巨大な脳 次元戦艦制御装置――
痛いとの悲鳴に戸惑う真奈美。――我慢しなさい!
巨大な脳 次元戦艦制御装置――
「痛い、助けて、初めてだこんな感覚。もうだめだ。痛くて仕方がない。降参信号も敵は拒絶中」
体を起こして立ち上がった。
「痛いですって? そんな馬鹿な回路は切りなさい!」
「現在不可。痛覚回路は動力室へ行かないと切れない。痛い、痛い」
「しっかりしなさい。私がそれを切ってあげる。場所はどこなの?」
艦橋裏の扉が開いた――。
「動力室迄の全扉解放。痛覚回路の位置をフィルムに印刷。早く行って欲しい。早く!」
「ええい、急かすな! 虫歯の子供か!」
プリントアウトされた一枚の紙のようなフィルムを持って駆け出した――。
「私が戻ってくるまで――やられるんじゃないわよ!」
「迎撃中。ズベコベ言わずに早く行ってよ!」
イナリも相当テンパっているみたい。細く長い廊下を全速力で駆け出した。
途中、何度か艦内に衝撃が走ったが、廊下の照明がついているのを見ると、まだ沈没してはいないようだ。しかし、体にかかる別方向からの重力は少しずつ強くなる……。
ブラックホールの接近は間違いがない――。
「ここね」
『動力室』と……ご丁寧に日本語で書かれている部屋の前に着いた。
扉の横のボタンを押すと、重そうな扉はゆっくりと開いた。私は息を飲んだ。
――そこには巨大な人間の脳ミソのようなものが……天井から吊るしてある――
無数のケーブルに繋がれた、超巨大な脳――
「――こ、これが、イナリの制御装置」
あまりにも気味が悪い。
「あ、ゴメン。それはダミー。ただ吊るしてあるだけのハリボテ。制御装置は奥の部屋。それより早く! 痛くてなんだか麻痺してきた」
――今日一番ムカついた……。
その脳ミソのようなダミーを蹴っ飛ばし、ずかずか踏んで歩いた。
新聞紙を丸めたものに模造紙を張り付けて色が塗ってあるだけの……チンケなハリボテだった。
「――まったく、紛らわしいもの作るな!」
その奥にある書庫のような部屋へと入った――。




