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ボディーガードは次元戦艦オイナリサン!  作者: 矮鶏ぽろ
最終章 宇宙制御戦艦オイナリサン!!!
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ビックゴールドスター獲得

ゴジュルヌとゴドルベーザを異次元に捕らえた瞬間、イナリは戦争の勝利を確信した!!

 ビックゴールドスター獲得


「……。やった。やったぞ真奈美! 大金星ゲット! これらをサラマン様の手土産とすれば私は昇格間違いなし。サラマン様もお慶びになり、戦争も終結。平和。ピース。フォーエバー。真奈美に協力感謝中」

 小さなテーブルに、ウエディングケーキよりも大きな生クリームたっぷりのケーキと、綺麗なきめ細かい泡が立ち上がるシャンパンが注がれたグラスがせりあがってくる。

 ――シャンパンなんて高校生の前に出すな!

「シャンパンはクリュグ! 祝勝会準備中~。ランランラン~」


 イナリは鼻歌混じりでだ……。呆れるくらい思考回路が単純……。


「真奈美より複雑と認識中。真奈美も戦争の終結を願っていたのなら、もっと喜ぶべき。ゴドルベーザとゴジュルヌは異次元内で時間停止中。一瞬でバッラバラにするのも可能~」

「駄目よそんなことしちゃ。……元に戻しなさい。敵の大将を捕らえたって何の解決にもならないでしょ。まったく」

 ケーキをフォークでさして口に入れる。

 ああ~、思わず顔が綻んでしまうほど美味しい。

「――理解不能。敵の現統括者と創設者を拘束すれば、あとは異次元洗脳、異次元改造思うがまま。戦争終結は時間の問題と推測」

「いいから戻しなさい。危険じゃないなら艦橋へ戻して。話があるんだから」


 イナリは即答こそしなかったのだが、……渋々従ってくれた。

「艦橋内へ……危険が無い状態で転送――完了……」

 目の前のテーブル横にゴドルベーザがドテッと落ちてきた。そして艦橋内の広いところへゴジュルヌの大きな顔が落ちてきた。

 ……まるでドンゴロスに入った荷物を乱暴に扱うような扱いだ。……どちらも有刺鉄線でグルグル巻きにされている……。


「いくら敵とはいえ、この対応はあんまりではないか?」

「口が開けられない。これでは喋れないじゃないか」

 ゴジュルヌの頭は喋れないと……しっかり喋っている。

「黙れ! 放電開始!」


 ――有刺鉄線が青白い稲妻を発すると、ゴジュルヌだけが大声を上げて転げ回った。

「ウギャギャギャ、痺れるー!」


 ……開いた口が塞がらないわ。

 何かのお笑いコントを見ているようだ。けっして面白くないんだけど……。


「なぜゴドルベーザは痛がらないの?」

「答える義理はないが教えてやろう。先ほども言ったが私は立体コンタクト用の装置にすぎない。痛みなどという感覚は私には無駄だ」

 隣では大きな顔だけのゴジュルヌが所狭しと……のたうちまわっている。

「現在敵要塞内の全てを解析済み。要塞の制御装置の……ここをこうすると効果ありと判断。えい」


 イナリがそう言った途端、ゴドルベーザものたうち、もがき始めた。


「キャーッハッハッ、参った、助けて、助けてください! 息が吸えない~クルヒ~」

「敵要塞中央思考回路に強制的に知覚回路とデーターを挿入。現在人間でいう脇の下をこそばし中」


 ……イナリはドSなのかもしれない。


 しかし……私も殺されそうになったのを考えれば、もう少し高見の見物をしていてもいいのかしら?

「真奈美は私よりドSと判断。ドSのドは、ドレッドノート級の略。ドレミのドではない」

「ドの講釈は余計よ! それより……もういいわ。話が出来ないから元に戻してあげて」

「了解」

 二つの悲鳴がピタリと止んだ。


「何故あなた達は戦争なんてするのよ。大宇宙を手に入れるためなの? それともサラマンに仕返しをするような事でもあったの?」

 敵の一体と一人はぐったりして動かない。よほどイナリの拷問が効いたのだろう。ゴドルベーザが生まれたての小鹿のように、ゆっくりとカクカクしながら立ち上がる。

「だから先ほども言ったはずだ……。歪みと偽り宇宙征服を企てるサラマンを許しておけないのだ!」

「偽りなどではなく真相! ゴジュルヌ星団の思考回路は旧式の為、歪みのデーター解析不可能と判断。――つまりバカ! バーカ!」

「黙れ次元戦艦! 旧式の思考回路などと我らを馬鹿にし、勝手に侵略するのが正しいとでも思っているのか!」

「正しい。正論! 宇宙の歪みは時間経過と共に飛躍的進行中。その妨げこそ馬鹿の極限。お前の脳みそカニ味噌! カニ味噌は実は脳ミソではないことを覚えておくがいい!」


 ……やれやれ、イナリとゴドルベーザが口喧嘩を始めた。

 これでは私が知りたいことは何も分からないままだわ……。


「イナリ、ゴドルベーザは要塞に返してあげなさいよ。どうせ3D映像みたいな物なんでしょ。捕まえたって意味無いわ。うるさいし」

「3D映像ではない! 質量こそないが、接触する部分だけ質量調整出来るんだぞ! だから銃も持てるのだ。決して帳尻合わせで言っているのでもないぞ――」


 ――言った瞬間にゴドルベーザは消えていなくなった。


「削除完了。あースッキリした。爽快中」

 イナリがスッキリした音声で言う。

「まさか……敵の要塞まで削除していないわよね?」

「真奈美のご命令とあらば、いつでも可能。それよりゴジュルヌはどうするか検討中。こちらは思考回路、機体共に実物。サラマン様への手土産。こればっかりは真奈美の命令でも従えない可能性あり」

 大きな頭が転がったままで……動きはしないが、話は聞こえているのだろう。

「聞きたい事があるって言ったでしょ。有刺鉄線も解いてあげなさいよ。イナリの異次元内なら暴れたりしないだろうから」

「――危険と判断! 頭だけに見えるゴジュルヌ機体内には解析不可能な箇所あり。時間停止が一番効果的と判断。警戒中」

「……俺は一度も暴れたりしてないっつーの。やれやれ……」


 そう言うとゴジュルヌはその姿のままで、テーブルの前に黒と赤のマントを羽織った人間の男が急に空間から姿を現せた――。


「俺もこの姿で話をした方がいいのかな。真奈美ちゃん」


 無精髭を生やしたちょっと野暮そうなその人間男性型3D映像は、……やはりいい男であった。



※ビッグゴールドスター:大金星(?)

 ドンゴロス:目の粗い麻袋

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