05山手地区警備指令 ザ・ガードマン
朝。少し肌寒い秋風がそよぐ港街ボーウェンの高台にある裕福層の住まう町、『山手地区』を一種異様な集団が歩いている。
1人先頭を行くのは金緑色の『ミスリル銀の鎖帷子』を着込んだ、凛々しい少年サムライ、アルトだ。
腰には身幅広く重厚な刀が差してあり、いつでも抜ける様にと鯉口付近に左手が添えられている。
そのすぐ後ろにメイプル男爵が続く。小太りで人の良さそうな中年紳士だ。
男爵の左右に付いて歩くのは、草色のワンピースに『なめし革の鎧』を着込んだねこ耳童女と、白い法衣の上に『胸部鎧』を着けたハーフエルフの乙女。マーベル、モルトの女性陣である。
そして男爵のすぐ後ろを歩くのが『漆黒の外套』が怪しい雰囲気をかもし出す、青年魔道士カリストだ。眼鏡が太陽光を反射してその瞳が覗えない辺りが、いっそ怪しいオーラを強くする。
完全武装をした冒険者にメイプル男爵が前後左右を囲まれながら進んでいる。そう言う状況である。
偶々道すがらで出会った人々は、皆一様にギョッとする。そしてしばし目を皿の様にしてこちらを注視すると、首をかしげながら足早に去っていくのだ。
別にメイプル男爵を誘拐中とかそう言うことではない。これはあくまで護衛行動だ。
「えっと、ちょっとこれやりすぎじゃないですかね?」
先頭を行くアルトが市民の視線に耐えかねたか、そう弱音を吐く。
警戒の為、前方から自分の目を離す事が出来ず、この異様な行進の間は酷い孤独を感じている。そのせいで神経が過敏になっているのもあるだろう。
「黙ってキリキリ歩くにゃ」
「うへぇ」
しかし後頭部に投げかけられたのはなんとも思いやりの無い言葉で、アルトは思わず力なく異音を口からもらした。
「まー、ウチもちょっちやりすぎかなー、とは思う」
そんなアルトを労うと言うか慰める様に、モルトがフォローする。こういう仕事に対してやり慣れていない身からすると少々照れくさいのも確かだ。マーベルなどは逆に普段と違う状況にテンションが上がるのか、妙に誇らし気ですらあるのだが。
「護衛は『やり過ぎくらいが丁度良い』って、おやっさんも言ってた事だし、アルト君には慣れてもらわないとね」
市民の視線によるダメージを最も受けにくい位置にいる最後尾のカリストが言うと、メイプル男爵を含めた一同は諦めからの苦笑いで頷いた。
おやっさんことレッドグースが言うには、護衛は守るだけでなく、襲撃者への威嚇をした方が効果が上がるそうだ。「これだけ厳重に守護しているぞ」とアピールする事で、襲撃する意志を削ぐということらしい。
もっとも、襲撃者が暗殺対象を決め付けている場合は、有象無象からの護衛の場合より意味が薄いのだが。
まぁ自転車のツーロックと同じで、やらないよりはマシ、という程度かもしれない。
「理屈じゃわかってるけど、発案者がいないのはズルイ」
と、仕事なので諦めつつも、愚痴の一つもこぼさないとやってられないと言う態のアルトだった。
ちなみにレッドグースの姿がこの場に無いのは、別にサボっているわけではない。
彼は『ハイディング』スキルで姿を消して、少し離れた所からこの集団を見守っている。
これは、この目立つ集団を客観視することで、警備の死角を少なくする為だ。
「私としてはこれだけ厳戒態勢を取っていただければ、あなた方に護衛依頼した甲斐があるというものですよ」
「ま、任せてください」
メイプル男爵からそう労いの言葉が出れば、アルトはハッとして背筋を伸ばす。護衛対象にこう言われてはシャッキリするしかないのである。それでなくてもメイプル男爵は年上で地位的にも目上で、そしてこの仕事の依頼者なのだ。
