全知全能サラマン・サマー
全知全能、宇宙の神(自称)サラマン・サマーは宇宙制御戦艦たちの謀反を真奈美から知らされるのだが……。
全知全能サラマン・サマー
「今日はいったいなんの用だ? 暇人」
額に吹き出る汗を拭って答えた。
「イナリに聞いてよ。重大な事なんだから。ハア、ハア」
サラマンはイナリの方を向く。
「わざわざこんなところまで来て何用だ80318。任務遂行はどうした」
「大変でございますサラマン様――」
ようやく息を整えて私もイナリの方を向く。しかし、イナリはサラマンの前で……また緊張している~?。
「わ、わた、あたちの口からはとても申せません――ん。樋伊谷真奈美が代わりに申します。はい!」
「なにが「はい!」だ! あんた達の問題ぐらい、しっかり伝えなさいよ」
「――現在周辺宙域を監視強化中。第一級臨戦態勢。索敵中。おお忙しい中!」
イナリは慌ただしくレーダーのような物をグルグル回転させたり、イルミネーションのようなライトを点滅させたりしている……。
あんな装飾品、いつも点けてないくせに!
「……まあいいわ。単刀直入に言うと、宇宙制御戦艦が謀反よ」
「ピタッ」
サラマンは一瞬動きが止まった。
わざわざ「ピタッ」と言わなくてもいい気がする……。見りゃ分かるわ。
「……やっぱり何も考えてなかったんでしょ」
「全然……知らなかった。でも一体何故だ? ……いや、そんな筈はない。宇宙制御戦艦には私と同じ思考回路が搭載されている。まさか謀反など起こす筈がない」
真顔でそう言うサラマンの額に……汗が伝っている。
対宇宙人コンタクト用の立体映像のくせに、汗なんかかくな――!
「どうするのよ。イナリは一隻でも戦うって言ってるわよ。……勝てっこないのに」
「ううむ。その通り」
サラマンが色白の細く長い指を顎に当てて考え込む。
……心なしかイナリのアンテナが先程よりゆっくり回転している。ちょっと凹んだのかしら。
「ま、いいか」
「……。はあ~ため息出るわ。まるで他人事じゃない」
どうせ深刻に考えないと思っていたのだが……。そんないい加減な制御装置だから謀反を企てられるのよアホ! と大声で言ってやりたい~。
「言わなくても聞こえているぞ! 樋伊谷真奈美!」
「あんたこそ勝手に人の考えを読まないで!」
異次元制限されているのではなかったのか? この星だけは!
それとも、サラマンだけなんでもありなの?
「まあ、別に騒ぐほどのことではないのだ。この星を守る有機シールドは宇宙制御戦艦の異次元粒子砲でも簡単には破れまい。もし無理矢理シールドを突き抜けてきた場合は、相手の異次元シールドも解除されてしまうのだから、私自身の異次元へと容易に転送出来る。私には到底敵わない」
「自信過剰は身を滅ぼすわよ」
別に構わないけど。
「……樋伊谷真奈美……お前は私を守りたいのか滅ぼしたいのかどちらだ?」
細い目でサラマンが見つめる。
――それこそ本っ当っにどうでもいい事だわ。
「私はイナリがやりたいようにやらしてあげるだけよ。別にサラマンの一人や二人、どうでも良いことだけど、イナリが戦いに巻き込まれて壊れたりするのは勘弁して欲しいの」
「ふん。よかろう。……宇宙制御戦艦に守られているだけの二足歩行生物かと思ったが、逆にそれを守りたいというのが面白い。異次元レンジであれ、壊れかけのラジオであれ、機械が壊れないように大事にするのは大いに結構」
サラマンは偉くご機嫌な顔をする。
……別に気の効いた事を言ったつもりはないのだけれど……。
「しかし、心配は無用。私は全て把握している。80318、ご苦労であった」
「――は! 勿体ないお言葉! 有難う御座います!」
サラマンは優雅にマントをひるがえし、去っていこうとする。
……なにが全てを把握しているよ。驚いていたくせに~。
だいたい、なんで謀反を企てているかも知らないはずでしょ……あっ!
私はとっさにサラマンのマントを掴んで引っ張った。




