もし、僕が人間だったとして、何のために生きているの?
初めまして。セツと言います。夢を見るのが好きなので、よく寝ています。毎日どんな夢を見るのか楽しみです。そして今回初めて作品を投稿しまして、使い方も全くわからないので、作品を進めながらなれていきたいと思います。
もし、僕が人間だったとして、僕は何をしているのだろうか。何を夢見ているのだろうか。何を欲しがっていて、何を失っているのだろうか。
夢の中で自分を見つめる少年。想は、人間ではない。人間からも、人間として扱われていない。
もし、人間であれたなら、僕は泣けただろうか。いや、多分、泣けただろう。
泣きたいほどの苦痛に微妙な表情の変化を見せる。
想と言う名はある研究者に付けられたその少年の呼称だ。付けられたその日から、少年は生きていると自覚する。そして、自らの肉体は、生き物として矛盾していると自覚し、絶望の海を眺め続けている。
少年は、犬に臓器を食われている。
そして、犬を追い払おうにも、手足は人肌に温まった頑丈な金具でまとめられている。少年は痛みをこらえることしかできない。
犬は貪る。食欲のままに食い荒らす。
気付けば、少年の内臓は半分ほど無くなっていた。
そして少年は、『また』死んだ。
これで二十回目の死亡。そして、次の日が訪れる零時。少年は二十一回目の生をこの世に受ける。
少年が自らを人間ではないと論する最もな理由。それが、不死身だ。
――――この少年は、とある実験体により生まれた。
実験体No.0。実験体の名はミキ。女性である。彼女は生まれつきの持病を持ち、病弱にして筋力などほぼない上に、両親には虐待を受けていた。しかし、彼女は類い稀なる美貌を持ち、小柄でありながら彼女に与えられた専用剣銃『ラブア』を持った際の戦闘能力は、屈強な成人男性を複数人同時に相手したとしても圧勝する程である。そして彼女には三人の仲間がいた。一人は、幼馴染みであり、社会的地位も高く、才色兼備にして彼女の夫となった男である。彼の元で、ミキは専用剣銃を手に入れた。もう一人は、彼女の持つ異色の才能、霊視能力。同じく代々それを受け継ぐ家庭に生まれた吸血鬼を宿す男である。ミキを襲う鬼や悪霊を数多く祓い続けた。そして、最後の一人。彼女の死を見た唯一の人間である。彼は鬼の気質を持って生まれ、彼女の真の理解者である。
ミキは十四歳の時、極秘の研究プロジェクトに巻き込まれる。彼女の異常な肉体を利用した非人道的な実験である。
彼女は戦闘能力以外に、自然治癒力、生命力も異常なものであった。体に刺傷が複数でき、普通ならば失血死を免れぬ程の失血をしたとしても生存していたのだ。
それを知ったとある組織に、彼女は誘拐される。
その後、彼女は毎日過酷な実験を受けていた。自然治癒力を試すための数々の暴行。科学的なダメージに対する耐性を調査するための毒ガス実験。そして日に日に増えてゆく性的暴力。
それらから、命を賭して救出に出たのが、三人の仲間である。
この三人の仲間を頼りに、ミキは十八年の短い人生を全うしたのだ。
そして、想はミキの肉体の一部を培養した『第二のミキ』である。細かく言うのであれば、彼女の細胞に鬼を持つ男の細胞が混じっていたのだ。それを培養した結果、想が誕生したのだ。
想は研究所で生まれた。そして、異常な肉体を持つミキと鬼を持つ男の遺伝子を受け継いでいる。実験の対象になるのは必然的な事であった。
その実験により少年の肉体は有り得ない能力が明かされる。
筋肉をどれ程削ぎ落としても、時計の短針が零時を指す度に、少年の筋肉は一定量まで回復し、皮膚まで元通りに修復されるのだ。その上、戦闘能力がNo.0の数倍以上に高い。しかし、生まれも育ちも研究所の為、少年はそこで行われている事が非人道的とも、抜け出したいとも思わない。何より、No.0と鬼の男の遺伝子を継ぐため、人を殺すようなことを滅多にしない。
殺したくない。という意思があるわけではなく、殺す必要性がない。と感じているからだ。
現在、時計の短針は十一を指す。夜の十一時だ。研究者は少しずつ、確実に、モニターに集まってくる。
少年の肉体が再構築される瞬間は何度見ても別世界を覗いているような、非現実的なものを思わせる。
しかしそれはおかしいのだ。元々、このような実験自体が、日本という平和国家で行われるべきものではないのだから。