さすがに仕事中に弛んでいたな、と彼は思い直して意識の上での警戒レベルを少し上げた。
「そう、それにゃ」
「どれ?」
アルトがキリリと警戒に戻った所でねこ耳童女が思い出した様に口を開いた。反射的にアルトが疑問を上げるが、それは無視して言葉を続ける。
「おっちゃんくらい偉い人にゃら、わざわざアタシらに依頼しなくても護衛くらいつけてくれるにゃ。にゃんで頼んだにゃ?」
訊ねられたメイプル男爵は、滅多にない「おっちゃん」呼ばわりに苦笑いしながらも、言葉を選ぶ様に丸い顎を撫でる。
昨日依頼を受けた時は話の流れで『探偵効果』と納得したが、それを抜きで考えれば確かに疑問だ。
ただ領地経営しているだけの男爵ならともかく、メイプル男爵は西部方面軍後方支援隊総長という要職に就く人物である。軍に働きかければ護衛の数人くらいはすぐに付く筈だろう。
「そうですね。端的に言えば軍は今忙しいから、ですかね」
この回答で意味を納得した数人は「ほう」と声を上げ、把握し切れなかったマーベルだけが首を傾げた。
「どういうことにゃ?」
「タキシン王国への派兵が決まって準備にいろいろ忙しいから、煩わせないように自費で冒険者に依頼した、ってことでしょう」
ねこ耳童女の疑問に答えたのは、最近解説役をカリストに奪われつつある薄茶色の宝珠だった。
メイプル男爵からすると誰が喋ったのか判らなかったが、その解釈は正しかった様で微笑みながらも頷く。それらの様子をを見守っていた一同は、「ええ人や」と呟きながら釣られて頷くのだった。
しばらく歩いて一行は『山手地区』最奥にそびえ立つ城にたどり着いた。
大小幾つかの尖塔を擁する4階層の建築物で、円形にぐるりと高い塀が囲んでいる。外壁から内部に出入りできるのは街の方角を向いた大きな門だけで、2名の帝国軍人が門番として左右に控えていた。
この港街ボーウェンの太守であり、レギ帝国西部方面軍司令も兼任するベイカー侯爵の居城である。
「何度見ても立派やねぇ」
「まぁ、ベイカー卿と言えば、この辺り一帯に大きな領地を持つお方ですからね。帝国内でも歴史ある堅城ですよ」
門まであと少しという所で見上げて口を開ける冒険者一同に、メイプル男爵は少し誇らしげにそう語った。別に他人の威を刈って胸を張っているわけではない。自分の住む街の歴史を誇っているのだ。
「侯爵ってどれくらい偉いにゃ?」
公侯伯子男という貴族制度は日本ではあまり馴染みが無い。そのせいもあり、訊ねたマーベル以外の者も、なんとなく把握しているだけで「これ」という回答を持っていなかった。
比較的博識なカリストも誰かが解説してくれるのを待つくらいだ。
周囲の雰囲気に対し、満足そうに解説し始めたのはこれまた薄茶色の宝珠だった。
「貴族制度は我々の世界でも国に寄って様々ですから、ひとまずメリクルリングRPGの世界での、大まかな解釈を話しましょう」
そう前置かれると、一同は素直に耳を傾ける。
「日本人に馴染みやすいよう、日本史に例えましょう。まず国王や皇帝という頂点にいる支配者は、つまり征夷大将軍や天皇ですね」
まぁこれは誰もが納得で頷く。
「この支配者は基本世襲ですが、初期の王族から派生して貴族化したのが公爵です。王族の血が絶えると、ここから次代を輩出することもありますから、江戸幕府の御三家や御三卿と言った所ですね」
「知ってるにゃ。郷ひろみ・西城秀樹・野口五郎にゃ」
「それは新御三家だね。元祖御三家は橋幸夫・舟木一夫・西郷輝彦だよ」
古い話題過ぎて付いていけないアルトとモルトであった。
「アイドル御三家とか良く知ってましたね」
「にゃはは。照れるにゃ」
「いや、褒めてねーし」
