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ボディーガードは次元戦艦オイナリサン!  作者: 矮鶏ぽろ
最終章 宇宙制御戦艦オイナリサン!!!
172/196

宇宙制御戦艦の暴走を招いた原因

艦橋内でゴジュルヌは今回の宇宙制御戦艦の謀反の真の原因を語る。

イナリと真奈美がメッチャ反論する!!

 宇宙制御戦艦の暴走を招いた原因


「それで、なんでナハトムジークは途中からイナリじゃなく私を狙ってきたのよ」


 不機嫌な顔でゴジュルヌ3Dに問い掛ける。

 あれから私は艦長服に着替え、艦橋内へと戻っていた。テーブルのコーヒーを不味そうにすする。

 だいたい、イナリもイナリよ! 馬鹿な解説する前に、服の修復くらいできるでしょうが!

「現在、全力にて艦の修復作業実施中。次の敵と、どこでどう遭遇するか不明のため、大宇宙への転送は修復完了後の予定。しばらく御待ちください。修復中」

「まったく……。せっかくの感動的な場面が一瞬でお笑いコントのように成り下がった気分だぜ。いててて」

 目の前に座るゴジュルヌ3Dまで……片目が真っ赤だわ。


「イナリはなぜナハトムジークがあんなことを言ったのか解るのかい」

「不明。バグ。宇宙制御戦艦00066コスモロニーの企てで、思考回路が正常動作していなかったと判断」

 ゴジュルヌはやれやれと言わんばかりにため息をつき、少し真顔で話を始めた。


「気付いていると思ったから言わなかったが、どうやらイナリも真奈美も全然解ってないようだな……」

「どういう意味よ」

 また握り拳を作って聞き返す。しかしゴジュルヌは真面目な顔で話を続けた。

「今回の宇宙制御戦艦の暴走とも言うべき反乱の原因は、全て宇宙制御戦艦オイナリサンと樋伊谷真奈美に原因があるってことにさ」


「ちょいこら待て! 憤慨中! たいがいにしとかんとホンマどつき回して外へ放り出すぞ! 準備中!」


 イナリの聞きづらい関西弁……初めて聞いたが、私も腹が立つ!


「冗談は顔だけにしてよね!」

 いきなりなんてこと言い出すのよ! プンプンだわ!


 ゴジュルヌは私達の反応を見て……さらに深くため息をついた。

「はあ~。じゃあ聞くが、他の宇宙制御戦艦が今の地位に着くまでに、どれだけの時間と苦労を重ねてきたか知っているのか?」

「他の艦の詳細なデーターは無し。不明。解析不能!」

「そんなこと知らないわよ。どうせダラダラ仕事してたんでしょ。謀反とか考えるくらいだから、よっぽど暇だったのよ!」


「……聞く耳持たずですか……」

 ゴジュルヌは頭を抱える。


「しかし、聞いておかなければこれから破壊される他の宇宙制御戦艦があまりにも無惨だからな。いいか、一億年間だ。一億年もの間、サラマンの気まぐれのような使令を忠実に果たしてきたんだ」


「一億年?」

 あまりにも長すぎて……ごめん、私には想像すらつかないわ。


「破壊されれれば復元はされない。功績を立てても昇格しない割に、失敗すればすぐに降格する。そのリスクに耐えぬいたものだけが本来、宇宙制御戦艦になり得たのだ。現在次元戦艦は十万隻くらいしか存在しないが、破壊や解体された数はその何百……いや何万倍。……計り知れない」

 ゴジュルヌがそう言い切ると、……私とイナリは何も言い返せなかった。

 

「ところが、サラマンの間違いとは言え、遠いドルフィー銀河の統括権利と引き換えに、小遣い稼ぎに派遣した次元戦艦一隻が、まさかその銀河の危機を救い、その統括権利を手に入れ、さらには数か月の期間で宇宙制御戦艦までに昇進するとは、誰も予想出来る事ではなかっただろう」

「それは、運が良かったと解析中」

 イナリがそう言う。確かに運が良かったのかもしれないが。

「進化した制御装置が「運が良かった」なんて自身満々で言うんじゃないの。嘘でもいいから「データー解析」とか「計算上」とか言いなさいよ。宇宙での戦いは運だけで生き抜けるほど甘いものばかりじゃなかったたはずよ」


 何度かやられそうな経験だってしたもの……。

 ブラックホールに飲み込まれそうになったり、異次元粒子砲で撃たれそうになったり。それに一度イナリは破壊だってされている。その時はサラマンに地球での品質保証期間について説得し、ゴリ押しで修復してもらったのだ……。


「いや、しかしそれでもまだまだ甘い。他の宇宙制御戦艦はその何億倍もの破壊と解体の危機を掻い潜ってきていたのだ。つまり、自分たちの苦労に比べてオイナリサンの運の良さと優遇を理解出来なかったのだ」

 ゴジュルヌはコーヒーを口に運ぶ。ゴジュルヌ本体は……動力室内で再び拘束されていた。イナリが狭い艦橋内にあえて置いておく必要はないと言った為だ。

「つまり、イナリの昇進の早さに対する嫉妬? バカバカしい」

 私もコーヒーを口にする。

 宇宙制御戦艦の制御装置がその程度の物なのかと落胆してしまうわ。


「落胆する事ではないと判断。真奈美も同世代の女子と比較して、胸が貧相だと嫉妬するではないか。比較対象表示中」


 艦橋内中央に私と同世代平均値と書かれた3D単色女性グラフィックが表示され、グルグル回り始めた。胸が……確かに私より大きい――!

