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ボディーガードは次元戦艦オイナリサン!  作者: 矮鶏ぽろ
第二章 超次元戦艦オイナリサン!!
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一枚の文章フィルム

イナリが自爆し真奈美は……。 

 一枚の文章フィルム


 目を開けたのは、それから何分も経過してからだった……。


 今日1日色んなことがありすぎて、訳がわからなかった……。


 だから、疲れているのよ。悪い夢をまだ見ているだけなのよ……。



 夢なら目を開ければきっと醒める。そう信じて目を開いたのだが、目の前は悪夢と同じであり、ダッシュツボッドの扉だった。

「……イナリ」

 目から涙が溢れる。

 なぜこんなことになってしまったの……。考えれば考えるほど涙が溢れ、拭っても拭っても後をたたなかった。

 大きな声で泣いた。これだけ泣いたのはいつぶりか分からない。ただ一人、小さなダッシュツポッドの中で泣き崩れた。



 ただ時間だけが過ぎていった。


 私がようやく周りを見渡し、現状を知ろうとするまで、何時間を要したのだろう。ここにはイナリはいない。声も聞こえなければ、モニター一つ見つからない。

 艦橋にあったのと全く同じ白いテーブルの上には、一枚の文章が印刷されたフィルムが置いてあったが……、気の効いたことは何一つ書かれていなかった。


『真奈美へ。このフィルムを真奈美が見ているということは、私に非常事態が発生した直後ということになる。任務遂行力不足でこのような事態になって申し訳ないのだが、まだ真奈美については、生存する可能性がある』


 赤い目を擦りながら、フィルムに現れる文字を読み続けていく。


『このダッシュツポッドには異次元通信装置を含む、異次元使用機器は一切搭載していない。なぜなら、超次元戦艦である私に非常事態が発生するとすれば、私以上の存在によるものの要因でしかあり得ないからだ。次元戦艦は他の異次元使用を敏感にキャッチ出来る。現状でそれは危険となる懸念がある。そのため、あえてこのダッシュツポッドは大宇宙での量販品をそのまま使用している』

 異次元通信が使えない……? じゃあどうやって助けを呼ぶのよ。それに、イナリは今日のようなことが起こる事に、気が付いていたのかしら……。


『ダッシュツポッド射出数日後、大宇宙共通語にてSOS信号を発信する仕組みになっている。この信号を解析出来る文明を持つ宇宙人であれば、このダッシュツポッドをむやみに宇宙空間で開いたりはしない。マナミ銀河太陽系の地球で開くか、大気圧一気圧、酸素濃度21%で解放するであろう』


 ……地球までこれを……送ってくれるような親切な宇宙人がいるかしら……。


『このダッシュツポッドで真奈美が生存出来る確率は極めて少ない。だが気を落とさないでほしい。確率で例えれば、地球上のどこかにある玉をレーダー無しで七個探すようなもの』


 なんじゃそりゃ! 里見八剣伝か?

 声はうるさいくらいによく響く……。


『このダッシュツポッドでの生活だが、空気、食料、日光等は問題ない。エネルギー保存の法則により、全て循環再利用される。右のレバーを回せばそのエネルギーで全てが解決される』

全てって……なによ。

『二酸化炭素は酸素へ。熱エネルギーは照明の光エネルギーへ。そして最大の素晴らしいところだが、なんと排泄物は有機食料へと姿を変えるのだ!』


「アホか! うんこなんて食べれるか!」

 思わずそう言っていつものようにツッコミをいれていた。


「本当にイナリはいないわけ? 実はドッキリなんじゃないの?」

 ダッシュツポッドの中を蹴り飛ばす。ゴーンと鈍い音だけが響き渡る。

「出てきなさい! どうせ外側にでもくっついているんでしょ!」

 外の様子が全く見えない。小さな丸いスパイグラスが一つ取り付けられているだけなのだ。真っ暗な宇宙が見えるだけだ。

「それに、サラマン! 馬鹿! 鶏の短足! ブロイラー! さっさと出てこい!」

 そもそもあの馬鹿が次元戦艦なんて無駄に造りすぎるからいけないのよ! しかし、散々悪口を連呼しても、あちこちを蹴っ飛ばしても何も変わりはしなかった。


 ……だんだん元気も無くなってきた。


「わ、私も……ここで死んじゃうのかしら……」

 ふとそう思うと、今の自分が置かれた現状が恐怖になって押し寄せてくる。

「誰か助けてよ!」

 今度はそれを喉がかれるまで叫び続けた。

 そして泣いて、いつの間にか眠ってしまった。地球上の時間ではもうとっくに寝る時間であった。


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