高度な暗号化技術!
暗号化した小宇宙の座標データーを全てオイナリサンに送信するのに、かなりの時間を要する。
高度な暗号化技術!
四苦八苦しながら艦隊の隙間を縫うように飛び交う――。
モニターは『小宇宙座標データ解析完了。宇宙制御戦艦オイナリサンへ送信開始。暗号化レベル超厳密。残り時間約20分』と表示されたままだ――。
「暗号化ですって? そんなもの逆さ言葉かタヌキ言葉で十分よ~! ちょっとは急ぎなさいよ!」
敵艦からのレーザー射撃は……見ていて感動を覚えるほど強烈だった。
――一瞬前に戦闘機がいたところが、次々と光の帯に変わっていく――。
モニターには……
『暗号化レベル逆さタヌキ言葉に簡略化。送信再開。残り時間約2分』
と表示が変化している……。
二分間もハエみたいに逃げ回っていられる? ミサイルもないし、レーザーも使えない。エネルギーを使いすぎた事を思いだし、――ぞっとした。
「もしかして……、データー送信前に……エネルギー切れで止まっちゃうんじゃ……ないでしょうね……」
続けて飛んでくる星の数のミサイルを、なんとか小刻みに避けながらそう叫んだ時であった。
パッ周りが一瞬、真っ暗な宇宙から光一面に変わったかと思うと――私の体は座席から投げ出された。
――え? レーザーの直撃を受けた――!
――体に鈍い鈍痛が走り――ど~んと尻餅をついた……。
「――いてっ! なによ、一体どうなっっちゃったの!」
その声が、見慣れた室内に響き渡る。
お尻はオイナリサンの艦橋にあるソファーの上だったのだ……。
「真奈美を戦闘機から艦橋内へ転送完了。お疲れちゃん中」
聞き慣れた声が耳に入る……。
「真奈美のデーター送信のお陰で私は、大宇宙と小宇宙の自由な移動が可能となった。サラマン様及び他の次元戦艦には、後日帰還後に報告予定。さ~て~と、周辺敵艦隊なら瞬時殲滅、もしくは異次元転送可能。待機中」
私はソファーの上で操縦桿を握ったままの姿を続けていた。まだ先程の興奮が冷めていない。
「いつまで……その格好をしているのか疑問? その格好が妙に落ち着くのであれば続行可。……待機中」
ようやくイナリが言っていることが理解できた。
私はずっと、操縦桿を握る手つきを続けていた……。
「――ええい! 急に現れてあれこれ勝手なことばっかり言わないの! おそい! イナリ! 人間の脳ミソは現状を理解するのに時間がかかるのよ!」
操縦桿を握っっていた手付きを、プラプラして感触を頭から追い払い、手汗をスカートでゴシゴシ拭く。
背中の汗が冷えて……風邪ひくわ~!
慌てふためいたのは、敵艦隊の方だろう……。
小宇宙にいまだかつて姿を現さなかった、敵の最強兵器、宇宙制御戦艦オイナリサンがその姿を現したのだ――。
「攻撃する必要はないわ。それよりも敵の本拠地とか敵の親玉とかを早く探し出しなさいよ」
「了解。――解析中」
もろに敵のレーザーやミサイル攻撃をボッコンボッコンと喰らいながら、イナリは平然と解析を始める。痛くも痒くもないとは……まさにこの事なのね……。
「――完了。敵ゴジュルヌ第一惑星位置を確認。異次元転送にて移動開始――。到着」
瞬時に宇宙空間が異次元へと移り変わり、すぐにまた宇宙空間を映し出すと、そこには不気味な漆黒のあばら骨のような物が浮かび上がった。
ゴジュルヌ第一惑星……お世辞にもカッコイイとは言えない……。
「まるで……売れない芸術家が酒を飲みながら寝転んで夢見た、食べ尽くされたスペアリブの骨の部分だけみたいな……残骸のようなグロえぐい姿だわ――!」
「……。」




