自動回避システム作動!
宇宙制御戦艦オイナリサンは、真奈美の危機を察知し、自動回避システムを作動するのだが!?
自動回避システム作動!
「寿命が縮んだ。真奈美は目上の方に対しての礼儀等、徹底した教育が必要と判断」
「イナリの為に言ってやっただけでしょ。イナリは目上に媚びへつらう癖を修正してやらないといけないと判断!」
イナリの口癖を真似してやるのだが、イナリは怒りもしない。
「真奈美の護衛以外の仕事には興味大。早速作戦検討中。地球へ帰還。――到着」
モニターが映し出す風景が一瞬にして異次元に切り替わったかと思うと、艦橋内から私の部屋へと変わっていく――。
「異次元より真奈美を自宅の部屋へ転送完了。待機中」
「ご苦労様。はー肩凝っちゃった。やっぱ我が家が一番ね」
ばあさんのような発言をしながら肩をぐるぐる回した。
宇宙制御戦艦オイナリサンの艦橋内は、冷暖房完備だし、ソファーもあり、何不自由しない。重力まで地球と同じに設定してあるのだ。
「酸素濃度、湿度、気圧、浮遊物濃度、その他も真奈美用に調整している。完備中」
「はいはい。わかったわかった」
しかし……それでも気は休まらない。
やっぱり人間は宇宙での生活は向いてないのかしら……。
宇宙では生きていけないようにできているのかしら……?
「真奈美の思考回路の誤認識による疲労と推測。宇宙とはいえ地球上と変わりなし。部屋の中に居ると思えばいい」
「それが出来れば疲れたりしないわよ……」
部屋を出て階段を降りた。
「あーお腹空いた。お母さん、ご飯まだ?」
その声に台所から飛び出してきた母の目は――真剣だった。
「真奈美――! 一体どこ行ってたの! ――どんなに心配したと思っているの!」
母の目には涙が浮かんでいる。そう言えば……イナリが帰ってきた途端に家を出たんだった。ゴジュルヌの宇宙戦艦が飛び交う危険な外へ……。
――すっかり忘れてた~。
「ええっと……? ちょっとコンビニまで……って言わなかったっけ……」
そう口から出任せを言ったとき、母は掌で私の頬を――、
『自動回避。遅くてあくびが出るね、真奈美』
母の掌が、私の目先1ミリのところを大きく空振りする――。
思わず目を強く閉じて構えていた私は――、
「避けるな~!」
声を出してイナリにそう言ってしまった。
母には叱られて当然なのだ。自動回避だか何だか知らないけど、勝手に避けられても困るじゃない!
「そ、それは私の台詞だわ。いつからそんな子になってしまったの――」
母は顔を両手で覆って泣き始めた……。
母を慰めるのに、先程の敵艦隊を追い払う何十倍もの時間を費やした……。