「ちなみに判っているでしょうけど一応補足しますと、徳川家康が定めた尾張徳川・紀州徳川・水戸徳川が御三家で、八代吉宗が定めたのが田安徳川・一橋徳川・清水徳川の御三卿です」
これらについて詳しく知りたい方は日本史を紐解いてもらうとして、元GMはさらに続ける。
「次が侯爵ですが、これは現在の支配王族とは違う元王家です」
ここまで解説に頷いていた一同は一斉に首を傾げる。なぜ一つの国に別の血筋の王族がいるのかというところに理解が及ばなかったからだ。
「いやあくまで『元』ですよ。つまり、建国期から国土拡大期において、現在の王族に戦で負けたか、外交の末かで配下に降った者たちです。故に大きな領土と代々の臣下を持っている場合が多いです。例えるなら戦国大名や江戸時代の外様藩主ですね」
言われてやっと皆一様に納得した。江戸時代や戦国時代は日本史の中でも花形なので、それぞれにも少なからず知識があった様だ。
「続いて伯爵、子爵、男爵、騎士とありますが、ちょっと長くなるので今は割愛しましょう。まぁ男爵や騎士については以前説明しましたが」
とはいえ、廃嫡断絶お取り潰し、または召し上げ、論功行賞などで消える貴族もあれば新規に貴族となる者もいるので、上記解説が全てではないとも言っておこう。
さて、皆が納得した所で入城となる。
門番は治安維持隊から賄われているのかどちらも見た事がある顔だったので、各々は軽く挨拶して門をくぐる。顔パスなのは、当たり前だがメイプル男爵のお供だからだ。
だがまかり通るのはそこまでだった。
「では私は出仕してきますので、ここで待っててください」
メイプル男爵がそう言って、とっとと城の中へ言ってしまったからだ。
そう言うわけで、冒険者の面々は城壁と城本丸の間に広がる庭に取り残された。もっともそこにいるのは彼らだけでなく、他の出仕者の護衛らしき者たちもいたので、そう言うものなのだろうと納得して芝の上に腰を下ろした。
朝夕はもう寒い季節だが、天気の良い昼は心地良い暖かさだ。
城壁は高いが良く考えられて作られてるのか、庭と城本丸がすっかり日陰になる、などということは無く、庭で主人達を待つ者たちは、それぞれのんびりと日向ぼっこをしたり交流をしているようである。
「にゃにゃにゃにゃ」
と、どこからか猫の声が聞えて、アルトは反射的にマーベルに視線を向ける。
「アタシじゃないにゃ」
何を言いたいのか察したねこ耳童女がすぐに首を振るので、少年サムライは眉をひそめて他を見回す。だが彼女以外のケットシー族を見つけるには至らなかった。
不思議な事もあるものだ。と捜索をすぐに諦めた所で声がかかる。
「こっちでありますよ」
見れば黒い成猫に騎乗した、人形サイズの少女がいた。カリストの使い魔である黒猫のヤマトと、人形姉妹が四女であるティラミス嬢だ。
「ヤマトたちがここにいると言う事は、バーター中佐も城の中って事か」
その姿を見止めてカリストが呟くと、すかさずマーベルが真剣な面持ちで振り返る。
「男爵のおっちゃんが危ないにゃ!」
「いや、さすがに大丈夫だろ常識的に考えて」
どちらにしろ、城へ入る事を許されなかった彼らに成す術は無かった。
ちなみにどういう事かと言うと、『暗殺の黒幕がバーター中佐である』との説をマーベルがいつまでも捨てないので、彼女を宥める為にヤマト・ティラミス両名を監視に派遣したのだった。
その監視役がここにいるのだから、当のバーター中佐も城内なのだろう。彼は参謀本部長なので、さしずめ、軍首脳のミーティング中と言った所か。
まぁさすがに堅牢な城内で暴れれば袋のネズミで、瞬く間にお縄となるだろう事は明らかであるし、どちらにしろ庭で待機とされているお供にしてみれば、もう後はメイプル男爵の帰還を待つしかできることはないのである。
