異次元消失装置――起動!
ゴジュルヌがどこかに隠し持ってきていた異次元消失装置を起動しようとするのだが……。
異次元消失装置――起動!
「――一体どこに隠し持っていた! ――それを一体何に使おうとした! サラマン様に危害を加えるというのであれば、今すぐにでも破壊可能! 遺憾! 憤慨中!」
艦橋内に大きな声が鳴り響く。イナリが怒りを露わにしている。
「オイナリサン、怒ってる場合じゃないだろ。どっちに転んでもサラマン第一惑星は宇宙制御戦艦の謀反によって破壊される。……危機に変わりはないだろ」
「しかし、……異次元消失すれば、私の異次元シールドだけでなく惑星有機シールドも出力が低下する。――サラマン様自身の異次元シールドも低下してしまう」
「今、悩んでたら数秒後にはすべてが終わるわ! ゴジュルヌお願い!」
「異次元消失装置は一度使えばその装置自体が消失する。異次元と共に消失するからだ。解除も破壊も出来ない。この周辺宙域は永遠に異次元が消失する――。……最終確認だ。本当にやるんだな?」
「ええ」
私が即答するが、イナリは答えない。ゴジュルヌも三者の合意がなければ行わないつもりなのだろう……。
「オイナリサン。どうするんだ!」
「――早くして! 敵の次の攻撃がくる――!」
「……私の第一任務は、真奈美の護衛……。現在、真奈美を敵から守るためには、異次元消失が必要と判断。……よって真奈美の命令に従う。異次元消失させて構わない。許可」
イナリがそう答えた瞬間――オイナリサンの推進速度が急低下し、周辺のモニターから大部分の情報が一瞬で消えた。
宇宙制御戦艦から潜水艦になったような、窮屈な感覚に襲われた――。
「サラマン第一惑星周辺宙域異次元消失を確認! 敵、異次元粒子砲は現在通常光学兵器の威力。ただし、異次元シールドもなし。敵艦と私は同条件」
「だったら恐れる事はないわ! 残りの奴を片付けるわよ。サラマン第一惑星へ急いで!」
私からも異次元シールドが剝がれている。
胸の痛みがシクシクと再発している事で……それがよく分かる……。
「あとは……運次第って事だな」
「全速前進!」
イナリは敵の砲撃を掻い潜って進み続ける。異次元粒子砲がその絶大な威力を失うと、次は魚雷やミサイルが襲来する。
「応戦よ。目の前のあいつに突撃!」
「突撃は不可! この速度でそんな事をしたら真奈美の肉体が衝撃に耐えられない! 現在、超重力制御装置も出力低下中。敵との距離を測りながらの攻撃が効果的」
敵も突然の異次元消失に驚いている筈だ。かろうじてミサイルを発射してきているようだが、距離が離れすぎていて、余裕で迎撃出来る。
「通常、宇宙制御戦艦の弾装はどれくらいあるのよ」
それがなくなればこちらに勝機が訪れるんだけれど……。
「小型ミサイル5億発。魚雷8億発。艦内にて宙域資源を回収し生産することも可能。迎撃中」
「……聞かなかったら良かったわ」
イナリはファンデルワールスを救出する際に六億発もの魚雷を発射している。異次元だって途中でいつも使っている異次元80318から小さい予備の異次元に転送しているのだ。
……イナリに残弾数を聞くのは……逆に焦りを誘発してしまうわ~。
「私の残弾数は……」
「きゃ~言わないで~!」
耳をフタしてしゃがんで見せた。
「……。」




