制御装置の思考回路が理解できない
六億発もの魚雷を無差別にばらまいておき……奇跡的に助かった真奈美とオイナリサン。しかし、ファンデルワールスは……。
制御装置の思考回路が理解できない
イナリにコーヒーを注文しようとして、
――!
大事なことを思い出した!
「それより! ファンデルはどうしたのよ! 一緒に異次元に連れてこれたんでしょうね!」
「……当然。但し、全機能停止状態。再稼働不可能。現在サラマン様に報告中」
「なんでよ、異次元で修理くらい簡単に出来るでしょ! イナリが治してあげなさいよ」
「サラマン様は思考回路を持つ物は生命体であれ、機械であれ特例を除いて復元をされないお方」
「なんでよ! そんなのおかしいじゃない!」
「復元することにより、新たな誕生を抑制してしまうとのこと。サラマン様が創られた宇宙の法則。だからこそ大宇宙において与えられた命や制御装置は全てが尊い存在となる」
「だから、そんなのおかしいって! 私に話をさせなさい!」
イナリは私の命令を拒んだ。
「拒否。サラマン様に対する反抗となる。しかも、私にはファンデルワールスの戦艦としての機能は復元可能だが、異次元07245を制御するファンデルワールスの制御装置は復元不可能。ただの宇宙戦艦へと成り下がってしまう。――我らにとって、この上ない屈辱」
「だからって仲間を見捨てるの? 付き合いが短いから? 考えが合わないから? それでも助け合うから仲間であり、尊いんでしょうが!」
「ファンデルの思考回路が分かるからこその対応――! 仲間や友達などという低次元のレベルでは無い! 真奈美の分からず屋――!」
――驚いた!
イナリが初めて……私に怒った。
艦橋内を沈黙が走る……。
必死でなにか言ってやろうと思ったのだが、異次元が復帰している今は、それすらイナリには読まれてしまう。
……黙って座った。
……長く感じた沈黙を破ったのは、騒動の根源、異次元通信をしてきたサラマンだった……。
『えーと、……データ解析した。オイナリサン御苦労であった』
「はっ、有り難きお言葉。しかし、ファンデルワールスを救出できずに失いました」
『きゃつは私の忠告を無視した。自業自得、当然の結末だ』
信じられない言葉をサラマンから聞いた気がした……。
イナリが珍しくサラマンを問い詰める。
「それはいったい、――どう言う意味でしょうか?」
『きゃつを含む宇宙制御戦艦全てには、先刻イナリが遭遇した異次元消失装置についての危惧を伝えておいたのだ。それを次元戦艦の数と力に溺れ、粗末な作戦で敵に挑んだ。自業自得だ――』
黙って聞いていた――。
ただ怒りだけが拳の中に込められていく――。
『私の異次元にファンデルワールスの残骸を転送せよ。蓄積されたデータを解析後、異次元レンジに改造してやる』
「お待ちください! いくらファンデルワールスが敗戦したからといって、余りにも御無体。寛大な処置を!」
イナリの声を聞かずにファンデルの残骸がイナリの異次元から消失するのが窓から見えた。
『宇宙制御戦艦が謀反を企てていると言ったが、――お前は裏切るなよ』
イナリは少し黙っていた……。
「……はい。私の忠誠心は……変わりません。サラマン様」
『うむ。ではファンデルワールスが制御していたこの宙域は今からオイナリサンが制御するがよい』
「はっ」
テーブルに伏せていた顔をゆっくりと起こした。
「ちょっと待ちなさいよ。黙って聞いてれば勝手な事ばかり言って!」
『なんだ、何か文句あるのなら……黙っていろ』
さらりとサラマンが応えた。