その本丸の3階窓から庭を見下ろす者がいた。
口髭をコールマンと呼ばれる形に細く切り揃えた壮年の男である。身体はそれなりに鍛えてあるのか程ほどに引き締まり、それでいて細すぎると言う事もなく、身長もそこそこに高い。
全体的に見て平均的な海の男の様な身体つきである。
その割には威厳を感じさせる立ち姿で、着ている背広もシックな色合いながらに仕立てが良い。おそらくこの街でも最高に近い職人の仕事だろう。
彼こそは、この街の太守にしてレギ帝国西部方面軍司令、ベイカー侯爵閣下である。
「あれがメイプルの雇った護衛か」
庭で寛ぐ冒険者達を見やり、ベイカーは口髭を軽く撫でながら呟く。同会議室にいたメイプル男爵は特に確認もせず配られたティーカップを手に頷いた。
「ええ、マクラン卿からの紹介で、なかなか腕も立つようですよ」
軍の要人とは言えメイプルは武官ではない。やる事と言えば食料や資材の調達と工作隊の運用で、どちらかと言えば文官に近い。なのでアルトたちへの評価もあまり具体的には言えないのは仕方ない。
ベイカー侯爵もその事はわかっているので、室内の他の面々に視線を移す。
会議室にいるのは侯爵を入れて6人。そのうち、メイプル男爵以外で2名がこの無言の問いに反応した。
神経質そうな中年騎士、参謀本部長バーター中佐と、岩の様に頑強そうな初老の騎士、西部方面軍騎士連隊総長ジャム大佐である。
特にジャム大佐は面白そうに髭を揺らして笑った。
「あの若いサムライとはオークション事件で肩を並べたが、なかなか見所がありそうだわい。マクラン卿と互角くらいは出来るんじゃないか?」
この言葉に、アルトたちと全く面識のない者は「おお」と小さい感嘆を上げる。
ジャム大佐と言えば西部方面軍の頂点にいる剣士である。それは位の上だけでなく、実力もまたその通りだ。
そのトップから褒められた上に、彼に継ぐ実力者と名高いマクラン卿と同程度というのだから、軍関係者としては驚かないわけが無い。
「西部の英雄、ジャム大佐が言うのですから、私にも依存はありません」
もう1人、アルトたちを少しだけながら知るバーター中佐は、平坦な口調でそう同意する。
「英雄などと。参謀本部長ともなると世辞が上手くなるな。ワシなど本物の英雄に比べればまだまだ足元にも及ばぬわ」
憮然とした表情で自らの席に深く背を預けるジャム大佐を見て、一同は複雑な表情で、頷いていいやら否定していいやらと身を硬くした。
だいたいこの世界ではレベル10を越えると真に『英雄』と呼ばれるが、ジャム大佐はまだ7レベルでしかない。
ただそれでも戦国の世に比べ圧倒的に平和となった今の治世では、数えるほどしかいない上位の実力者である。この島内で彼を越える戦士となれば、それこそ片手の指でもおつりが来る程度の人数だ。
「ま、仲良くしておけば何かの折に役にも立ちましょう。それより話さなければいかん議題はまだまだありますぞ。閣下も席にお戻り下され」
と、これは席の序列で見て第二位の位置に座る白髪混じりの紳士の言葉だ。彼は幕僚長という役職にあるブレッド伯爵。軍司令はベイカー侯爵だが、実務的な指示を軍に出すのが彼の仕事であり、実質的な西部方面軍トップと言っても過言ではない。
ちなみに日本の自衛隊において幕僚長と言えば他国の参謀総長に相当する役職だが、レギ帝国においては軍司令の補佐的な役割であり、また別途配下に設けられる参謀本部は作戦立案の為の情報収集、分析、情報工作などが主な職務である。
もっともベイカー侯爵より贅肉が多い彼もまた軍人ではなく、より実践的な作戦提案や立案は、参謀本部や騎士連隊の仕事だった。
