作戦決行!
計画された通り、作戦を遂行する真奈美。成功する確率の低さに落胆する。
……トマホーク作戦の方がよかったのかしら。
作戦決行!
次の日!
ついに決戦の時が来た――!
橘君が練習を終えて部室へ戻る一瞬。汚い部室の横の木影から突然飛び出して――橘君の前に立ちはだかると、
手を両方に大きく広げて、ストップ! の姿をする――!
「橘君! 明日、私とデートして。学校前の公園に一二時三八分に待ってるから!」
この微妙な時間には理由がある。
……野球部の練習が終わるのが一二時三〇分。急いでこないと間に合わない時間なのだ。
「ちょっと待ってくれ、君は誰だい」
橘君と話がしたいのは山々なのだが……作戦上、話をしてはいけない~!
橘君がそう話しかけてきた時には、もう全力疾走でその場を離脱していた。
高鳴る胸のままで家の部屋に辿りついた。
「ああ、完璧だったわ! 明日が楽しみ~」
「この作戦により、真奈美が明日デートできる確率が約1%に上昇。期待中」
ベッドに横たわったまま……口を開けたまま……数秒が経過してからイナリに問いかけた。
「今、何て言ったの? どういう意味?」
「明日デートできる確率が1%まで上昇したと報告。期待中」
それって一〇〇分の一ってことなの?
――ほとんどど無理って……ことじゃない?
「一〇〇回試みれば、お情けで一回くらいは成功する……かもしれない。1%とはそういう意味」
「――何よそれ! 全然駄目じゃない。恥ずかしい思いしたのに~!」
枕を顔に埋めて思い返す――。
昨日、練習に何時間も費やしたと言うのに~!
「確率の上昇は手紙作戦の約千倍。手応えありと判断。橘太郎は全ての手紙に目など通したりはしない。ライバル多数。手紙での告白数は、本日二六人。これまでと合せても成功実績皆無」
そんなことを聞いても……。
……胸躍る気持は、いつしかかどこかへ消え去った。
明日、待っていても来てくれない可能性も高いのではないだろうか……。
「明日に備え、今日は体力回復と精神の安定に努めるべき。待機中」
「そ、そうね。そうするわ」
顔が引きつっていてかもしれない。
ぐったり疲れた――。
もうイナリと話しをする気力すらない。
眠れないくらいドキドキしたかったのに……。
よだれを垂らして、極上の睡眠がとれてしまった――。