少年はクローン培養の末、失敗により産み出された。クローンは方によって禁じられているものだ。それを行っていることもまた、日本にそぐわぬ紛れもない事実だ。
それを理解しておきながら、この研究施設で働く人間は、ほんの少しの躊躇いもなく従事している。
ここで十数年前、一人の少女を救うために闘った少年のことすら、彼らの脳は記憶の中から忘却し、これまで通りの犯罪を犯し続ける。
「そうえば、聞いたことあるか?」
「何をだ」
モニターを遠目から見る若い研究員と少しシワが目立つ研究員が交互に口を開く。
「ここで十数年前、ある女子中学生が実験体として誘拐されてきたんだ」
皺が深く掘られた顔は銅像のような威厳がある風に見える。しかしその頬はニヒルに歪んだまま黄色の歯を見せながら、息を吐くように言葉を発する。若年の研究員はモニターを見ながらでも伝わる湿った雰囲気に眉を潜める。
「小耳に挟んだ程度になら、聞いたことはある。」
一応ここに就いて、まだ若い方なので話を聞かざるを得ない彼は、少しため息混じりに言うと、盛大に興奮した獣の息で返してくる。知っているという意味を込めて返答した彼であったが、どうやら伝わっていないらしい。非常に不愉快であった若者研究者は知らず知らずのうちに距離をとっていた。
しかし、無精髭の加齢臭を放つ研究者は容赦なしに近寄る。
「その子は随分可愛かったみたいでなあ…」
「まるで自分が経験したかにように言うな。」
早く話が終わってほしいと願っていても、秒針は一秒毎にしか進んでくれない。
そしてなおも独走する無精髭。
「いやあ、一度は見てみたかったんだがなぁ。ある男三人が連れ去ったみたいでなあ」
白衣に唾を散りばめながら口を開ける無精髭を見て、明らかに嫌悪感を示しながら彼は毒突く。
「話し相手がいないからといって私に話し掛けないではくれないか。」
先程まで達者立った口が一気に引き締まり、脂汗が額からにじみ出てきた。小さく呻きを発する口を持つその顔は、なんとも例えようのない歪み方をしていた。
しかし、若者に手を緩めると言う選択肢はないようで、淡々と突いていく。まるで蠍だ。
「あなたが唯一ここの生存者と言うのは知っている。しかし、あなたがここで犯した罪も、ここの研究員は全員知っている。」
「んひぐぅ...!」
徹底的に潰そうとしたが、耳に粘りつくような粘着質の悲鳴ともつかぬ呻きが、周囲の目を引いたので、静かにモニターを眺めるようにした。視界の右端に、未だに此方を睨めつける視線を感じるが、これ以上寄ってこないと見て、彼は無視をする。
モニターに集まった人混みから、一人の同年代程度の男性が歩み寄ってくる。しかし彼は無視を決め込む。何より少年の神秘的な瞬間を見逃したくないのだ。
それを理解していながら目に前にたった男は話始める。
「あまり大きな声で言ってやるなよ。可哀想だろ。」
無精髭を視線のみで射殺すような顔をしてよく言えたものだ。と感心し、視線をモニターから外す。
「それに、回りにも迷惑だろ。慎めよ氷花」
「ここに来た当初は、海花の方がうるさかったろ」
海花と呼ばれた男は少し首を傾け微笑む。
「忘れたな」
そう言うと、氷花の横に立ってモニターを見据える。二人とも表情は固かった。いつの間にか除け者にされた無精髭は別の居場所を求めて移動していたようで周囲には誰もいない。
それを承知して、海花は小さく呟くように、それでも隣に居る氷花には聞こえるように告げる。
「...あの子が」
口を開く海花の眉はひそめられ、その顔は悲しみを宿す。
「...ああ、あの子だ。」
その先の言葉を理解したように呟く氷花。
否。
「あの子が俺の父さんの血を継ぐ子だ」
理解しているのだ。
「お前の父親の血だけじゃない。」
海花の発言にふっと息を漏らす氷花。
「解ってるよ。お前の母親の血も継いでるな」
「解っているなら、いい」
満足そうに、しかし顔には出さずに呟いた。
そう。
No.0。ミキは一人の子をこの世に産み落として死んでいった。そして、その子が海花である。
また、想を生み出したのはミキの細胞と鬼の男の細胞である。そして、鬼の男と別の女性との間に生まれたのが氷花だ。鬼の男はその後、自殺している。ミキの墓の前で。これが約束だ。と、一言吐いたあと、『何者かに首を潰されて』死んでいる。
人間関係複雑ですけど、ちゃんと設定はありますから、楽しく想像してくだされば、幸いです。




