毒蛇殺人事件:1
不意に浮かんだ内容です
一般的に知られているこの星、地球には多くの生物がいるということを、多くの人間と言う知的生命体は知っていることと思う。
知的生命体という表記で人間を表すことに関して、あまり快く思わないと思う人も、もちろんいると思う。
だけど私、一律公平はそんな中でも、知的生命体と言う表記を止めないのだと思う。
何故なら、どんなものに対しても、どんな事に対しても、平等と言う言葉を貫くというのが、私の人生における目標であり、義務と言うレベルまでに至っている。
どのようにしてこのようなことになってしまったのかと言うことを、今このタイミングで話すのは時期的にも早いであろう。
それでは物語と言う枠の中では”平等”に欠ける行為である。
ならば、いつごろに語るのかと言えば、せいぜい敗北した時とか、死ぬ間際と言うのが通説と言うのを、何かの本で見た気がする(タイトルは忘れたが)。
その信念に乗っ取って考えるのならば、しばらくは語る機会はなさそうだ。
さてさて、そんな平等主義を押し通している私は、現在カウンセリングという仕事を行っている。
簡単に説明するのならば、相手の悩みを聞いてどの様にすれば改善できるかをアドバイスする、と言うものである。
多くの知的生命体(人間)は、困難に立ち向かうという出来事が必ずしも毎年のように起こると思う。
そんな中で、挫けそうになったり、限界を感じて何事にも取り組むことができなくなる人もいる。
そんな人達を放っておくと、後々世界のバランスを崩す結果に繋がってしまうかもしれない。
世界のバランスを保つためにも、今日も私はそんな人達のケアをする仕事ーーーーカウンセリングを行うと思う……のだが、そんな私には最近困ったことがある。
それはと言うと……
「あ! 一律君! 大変です!」
そういって私の書斎で、騒いでいるスーツ姿で長髪の女性がいる。
彼女の名前は、山城南。現在21歳の刑事をしている。
1度カウンセリングをして以来、頻繁にやってくるのだ(正直迷惑なのだが)。
「どうしたんだね? 山城さん。 何かあったのかい?」
「あのね……実は……」
「実は?」
「紅茶を床にこぼしちゃって、ほら」
と山城の指さす方向に、割れたカップとシミ一つなかった絨毯を色鮮やかな色にしていく液体がこぼれている。
私は慌てて、近くにあったティッシュでふき、彼女の頭を軽く小突いた。
「君ね……こぼしたんなら片付けくらいできるようになりなさいよ。 いい大人なんだから!」
そうすると、少しすねたような顔をして、小声でごめんなさいと言う。
本当にそう思っているのかはわからないが、彼女がこういう行動をするときは決まっていつものように何か厄介ごとを持ってきてるに決まっている。
「あのね、一律君、いつものようにお願いしたいことがあるの」
「いつものようにって、君からお願い事をされるのはもうごめんだ。 帰ってくれないか?」
「そんなことを言わずに!」
と詰め寄る山城を退けて、書斎の椅子に座る。
そしてデスク上の資料に目を通そうかと、手を伸ばした瞬間、取ろうとした資料を山城がかっさらっていく。
「一律君じゃなきゃ、ダメなんですって! お願いします!」
そういうと彼女は頭を深く下げる。
私は無表情に、彼女から資料を奪い返して
「じゃあ、話だけでも聞いてあげようか」
と言いながら、奪い返した資料に目を通し始める。
彼女は頭を上げて、ポケットから手帳を出して話を始める。
「最近ちまたで流行している殺人事件をご存知ですか? マスコミでは毒蛇殺人事件と言う風に報道していますよね」
「ああ、ちまたで噂だね。 何でも犯行に使われている毒物が、コブラ科の動物が持つ神経毒と同じものだから、毒蛇殺人事件と――――安いネーミングセンスだなと思うけどね」
そういって、資料を置いてパソコンを立ち上げはじめる。
その間に、先ほどの紅茶のゴミをせっせと片付ける。
そのまま、山城の話は続いた
「はい。 確かにその通りです。 この事件の被害者は合計3人で、いずれも女性ですね」
「ふーん、その女性は確か、18・19・20歳だったね。 テレビで言っていたよ」
パソコンが立ちあがった音がしたので、デスクに戻り再び作業を始める。
カタカタカタと、キーボードをたたく音の中、山城の声は先ほどよりやや多きめになった。
「はい。 どうすれば犯人を逮捕できるでしょうか?」
ガクッと力が抜けてしまうような発言に驚いた。
「そんなことをいちいち私に聞くなよ。 そんなものは君たち警察の仕事だろ? 私ができるのはせいぜい、他人の痛みを癒すお手伝いをしているだけだ。 そもそも私は探偵とかそう言うものではなくて、ただのカウンセラーなんだよ」
「いいえ、先生なら必ず解けるはずです!」
と自信満々に顔を輝かせながら、彼女は私に言う。
正直言って付き合いきれない――――と言いたいところだが、過去に山城が抱えていた事件を3つほど解決してい待っているのだ(だから、彼女は頻繁に私の元に事件の解決を依頼しにやってくる)。
その時は、たまたま事件に居合わせてしまったから仕方なく解決したのだが、今回は話が違う。
「山城君、力になってあげたいのはやまやまだけど、私には仕事があるんだ。 悪いね」
そういって書類の整理と、パソコンの操作を同時に行う。
しかし、次に山城が言ったことが私を事件へと導く要因になってしまった。
「そうですか。 そうですよね。 一律君は無残に殺された女性と犯人を平等に
扱っているんですね。 これがあなたの言う平等主義とは――――笑えますね」
その言葉を受けて私の考えは180度変わった。
平等? 何を言っているんだこの小娘は。
「おい、山城。 私にその事件を解決させろ。 平等主義の何たるかを、犯人と君に思い知らせてやる」
とまあ、うまい具合に誘導されてしまった。
こうして私は事件の解決に参加することになってしまった。
平等主義の名に懸けて、絶対不平等な状況は許しがたい。
そして、平等主義を馬鹿にしたこの小娘に思い知らせる必要がある。
世界は平等であるべきだ。
たとえどんな時でも、どんな状況でも――――それを崩す者は何人たりとも許すわけにはいかないのである。
こうしてまんまとはめられてしまった私は、彼女の抱える”相談”を”解決”にするために、動くこととなってしまった。
更新は不定期になると思います