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ボディーガードは次元戦艦オイナリサン!  作者: 矮鶏ぽろ
第一章 次元戦艦オイナリサン!
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土曜日午後のデート (挿絵あり)

憧れの橘君が目の前に現れ、真奈美は緊張してしまう。

 土曜日午後のデート


 土曜日のお昼前。休日にも関わらず、電車に乗って学校へと向かった――。

 今日のために準備した服。初デートのためにセットした髪型。――私はもうこれ以上奇麗になれない自信がある!

 そんな妙な自信とは裏腹に、1%の重圧に頭を痛くしながら学校前の公園へと向かったのだ。


 公園は学校の門を出てすぐのところにあり、平日の下校時間以外には、ほとんど学校の生徒は居ない。一般の人もほとんど使わない、少し寂しげな公園だ。

 中央の良く目立つベンチに腰を下した。


 ――ああ、ほんとうに来るのかしら。来たとしても何て言ったらいいのだろう。


『来ることは確定。目標物捕捉。現在接近中。君が何か言う必要はないと判断。橘太郎が昨日の回答を先に述べるのが会話上、順当』

 橘君の回答を述べるのが順当? なんのことよ。

 イナリのコメントを読みながら考えていると、突然後から声を掛けられた。

「ごめん。今日は昼からも練習なんだ」


 振り返ると――橘君が野球の練習着で立っている――。

 

 ――イナリは接近と告げたが、こんなに接近しているとは思ってもいなかったわ!

 宇宙戦艦の距離感が疑わしい――!

『地球上では二足歩行生物の距離感に補正対応中。また、私は宇宙戦艦ではなく次元戦艦。待機中』 

 イナリのコメントなんて読めるはずもなく、橘君に話しかけようとしたのだが……、


 ――やだ、胸がドキドキして、何を話していいか分からない~!

 心臓が飛び出しちゃいそう――!


「今の僕には野球のことしか頭にない。誰とも付き合う気はないんだ。じゃあ――」

「ああ! 橘く~ん――!」

 直ぐに振り向いて走り去ってしまった……。


 イナリの作戦通り……何も言えなかった。

 橘君が公園を出て行った頃にやっと、いま、何が起こったのかが把握できた……。


「あ~! せっかくの会話のチャンスが~! 一っ言も喋れなかったじゃない!」

 ベンチに座ったまま、顔を両手で覆った。

 

 ――駄目元だったとしても、やはり辛かった……。

 どこかでは橘君と付き合えると思っていたのに……所詮……1%だった。

 もう泣いてしまいたい! 恥ずかしい! まだ胸がキュンキュンしている。


「言わずに後悔するより、……言って後悔する方がいい。待機中」

「――言って後悔するのが確実なら、言わない方がいいわよ」


 ――なによそれ。慰めているつもりなの?

 なんか……次元戦艦に慰められるのって……イラッとするんですけど!


「慰めは任務外。ただ、これで橘太郎の脳に真奈美の情報をインプット完了。それが良いか悪いかは今後次第。待機中」

 それを聞いてハッと顔を上げた――。

 

 そうだわ――確かに昨日まで橘君は、私のことなんて知りもしなかった。

 それでも今日はもう顔見知りまでは発展したんだと思う。

 最初からそれが目的だったのなら、決して今日のことが無駄ではなかったのかもしれない――。


「そうね。まだ始まったばかりよね――」

 自分とイナリにそう言い聞かせた。

「今後次第。それより重要なことだが、真奈美は空腹と判断」

「そうね、ホッとしたら何だか急にお腹空いちゃった。もし空腹で私が餓死したら護衛任務失敗だもんね」

「護衛任務は完璧。胃袋内へ異次元より直接食糧転送も可能。ただ、今日は慰めも兼ねて宇宙での昼食(ランチ)を提案」

「え、宇宙? 今から?」


 ……興味ないと言えば嘘になるかもしれないけれど、少し不安だった。宇宙はそんなに安全で安心できるところなのだろうか。

 昼食だって喉を通らないかもしれない。それに宇宙食って美味しいの? ベタベタしていたり、ゼリーだったり。

「問題と認めず。異次元へ転送。その後大気圏より出たところで宇宙空間へ復帰。完了」

 

 周りの公園が、いつしか見た真っ白い壁の部屋に変わり……。

 その部屋にあるテーブルの前に、私は一人で立っていた……。


「ちょっと、ここは何処なのよ。また艦橋ってところ?」

「艦橋。次元戦艦は現在大気圏外へ移動完了」

 そう言われても……白い壁だけで、外の様子が何も見えないんだけど――。

「艦橋内をスクリーン化。外を投影」

 イナリがそう言ったのと同時に、白い部屋の壁がゆっくりと真っ黒な部屋に変わっていく……。

 闇の中には無数の煌く星が散りばめられている。天井も床も全てが宇宙を映し出し――息を飲んだ。


 そこは紛れもない宇宙空間だった――。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


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