超異次元粒子砲発射――!
超異次元粒子砲がコスモロニーに向けて発射される。
宇宙制御戦艦オイナリサンの……最後の砲撃となる。
超異次元粒子砲発射――!
有機シールドはその姿を炭化物へと変えていたが、それでもサラマン第一惑星を死守しようとしていた。
黒い塊がコスモロニーを覆いつこうとしている。
「あの惑星有機シールドは――生命体だったの?」
「その通り。ただし現在シールドの意識的組織は全て焼損。突撃する衝撃で網のように絡みついているだけ」
まるで……死んでもこの星を守ろうとしている様にみえる。瞬時にコスモロニーから全方位にミサイルが発射され、その黒く姿を変えたシールドは粉々に粉砕された。
「チャンスは一度だけだ。もし外せば敵の異次元粒子砲の餌食になる。覚悟はいいか?」
ゴジュルヌは全てのモニターを忙しく見渡す。
「ええ、いいわ」
艦橋前方で拡大を続けるコスモロニーの姿から一瞬も目を離さない。私の声でイナリは最後の砲撃をするのだろう。
「こんな時になんだが、……ゴジュルヌには少し感謝している」
「――! おいおい、いきなり何を言い出すんだ」
イナリにゴジュルヌが答えるのだが、……驚きを隠しえない表情をしている。
「もし私が無事であれば、ゴジュルヌの刑を少し軽くしてもらえるよう、サラマン様に進言する予定」
「フン、そんな心配は無用さ。あのデカブツを片付ければそれでチャラよ。なんせ命の恩人になるんだからな」
目の前にミサイルが襲来し、迎撃ミサイルと衝突して数え切れない爆発のヴェールが張り巡らされる。
――胸を手で押さえながらそのタイミングを見計らう。
「敵の大型異次元粒子砲に捕捉されたぞ! 真奈美、早く撃て!」
「……まだ駄目よ。この距離では……致命傷を与えられないわ!」
「敵のデーターを解析もしていないのに……何故そんな事が分かるんだ」
ゴジュルヌの問いかけに、今は答えられない。……分かる物は分かるのだ。まだだ、あと……せめて二五秒!
「私は真奈美を信じている。これまでもそうであったが真奈美に全てを任せる。待機中」
「やれやれ……」
ゴジュルヌはモニターから目を放し、艦橋内の椅子を一つ拾い上げると、それに座って足を組んだ。
「じゃあ俺も全てを任せた。頼んだぜ真奈美ちゃん」
「オーケー。大船に乗った気でいなさい」
「大船ではない。私は宇宙制御戦艦オイナリサン。訂正中!」
また胸が熱い――。
目の前のモニター以外の空間までもが光り煌き、全てを飲み込む。
「ウワアアアー! もう駄目だぞ!」
ゴジュルヌが座った椅子ごと後ろに倒れそうになったその時、
――超異次元粒子砲、発射――!
周辺は既に敵の異次元粒子砲にさらされていたが、その光の帯の中から真紅の光の帯が中心を一直線に突き進む――。
『――! そんな! そんな馬鹿な! これほどのエネルギー飽和は……あり得ない! 理論値をオーバー。解析不可、シールド不可! 助けてくれー!』
コスモロニーの断末魔の声であった――。
コスモロニーはその巨体の中心に大きな風穴を開け、次の瞬間に内部から大爆発を起こした――。




