迎撃ミサイル残数ゼロ
迎撃ミサイルの残数だけが時間とともに失われていく。もう、破壊される時を待つだけなのか、オイナリサン!?
迎撃ミサイル残数ゼロ
艦橋に戻っても、事態は改善されてはいなかった。
「迎撃ミサイル残数100、99、98……。絶望中」
そのカウントダウンは……まさに死へのカウントダウンであった。
「でも、なんか……負ける気だけはしないのよね……」
作戦を考えようとすると、イナリはまた扉を開いた。
「脱出カプセルあり。真奈美の護衛最終手段。脱出を推奨中」
「バカなこと言わないのよ。まだ負けが決まった訳じゃないでしょ」
さらりとその要求を断る。
「それに……。
艦長は船に命を預けるものなんでしょ。私だけ逃げるわけにいかないわ」
――イナリは黙った。
……? 泣いてるのかしら。
「グスン。感動の制御回路があり良かったと判断。感動中」
「……ばか。感動するのはまだ早いわ。それより、敵が知らない武器はないの? 異次元かんしゃく玉とか、散拡波動砲とか」
「異次元かんしゃく玉は危険なため異次元で管理。艦内には無し。散拡波動砲は発射可能だが、あれは地球規模の兵器。次元戦艦相手には効果極少と推測」
――! 地球規模と聞いて思い出したわ。
「世界各国からこっそり拝借している核弾頭があるんじゃない? 今持ってる?」
以前から……、地球上の核兵器を無くすために1日1本づつ、こっそりイナリが盗んでいるのを思い出したのだ。
平和への地道な作業だ――。
「ああ、それなら魚雷発射口から発射可能。ただし、宇宙空間では現在の迎撃ミサイルより少し派手な程度。威力はほぼ無し」
「でも敵は見たことない武器なんでしょ。異次元が使えない今、敵より優れているところを最大限に生かさなきゃ勝てないわ」
「弾装、エネルギー共に不利。知能指数はこちらが上と判断。あ、迎撃ミサイル残数ゼロ。回避のみに専念――」
目の前の爆発が止むと、黒く長い不気味なミサイルが音も立てずに右や左を無音で通りすぎていくのが見えた。
――一発でも当たったら……私は身震いした。




