three. 出会い。
私と中村くんの出会いは入学式。ではなく、その前のオリエンテーションのときだった。
高校につき、自分の出席番号と同じ番号の下駄箱に靴をいれるよう、受付の先生に指示された。
昇降口に入り私は目を見開いた。
下駄箱の一番上が自分の身長の十センチ上ぐらいまであったのだ。
私は一番上ではないことを願いながら自分の番号を探す。
(あ、あった。…え?)
という喜びと同時に大きなショックが私を襲った。
下駄箱が一番上だったのだ。手を伸ばしても届かない。目では見えるのに。下駄箱の取っ手に手をかけられない。
(さいあくーーー。)
私はもう泣きそうだった。周りの人は見て見ぬふりをするし、腕上げすぎて腕痛いし。自分の身長を恨む。てか、先生のことも恨む。こんなにも背が低いのにー!
背伸びして、手を頑張って最大限までのばす。
その時だった。
私がどんなに頑張っても届かなかった、あの下駄箱が開いた。
でも開けたのは私じゃない。
後ろを振り返ると、直角に見上げるくらい大きな男子が立っていた。
「くつ、貸して。」
彼は私の手からローファーを優しく取ると、ひょいっと下駄箱にしまった。
「あ、あの。ありがとう。」
彼は私と同じ目線になるようにしゃがみ込むと、にこりと微笑んだ。
「名前なんていうの。」
彼からはふんわりと石鹸の香りが漂ってくる。
「ええと、相馬実桜です。」
「相馬さんかぁ、俺、中村芳也。よろしくね。」
「あ、よろしくです。」
軽く会釈をすると遠くのほうで、
中村ー、と叫ぶ声が聞こえた。
「あ、やべ。また、あとでな。じゃあな、相馬さん。」
彼は声が聞こえたほうへと走っていった。
それが私たちの出会いだった。
それから毎日。同じクラスというのもあり、靴を出し入れしてもらってる。だから、他の男子よりも関わりがあるのかもしれない。
読んでくださってありがとうございます。
次回もお楽しみに。