最終手段
ミサイルが底をついたとき、真奈美は最終手段をとる――。
最終手段
「……もう最後の手段ね。イナリ、後退するのを止めて全速前進に切替えるのよ! それと同時に核弾頭全弾発射して、散拡波動砲で敵をビックリさせて、頭から突っ込みなさい――!」
「ツッコミ? なんでやねん! と解釈中」
「さっさとヤレー――!」
今日一番の大声に、イナリは急速度で加速した――。
艦橋内に今まで感じたことがない位の重力がかかる――。
私はソファーまで吹き飛び、顔に痕が付いてしまいそうなくらいめり込んだ。
「核弾頭全段発射――! 散拡波動砲発射――!」
目の前に三尺玉が炸裂したような光の筋が出来る。敵のミサイルが全て誘爆し、目の前を光の壁へと変える――。
「接触まで2秒――。艦橋内にショックアブソーバー展開。完了」
艦橋内が急に白い発泡スチロールの様なもので埋め尽くされる。
「衝撃にご注意下さい~」
注意するもなにも――白いものだらけで身動きすら取れないじゃないの~!
――ゴガ! ガガガリガリガリ――!
金属がきしむうな嫌な音と振動が艦内に伝わる――。
同時にいくつもの警報が鳴り響く――。
白い発泡スチロールの中で吸収しきれなかった衝撃を全身に浴び、声が出せない……。
「真奈美、無事か?」
「……全然……」
体の全ての関節がバラバラになりそうだわ。痛くてたまらない……。
「敵艦より入電――」
するとイナリとは別の警報音が鳴り響いていた。
『……ま、参った。まさか超次元戦艦が頭突きをしてくるとは……。私の負けだ……。サラマン様の裁きを受ける。だからお願いだ。……これ以上破壊しないでくれ。壊さないでくれ……』
イナリの艦首は次元戦艦20202に比べて尖っている。だから体当たりでも効果があるはずだと思ったのだが、正直……こうも上手くいくとは思ってなかった。
白い発泡スチロールが、艦橋から排出されると、ようやく私は体を起こす。
「サラマン様の裁きでお前は異次元電子レンジにされるかもいれないが、それでも裁きを受けるのだな?」
『ああ……誓う。お願いだ。破壊しないでくれ!』
「――駄目よ――」
「騙されちゃ駄目イナリ。一度裏切りを覚えた奴は、敵でも見方でも何度でも裏切るものよ。異次元が復帰したところで逃げ出すに決まっているわ!」
「その可能性は無しと判断。20202の重力推進装置は現在出力ゼロ。異次元転送に必要なエネルギー供給不可。無抵抗。そのため、サラマン様へ報告するために連行が必要」
「まだそんな寝言を言っているの――!」
そう言った時、またもや大きな音と振動が響いた――。




