怨念
動力室内でゆっくりと真奈美の方へと向きを変えた敵、ナハトムジーク!
機械の制御装置とは思えないほどの強い怨念を真奈美に抱いていた!!
怨念
「貴様が――樋伊谷真奈美なのだな!」
その日本語訳された音声は、低い怒りの唸り声のようだ……。
『真奈美、危険だ。逃げてくれ! 緊急退避だ!』
イナリの音声が室内にこだまするが、足はこわばるし、周りは敵だらけ。
「逃げろって言われても、――逃げれるわけないじゃない!」
艦内に逃げても無駄だろうし……、まさかイナリを放っておいて、異次元内を泳いで逃げろとでも言うの?
ここを破壊されれば、どちらにしろ、お仕舞い……。フォーエバーなんでしょ?
「我が滅びることになっても、……貴様だけは絶対に許さんぞ! ――樋伊谷真奈美。貴様の存在こそが宇宙制御戦艦の災い。大宇宙の災い!」
ナハトムジークはその装甲板から3門の異次元粒子砲門が姿を現せた――。
「まずいぞ――! あれを食らえばひとたまりもない!」
ゴジュルヌは、私の前に大の字で立ち塞がってくれる――。
ちょっと感動して……胸がキュンとするのだが、
立体映像の防御力は、……0ポコ……よね……。
「――宇宙から消滅せよ真奈美! 異次元粒子砲、発射――!」
運動神経は良い方ではないのだが、私は身構え、敵が発射する寸前に飛び退いた。
眩い光の束は一瞬前まで私が居たところを全て吹き飛ばし、船外まで大きな三つの風穴を空けた――。
無事では済むはずはなかった。――ゴジュルヌ3Dは光で消失し、私はその異次元粒子砲の反動で吹き飛ばされ、動力源そのものに強く叩き付けられた――。
「ゲフッ――」
肺の空気が瞬時に全て吐き出され――、……全身を痛みが襲う――。
――体がバラバラになりそうな痛みが、すぐ後から押し寄せると、うつ伏せに床に倒れた。
「バカな! 光速を越える我が異次元粒子砲を避けただと?」
ナハトムジークはゆっくりこちらへと方向を変えた。
いくら光速を越える光学兵器とはいえ、……発射する直前に「発射」なんて言えば……、私でも避けられるわ。
……息が出来ないので声に出せないのが残念だけど……へへ。
「仕方ない。異次元歪曲出力最大!」
「――!」
か……身体が、急に見えない力で固定され……、体の中心から、どんどん冷えていく!
胸が凍る様に冷たい――!
「忌まわしい異次元シールドを我が異次元歪曲で消去し、オイナリサンの動力源もろとも破壊してやる」
私の異次元シールドが、胸を中心に効力を失っている――。
「た……、すけて……」
イナリ―!
もう、声も出せない……!




