全機能停止した宇宙制御戦艦オイナリサン
超異次元粒子砲を発射した宇宙制御戦艦オイナリサンは、その衝撃に耐えられず全機能停止した状態に陥る。そして怪我をした真奈美と共に……サラマン第一惑星の重力に引き寄せられる……!
全機能停止した宇宙制御戦艦オイナリサン
オイナリサンも無事では済まなかった。
甲板は全て波板の様に歪み、超異次元粒子砲はその姿すら宇宙に残していない。
艦橋内で胸を抑えながらゆっくりと私は立ちあがった。
「イナリ、大丈夫? ゴジュルヌも壊れていない?」
――全てのモニターが消えている。
ゴジュルヌ3Dはその姿すら見当たらない。大きな頭の本体が、先程の砲撃のショックに耐えきれなかったのかも知れない……。
「――痛い!」
胸とは別に――足にも激痛が走った。
見ると太ももに直径五センチはある艦橋部品の破片が突き刺ささり、真っ赤な血が流れ出ている……。
その血を見て初めて……自分が今、死に向けて刻一刻近づいている事に気が付いた……。
「イナリ、助けて、起きてよ。お願い……」
足を引きづって歩きだした。
――その時、グラリと戦艦が傾き、艦橋内の重力が一瞬にして無くなったかと思うと、次に艦橋後方に叩きつけられた。この感覚は、サラマン第一惑星の重力圏に突入したのだと直ぐに気が付いた。
「――イナリ! 早く起きて、大変よ!」
出血部を強く抑える。
異次元消失している現在、先ほどの次元戦艦が駆けつける時間は無い。
それに、他の宇宙制御戦艦がどうなったのかも分からない。
私を地上で待ち受けているのは、重力による衝突だわ――。
「イナリ、いつまで寝てるのよ……」
徐々に強くなる重力に怖れながら艦橋から一度だけ通った事がある動力室行きの通路を走った。
艦内の通路には血が点々と落ちる。意識が遠のきかけるのを必死に堪える。胸の痛みがなければ……走っている途中で気を失っていただろう……。
動力室に辿りつくと、ゴジュルヌ本体の大きな顔が転がっていた。
「……ゴジュルヌ、無事?」
「――ンガッ! そ、その声は真奈美。無事だったか! 俺はなんとか無事だ。頭がガンガン痛むが、大丈夫だ、かろうじて機能はしている」
辺りを見渡す。動力室内も静まり返っている……。
「ゴジュルヌ、イナリが反応しないのよ。どうすればいいの?」
目から涙が溢れる。何とかしたくても何ともならない……。焦りと痛みでどうにかなってしまいそう……。
「これは……難題だな。重力エネルギー制御装置がトリップしている。復旧できる可能性があるとすれば、イナリを制御室で直接操作するしかない。しかし、制御装置は超精密機械の塊。人間や俺なんかが理解できるような代物ではないだろう……」
話の途中でまた走り出していた――。
イナリの制御室なら前に一度だけ入った事がある。宇宙制御戦艦になる前の事だから、場所が少しでも変わっていれば、辿り着けないかもしれない。
でも、今はあの時と同じ場所にあると信じて走るしかない!




