り立った。


 ――急いで体を包む白い泡を取り去ると、そこがサラマンの謁見場前である事に気が付いた。

 ――胸の痛みが治まらない。足や体の痛みは既に痛覚として……存在していなかった。

「……サラマン、……サラマンはどこ!」 

 見慣れた宇宙人が……怪我だらけの私の姿を見て驚いている……。

 今は、なんとしても、イナリを助けなくては。湖の(ほとり)に墜落し、赤い炎を上げている……。

 異次元が使えない今、サラマン第一惑星は……大きな混乱の渦中にある。

 急いで……なんとしても……、


 サラマンに、サラマンに――復讐をしなくてはならない――。


 胸の痛みが増すのと同時に……頭の中にはその声だけが響き渡ってきた。

「サラマンを破壊をするのだ――!」

 そう呟いてハッとする。


 ――私の声ではない。見ず知らずの女の声だ……。


 全ての異次元が今は消失しているから……私は誰にも干渉される筈がないのに……、何故、私がサラマンを破壊するなんて呟いたのだろうか……。


「ぶん殴ってやらないと気が済まないけど、……復讐して破壊するなんて考えてもいないわ。……そんな事をしたらイナリが修復出来ないじゃない……」


 ドクン――。

 ――急に胸が激痛に襲われた――。


 今までの比ではなく、もう……痛みで動けない激痛――!


 急にその場にうつ伏せに倒れ込んだ。

 痛みなんてものではない――! 心停止の感覚なのかも……しれない。目も霞んで息も吸えなくなる……。


「――だ、誰か……助けて。だ、れか……」

 声も――出ない。


 霞んでいく視界に、一人の男の足が見え……かすかに声が聞こえる。


「……やれやれ、まさか……こんな結末になるとは思わなかった。どうするかだなあ……」

 緊急事態にも動じない悠長な言動……。


 他人の痛みや哀れみを感知しない奴……。


 なにより、宇宙と私の人生を滅茶苦茶にした張本人。――サラマン・サマー!

「……サラマン、……助け……て」

 声にならない。

 声が出ない。

 胸の痛みがより大きくなると、大量の血が胸からドロドロとあふれ出てきた。


 心臓が、そこからドロリと流れ出た感触が分かったかと思うと、その血の塊が――深紅のクリスタルへと姿を移し変えたのだ――。


 ……私の目に最後に映ったのは、その真っ赤な石が、自分の意志で動き出した奇妙な光景までだった……。



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