予約システムないわけ?
極秘情報をサラマンに伝えるために、真奈美とイナリはサラマン第一惑星へと向かう。
謁見の間には長蛇の列ができている~。
予約システムないわけ?
「サラマン第一惑星到着。有機シールド通過申請中」
目の前に水晶玉のような美しい惑星が現れると、イナリはその惑星を守るシールド解除申請を始めた。
スクリーンに文字やら何やらが慌ただしく表示される。何が書いてあるのかさっぱり分からない。
「許可申請完了。サラマン第一惑星へ降下開始」
「異次元シールドは解除した?」
以前にイナリは異次元シールドを解除せずに降下し、惑星をコーティングしている薄い膜を破って怒られた事があるのだ。
おっちょこちょいと言うか……なんと言うか……。
「――解除完了! おっちょこちょいは披護衛者の癖が伝染ってしまったと認識。降下中」
「それって誰のことよ。あと、勝手に頭の中を読まないでくれる。プライバシーの侵害だわ」
「完全な護衛の為には真奈美の行動、及び思考を把握する必要あり。よってその要望は却下。降下中」
「……あっそ」
イナリは異次元解析を行い、私の考えを読み取ってしまう……。
これが一番ストレスの根源なのかもしれないわ……。
大スクリーンに映る綺麗な青い真珠のような大気圏へと突入すると――突然ゴミゴミした惑星へと姿を変える。
統一感の無い様々な宇宙船が飛び交い、地上からは黒い煙が立ち上っている……。
空を飛ばない車のような乗り物はクラクションと言う名の騒音を鳴り響かせ、ちょうど昭和の終わり頃を思い浮かばせるわ……。
「――? 真奈美はまだ生まれていなかったと判断。なぜ思い浮かぶか質問中?」
「うるさいわねえ。余計な事を聞かんでいい! テレビで見たことにしときなさいよ」
「了解。データベース書き換え完了。――これよりサラマン様謁見場前の湖へ着水」
宇宙制御戦艦オイナリサンは静かに湖へと着水し、艦橋から外へ出るハッチを解放した。
「真奈美は謁見の順番待ちをしていて欲しい」
「はあ……。分かったわ」
ため息混じりの返事をする。やっぱり、私が順番待ちで並ぶ羽目になるのね。
今時、順番を並んで待つなんてありえないわ……。
せめて待合室くらい無いのかしら。いや、そんなレベルじゃないわ。宇宙制御戦艦なんか造れる技術があるんだから、なんだって出来るでしょう。
……整理券配るとか、時刻振り分けするとか。
いやいや、スマホで予約できるとか、せめて十三人くらいの話を同時に聞いてくれるとか~!