「やれやれ仕方ない。仕事をするか」
低く渋い声で溜め息を付きながら、ベイカー侯爵はゆっくりとした歩調で自分の席へと戻る。出兵に関する編成会議の再開である。
ところで今の会話で始終無言だったのは、末席に座る実直そうな中年軍人だ。彼は西部方面軍歩兵隊総長のマレード大尉と言い、この6名中、唯一の平民だった。
レギ帝国西部方面軍は彼の率いる歩兵隊、ジャム大佐の騎士連隊、バーター中佐の独立騎士中隊、そしてメイプル男爵の後方支援隊の4隊からなる軍団だ。
さて、会議は特に波乱無く進む。
帝国軍内でも最も大きな軍団である西部方面軍だが、別段、国境を隣して緊張しあう様な国も無く、今回の派兵で多くの兵を出したからと言ってあまり困った事にはならないだろう、と皆が認識しているからだ。
最悪でも治安維持隊さえ残れば、西部方面の運営に大した支障はないのだ。
ならなぜ兵数が多いかと言えば、広大な農地からの収穫が高い為、より多くの兵を養う財力があるからだ。
またそれを率いるベイカー侯爵に対する、皇帝陛下の信任の厚さもあるだろう。
なので会議と言っても、より細かな方針や作戦指針の確認、より効率の良い方法の発案検討程度で、紛糾するほどの事でもない。
ただ、それでも話すべき事は多岐に渡るので、時間はどんどん経過するのだった。
「暇やね」
朝一で登城したメイプル男爵だったが、もう2時間は経過しただろう。その間、ただ日向でボンヤリしているだけの冒険者達だったが、ついにモルトが心情を口にした。
膝の上では黒猫がうずくまって寝息を立て、手持ちぶたさな彼女の手により優しく撫でられている。
そのモルトに守られた黒猫ヤマトに、どうチョッカイを出そうかとエノコロ草を片手に隙を狙っていたマーベルは不思議そうに首を傾げた。
「平和が一番にゃ?」
まぁ、確かにその通りなのだが、平和な事と暇な事は話が別である。平和は是非にも歓迎したいが、暇はなるべく排除したいと言うのが、そこにいるほとんどの者の意見であった。
実際、暇を持て余すより先にレッドグースなどは他の護衛者たちの元へと寄り、いつの間にか愛用の『手風琴』で演奏会などを開いているし、カリストはカリストで少し離れて瞑想している。
アルトもまた何度か『胴田貫』を抜いては、今日三度目の手入れを始めた所だった。
「マーベル、お前最近、脳内まで猫っぽくなって来たんじゃないか?」
そう言えばコイツ、半年前は今ほど「にゃーにゃー」言ってなかった筈だ、と思い出しながらアルトが溜め息を付く。言われてマーベルも思い当たった様で神妙に頷いた。
と、その時だ。
城の外壁に設えられた大門が勢いよく開いたかと思うと、続いて馬が駆け込んで来る。いや馬が単体で飛び込んできたわけではなく、慌てた表情の軍人が乗っていた。
「伝令!」
軍人は城側から迎え出た厩番に馬を任せると、そのまま叫びながら城内へと走る。どうやら何か事件が起り、それを伝えに来たようだった。
これを見てアルトたちも「暇」などと言ってはいられない雰囲気に包まれた。
「何事だ」
会議室に通された伝令を迎え、軍首脳部の面々は固唾を呑んでもたらされる連絡を待った。伝令兵の様子から、ただ事ではないのが見て取れたからだ。
はたして、息を整えた伝令兵は自分が走らされた理由を述べた。
「ロブスタ中尉が何者かに殺されました」
ある者は額に手を当て、ある者は目を見開き、起った事件に各々のやり方で遺憾の意をを表すのであった。
カリストが本当に瞑想していたか、それともヤマトの感覚に同調してモルトの膝上を堪能していたかは謎ということで。




