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ボディーガードは次元戦艦オイナリサン!  作者: 矮鶏ぽろ
最終章 宇宙制御戦艦オイナリサン!!!
122/196

次元戦艦集会所!

せっかく家に帰れると思ったのに……。次はどこへ連れていかれるの?

 次元戦艦集会所!


 おびただしい数の次元戦艦が均等に配置されている球型の大きなドームの中へと移動していた。


「――これはすごいわ。星全部が次元戦艦で出来ているみたい……」

 まるで馬糞(ばふん)ウニを表裏ひっくりがえして中から覗いているような景色だわ……。

「……真奈美の比喩表現は逆に理解しにくい! 誤解を招くと判断。ここは次元戦艦集会専用要塞。10万隻の次元戦艦が一同に集結している。――おっと、サラマン様がちょうどこれから発言される。拝聴中」


 耳が痛くなるくらいの無音となった――。

 艦橋の中で私のコーヒーをすする音が聞こえてしまいそうなくらいの無音状態――。


「……別に静かにしなくてもいいんでしょ? 小学校の朝礼じゃあるまいし」

「こら! そこ! うるさい。私語を慎みなさい!」

 怒られてしまった……。

 私の声に反応したのはイナリでも他の次元戦艦でもなく、要塞中央に立つ、サラマン当人であった。拡大投影されているサラマンの目が私の方をしっかり見つめている~。

『サラマン様に失礼。真奈美も静粛に!』

 艦橋内のモニターにそう文字が現れた。

 若い男性の姿をしているサラマンは、ここから見ると米粒より小さい。それなのに私の声が聞こえたってわけ? っていうか……イナリが私の声を翻訳して通信した?

「ねえイナリ、私の声をサラマンに伝えた?」

 小さな声でそう呟く。

『ブルブルブル。そんな怖ろしい事はしない――! サラマン様は周辺宙域であれば、別次元も悟れる能力をお持ち。真奈美の思考回路における「神様」に該当』

「なにそれ? 神様?」


 ……やれやれ。イナリはいつから中二病にかかったのかしら……。


「ゴッホン。ゴッホ、ゴッホ、ゴッホン」

 サラマンがこっちを向いて咳払いをしているわあ……。


「アーアー。マイクのテスト中」

 プッ、思わず吹き出してしまったじゃない! クッソッ~ムカつく~!


 本当に大事な会議か? これ?


「ゴジュルヌが馬鹿みたいに大軍を大宇宙へと送り込んで来ているので、殲滅(せんめつ)よろしく。何か意見のある者は後で異次元通信しなさい。終わり。解散」


 その言葉が終わる直後、殆どの次元戦艦が一瞬にて姿を消した。


「それぞれの異次元へと戻り、任務に着手。ゴ・ジュルヌ星団の艦隊についてはおおよそ全て把握済み。我々も地球へ帰還――」

 イナリが異次元へ転送しようとしたのを制する。

「待てえい! せっかくサラマンがいるんだから、さっきの事を話しなさいよ。仕事が欲しいんでしょ」

「……意見は異次元通信でないと無礼と判断。会議の最後にそうおっしゃっていた。会議の話を聞いていなかったのかと怒られるのがオチ。……躊躇中(ちゅうちょちゅう)

 躊躇中ってなんだ? 舌噛みそうになるわ――。

「それより――、こんなくだらない会議で忙しい次元戦艦を集める方が無礼だって私が言ってあげるわ。声をサラマンに伝えなさい。お~い、サラマ~ン!」


 モニターに映るサラマンは冷ややかな目でこちらを向いた。


 マイクのコードを片腕に巻き付けて片付けている……。

 なにもあんた自らする事じゃ無いでしょうがと言ってやりたい。

 ……恐らく、一番暇なのだろう……。


「無礼だぞ、80318」

 サラマンはイナリの事を名前では呼ばない。80318はイナリのコードナンバーであり、イナリ専用の異次元のナンバーだ。

「――! も、申し訳ございません。今のは私ではなく、樋伊谷真奈美でございます!」

「ちょっと、ペコペコ謝ってないでもっと近づきなさいよ。せっかく艦橋にテーブルと椅子があるんだから中に入って貰ったらいいじゃない?」

「真奈美。……頼むからこれ以上私のポイントを下げるような発言は慎んで!」


 イナリはサラマンに対して絶対服従していて嫌になる。犬呼ばわりされて喜んでいるくらいなのだ……。最近の出世しないサラリーマンの典型的な姿なんだと思う。


 私のお父さん? みたいな……出世しないサラリーマン。


「真奈美の父親は立派な犬サラリーマン。――しかし私は宇宙制御戦艦オイナリサン! サラリーマンなどとはまったく異なる高貴な存在。人間などという下等がに股二足歩行生物と比較されるのは遺憾!」

「がに股は余計よ!」

「がに股はがに股で構わん。それで話とは何だ、80318。それとも私に話があるのは、がに股二足歩行生物代表の樋伊谷真奈美か? どちらにせよ私は忙しいのだ。用件があるなら早く言え――」


 艦橋内の目の前のテーブルに、先程までマイクのケーブルを片付けていたサラマンが足を組んで優雅に座っているではないか――。


 お化けのような突然の出現に私は驚き――、イナリも同時に驚いた。艦内がビクッっと動いた気がした……。


「おっそーい! この宇宙の統括者たるサラマンを艦橋内に呼んでおいて、コーヒーの一杯も出さぬのか! あ、もう十秒も足ったぞ。80318、ポイント減点――!」

 目の前のテーブルへ異次元から小さなティーカップに注がれたコーヒーとスィーツと呼ばれる洋菓子が勢い良くせりでてきた。

 コーヒーが激しく波打っており、カップを乗せた皿に少しこぼれているわあ~。


「――もも、申し訳ありません。突然の御来艦、誠にありがとうございます。光栄の極みでございます。感謝感激ヒナアラレ!」

 イナリの御世辞をサラマンは片手で制した。どうでもいいが、サラマンがなぜ人間の姿をしているのか……私は理解に苦しむ。

「私にもコーヒー頂戴」

 サラマンの前に座わり直した。


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