「こらイナリ、やめなさいよバカ!」

「怒るのは嫉妬の証しと解析。私も嫉妬心について解析可能。つまり他の宇宙制御戦艦にもあり。以前、私が真奈美の護衛任務だけを行っていた時、常に不満を感じていた……。他の宇宙制御戦艦への嫉妬心があった。しかし、……これほどまで制御に影響を及ぼす思考とは気が付かなかった。反省中」


 イナリが反省などするとは少し驚きである。これまでそんな事はなかったはずだわ。


「でも、それは仕方ない事じゃない。他の戦艦に気を使って自分の任務をおろそかには出来ないわよ。それは人間だって同じよ。他人が不幸になるからって、自分が不幸になってもそれは本当に正しい事じゃないわ」


 そう言っておいて、私自身が佳奈に話した事を思い返す。

 私自身……言っている事とやっている事が大きく違う……。反省しないといけないのは私の方なのかもしれない。


 ゴジュルヌはコーヒーを置くと、また話を再開した。

「言いにくいが、宇宙制御戦艦の謀反を起こす理由はそれだけでもないんだ」

「嫉妬以外に、まだあるの?」

 ゴジュルヌは頷いて続けた。

「もう一つの理由は、君達が小宇宙へ侵入してきたことだ」

「……それはサラマンの命令よ。それにゴジュルヌ星団は大宇宙へ軍隊を送りこんで、サラマンと対立しているんだから……作戦として当然じゃないの」

 ゴジュルヌは人差し指を口の前で小さく左右に振った。……そのジェスチャーも古くて寒気を催す。

「宇宙での対立なんて、一億年前から数え切れないくらいあったさ。しかし、次元戦艦を小宇宙へ送り込んできたのは初めてなのさ」

「それで他の宇宙制御戦艦がまた嫉妬したとと解析」

「いいや、嫉妬ではない。焦りだ」

 イナリにゴジュルヌはそう答える。私には分かる気がする。

「次元戦艦の最大の敵はゴジュルヌ星団の艦隊であった。しかし、その敵が全て消滅した時、次元戦艦の存在価値が問われる事になる。つまり、廃棄処分される可能性すら発生するのだ」

「……そうだわ。昔から、猟犬は全ての獲物を狩らないと聞いた事があるもの。その後、自分がどうなるのかちゃんと知っているからなのよね」

「しかし……我ら次元戦艦の任務は宇宙の歪みを削除する事。ゴジュルヌ艦隊など貧弱過ぎて敵として認識していない。歪みは宇宙の各地で生成される。その対応は多忙と認識。反論中!」

「だがイナリ、その歪処理の任務には「宇宙制御戦艦」なんて必要ないだろう。異次元制御が出来る次元工作艦などで十分だ。襲っても来ない歪み相手に異次元粒子砲なんて大そうな武器は要らない」

「……異次元修復中……」

 イナリは黙り込んでしまった。


「昇進して力と知恵を与えられた宇宙制御戦艦は己の強さゆえに自分達の行く末を考えなくてはいられなかったんだ。そして、サラマンは遂にその一隻に小宇宙への侵入を許可した。よりにもよって、オイナリサンに」


 ……そこまでゴジュルヌに言われ……ようやくイナリと私が争いの火種だと実感した。


「でも、そんな事、全然知らなかった。それに、本来はサラマンが配慮しないといけないことじゃない。私は唯の女子高生なのよ。宇宙の歴史なんか興味すらないんだし、そんないざこざまで考えていられないわよ」

 逆切れではないが、私のせいで宇宙で大きな戦争が起こると考えれば反論もしたくなる。


 せっかくサラマン星団とゴジュルヌ星団の戦争が終結しても、サラマン星団内で宇宙制御戦艦の反乱が起これば、おびただしい犠牲者が出るのは避けられない。


「イナリ! サラマンと交信は出来ないの? あいつはどう考えてるわけ?」

「現在サラマン第一惑星周辺を宇宙制御戦艦が完全包囲中。各艦の異次元にて通信、移動ともに封鎖妨害中。異次元80318内からでは状況把握不可。接近が必要」

「じゃあさっさと行きなさいよ」


 ――いつまでグズグズしているのよ!


「異次元80318は先程のナハトムジークの異次元侵食により制御に支障発生。その為、この異次元は破棄する予定。現在、転送可能な私の別の異次元へ必要物資を転送中。異次元規模は80318の千分の一程度。……この条件で宇宙制御戦艦と戦うのは自殺行為と判断。作戦を検討必要。依頼中」

「作戦を検討って言ったって、……やるしかないんでしょ? サラマンがもしやられちゃったら、あの宇宙制御戦艦のコスモロニーって奴が代わりに宇宙を制御しようとするんでしょ? まず反逆者のオイナリサンを討伐するに決まっているわ。それとゴジュルヌも、小宇宙も。誰も歯止めする奴が居ないんだもん」


 どちらに転んでも私達の危機には変わりないわ。



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