戦闘機作戦
だらだらと会議をしている真奈美とイナリ。
結局は真奈美の考えた「戦闘機作戦」が採用される。
戦闘機作戦
「ファンデルからのデーターより敵の小宇宙への移動要塞を解析済。要塞内部の転送装置のみが小宇宙への移動を可能にしている。一度そこを通過し、小宇宙の正確な位置座標さえ解析できれば、私も小宇宙へ移動可能。……問題はどうやって要塞内部から小宇宙へ移動するか。検討中」
「通してくださいって言えば通してくれるかも」
「うーん、無理だろうなあ」
「私はサラマンの反逆者ですって言ったら?」
「口が裂けても言えません。それにさっき敵の超巨大異次元粒子砲を木っ端微塵にしたのを見られています」
「壊すぞてめーって言うのはどうかしら?」
「……。検討中」
ごめん冗談を真面目に検討しないで。
テーブルでコーヒーを飲みながら腕時計を確認すると、ちょうど深夜の0時を過ぎたところだった。
……明日は学校に行けるのかしら。
眠気はまったく無い。どうせイナリが脳に栄養と休息を直接与えてくれているのだろう。でないとすれば、興奮して眠くないだけ。普段はとっくにパジャマを着て布団に入っている時間だわ。
「そうだわ、敵の姿を装って侵入すればいいのよ! 異次元消失したところを通るのは要塞の中だけなんでしょ。さっきの戦闘で傷ついた敵に紛れてしまえば分かりっこないわ」
「敵艦にも我ら同様にコードナンバーありと推測。また、ゴジュルヌ星団の戦艦はダサい。屈辱大」
――また変なところで頑固なんだから。ダサいとか言ってる場合じゃないでしょ。
「! じゃあ真奈美は男物のブリーフ『白』のみを着用した姿で学校の校門を通れるかと質問。通れまい! イメージ投影中」
立体映像の移動要塞が……私の高校の校門へグニャリと姿を変え、私が男物のブリーフ一枚を着けてスキップで校門を通り抜ける。
――繰り返して何度も何度も、何度も! 同じ映像が繰り返される~!
「――作戦会議中にバカなマッド動画作らんでいい! 早く消せ!」
耳、赤くなるわい!
「真奈美には相手の気持ちを考える練習が必要と判断。教育中」
「教育より今は作戦でしょ!」
ため息をついて座る。そして今日何杯目か分からないコーヒーを口に運びながら提案した。
「敵の戦艦なんかにならなくても、小さな戦闘機みたいなのになればいいじゃない。壊れたように装えば通信出来なくても通してくれるわよ。たぶん」
「戦闘機! 気が付かなかった。作戦パターン検討中」
「イナリの考える作戦はレパートリーが少な過ぎるのよ。教育中」
いつもの仕返しにそう言ってやる。
「戦闘機作戦も、……私はとっくに考えていたと反論! 私は数百億を越える作戦を考え、全てシミュレーション実施。戦闘機作戦は数分とはいえ異次元消失空間を通るため、真奈美の100%の安全確保が不可。よって……却下を検討していたのさ……」
「嘘つけ。気付かなかったくせに!」
「ギクッ。……何故、真奈美に制御装置の思考回路が読めるのか疑問」
「だーかーら、ギクッなんて言うな! ついさっき「気が付かなかった」と、はっきり自分で言ったじゃないの……」
また腕時計を見る。あれから既に数十分が経過している。
「もう、……作戦立てるのに時間が掛かり過ぎなのよ。明日は学校もあるんだから早くしてよね」
「もう今日になっていると訂正中。作戦を戦闘機突撃作戦に決定。私の装甲材質で「敵戦闘機もどき」作成――完了。通常は異次元シールドを標準装備。異次元通信、異次元転送も可能。異次元消失空間内でも、私の装甲を使用しているため異次元粒子砲以外では傷一つ付けられない。宇宙最強の戦闘機!」
「講釈はいいのよ。それで? 要塞を通り抜けて小宇宙に行ったとき、私はなにをどうすればいいの?」
着いたわよって、通信すればいいの?
「何もしなくていい。異次元消失空間を抜ければ自動的に小宇宙空間座標を戦闘機から私に転送するシステムが起動する。そうすればすぐに私も小宇宙へ移動し、異次元80318へ真奈美と戦闘機を保護する」
頭を掻いた。そう言えば……今日はまだお風呂に入っていないわ。
「うーん。小宇宙はどんなところか知っているの? もし全て異次元消失空間だったりしたら、危なくない?」
「それは皆無。ゴジュルヌ星団の戦艦を、制御装置内部まで異次元解析したデータより、小宇宙は大宇宙と同じ構成と判明。色も黒色。敵艦には異次元転送をして小宇宙へ移動する機能が無かったため、座標データーだけが不明な状態」
……イナリが座標データさえ手にすれば、十中八九サラマンに報告するって事ね……。それでまた大軍を率いた宇宙制御戦艦が小宇宙へ押し寄せる。そして――。
「小宇宙、及びゴジュルヌ星団はサラマン様の物となりハッピーエンド。宇宙から無駄な戦争が無くなり、平和が訪れるのでした。めでたしめでたし!」
イナリが私に変わって……そうほざく~!
「めでたしめでたしじゃない。結局はたくさんのガラクタが宇宙を彷徨うじゃない」
「当然の報い。やむを得ない犠牲。他に方法無し」
「一番偉い奴を……説得してみたらいいんじゃない?」
「説得? ホワーイ?」
なんとかイナリに小宇宙のデータをサラマンに教えないようにしないといけない。……そんな気がする。
「一人で手柄を立てれば、……その分、高ポイントゲットよ」
親指を立ててジェスチャーを見せると、意外にもイナリは単純に返答してくれた。
「――採用。即決! 敵の親玉を異次元へ瞬時に引っ捕らえ、拷問地獄で説得。無駄な浪費無しのためエコ。戦争も終結し私はサラマン様の次に偉大なる存在になれる可能性大~! では早速、真奈美を戦闘機へ移動。――完了」
「ちょちょっちょっと待ってよ」
ソファーからすり抜け落ちるように、白い翼を持つ戦闘機の座席へと瞬時に移動させられた――。
……目の前の操縦桿や数多くの計器類は、なにがなんだか想像もつかない~!
『適当。操縦は体で覚えるんだと教育中』
「そんな教育あるか!」
どこぞのばあさんか!




