次元戦艦 対 次元戦艦
笑い声と同時に現れたのは……次元戦艦20202だった。
イナリはこれで助かると喜ぶのだが、真奈美は……。
次元戦艦 対 次元戦艦
「誰? なにごと?」
「音声解析中。……完了。次元戦艦20202と判明。現状報告と救助要請。真奈美、助かる可能性拡大! 安心中」
イナリはそう言うが、私は少しも事態の解決にならない気がする。
仲間ならなぜ今頃……しかも笑いながら登場するのよっ!
いっそう脱出困難になりそうな予感……。
『久しいなあ、超次元戦艦80318。いや、オイナリサンだったかな。偉く苦労しているようだが、どこか故障でもしたのかい?』
「故障はないが、異次元が使用出来なくなった。原因調査中だが不明。20202は何か異常は無かったか?」
目の前のスクリーンに次元戦艦20202が映し出された。わりと近くにいるのだろう。
『それは奇遇だねえ。実は私も異次元とのアクセスが急に出来なくなったようだ。困った困った』
――全く困っていないような言い方だわ……。
今思い出した!
こいつは昔、イナリと宇宙を航行中に異次元から急に現れて、直進の邪魔だからドケと言ってきた嫌なやつだ。あの頃は多次元戦艦とか言ってて、……イナリより位が上だった筈だが……。
「イナリ! こいつって確か嫌なやつだったわ。なにか企んでるかも知れないから気をつけなさい!」
「それは無いと判断。我ら異次元戦艦は先ほども言ったが忠実にサラマン様に与えられた任務を遂行するのみ。現在はここからの脱出と、サラマン様への報告が最優先」
まだそんな寝言のようなことを言っているイナリに嫌気がさす――。
「じゃあなんでこんな奴が銀河系内をうろうろしてるのよ! 私達が逃げようとしている方向からノコノコ出てくるのよ! それに第一声が、『ファッファッファ』って笑ってるのよ? どう考えてもこいつが何か仕掛けたに決まってるじゃない。悠長にしてたらやられちゃうわ。シールドくらい張りなさいっ!」
艦橋内のテーブルをバンと叩くと、目の前には光輝くシールドが張られ、――その直後に数本の光の矢がそのシールドに突き刺さり、真昼の太陽以上に光を散りばめた。
止まっていた警報音がまた鳴り響く――。
「なにをする次元戦艦20202! 私は超次元戦艦80318。認識出来ないのか?」
イナリがそう問い掛けると次元戦艦からのレーザーによる砲撃が一時止んだ。
『認識しているとも。……貴様のせいで私は……多次元戦艦から次元戦艦に降格させられてしまったのだ! お前と違い、俺はサラマンのために何度も何度も任務につかされた。時には破壊されるような危険な任務もあった。それでやっとの思いで昇進したのだ。それが――』
声から怒りが感じられる。こいつも機械のくせに……やけに感情的で嫌気がさすわ。
『――それが貴様の告げ口のせいで降格だ! せっかく苦労して昇進したのに、たった一言でだ! そして貴様はあろうことか二階級特進だと? ふざけるな! 怒りを通り越して――涙が出るわい!』
……。
……。




