おまけ-第六章開始時点のキャラクタシートと「あるギルド受付嬢の苦悩」
こんにちはK島です。毎度のご愛顧ありがとうございます。
さて次回から始まる第六章に先駆け、開始時点のキャラクターシートを公開します。
このページは見なくても、物語を読む上では特に支障はありません。
邪魔臭いと思う方は飛ばして下さい。
第六章は、季節的に秋半ば辺りからの開始です。
SSの「あるギルド受付嬢の苦悩」は、だいたいこの開始付近の話です。
では以下、お楽しみ下さい。
第六章開始時キャラクタシート
*******SS「あるギルド受付嬢の苦悩」*******
秋も真っ只中から少し深まりつつある10月の中旬、我が『魔術師ギルド』に怪しい男が入会した。
私は『魔術師ギルド』ボーウェン支部で、受付を担当する者の内の1人だ。
長く勤め上げているので、最近は若い連中から「ハイミス」だ「お局様」だと影で言われている様だけど、私はまだ20代だ。と言っておこう。
いや、私のことなどどうでもいい。
『魔術師ギルド』と言うのは、名前の通り『魔術師』たちの互助会の様なもので、会費を集めて研究室や図書室などを提供している。
また『教導部』と言う養成機関もあり、ここで7年ほどみっちり学べば一人前の『魔術師』になる事ができる。
ただ『教導部』の授業料は非常に高額なので、最後まで残る者はあまりいない。
また例外的に、『冒険者』と言われるならず者の中でもまれて一人前になる者もいる。これは理論を優先するか、実践を優先するかの違いだ。
だが、冒険者の『魔術師』と言うのは少数で、さらにだいたいが一人前になるより先に危険な仕事で命を落とすか、大怪我をして引退する。
つまり一人前と言われる3レベルの『魔術師』は、それだけでエリート。
そして我が『魔術師ギルド』の会員のうち80%は2レベル以下で、15%が3レベル。残り5%が4レベル以上の超エリートだ。
この超エリートレベルに達すると『導師』や『教授』などと呼ばれ、『魔術師ギルド』で要職に就く。
さて、我がギルドに先日入って来た、怪しい『魔術師』について。
容姿などは問題ない。
背は高め、細身のエルフで、黒やグレーを基調とした服をよく着ている。爽やかな眼鏡青年である。歳はちょうど私と同年だそうだ。
ちなみにエルフは長寿で知られているが、2、30代までは人間と同じ様に成長し、そこからの老いが緩やかになるそうだ。
そんな見た目に騙されているのか、ギルド内での評判はおおむね良い。
問題はそこではない。怪しいのはこの青年の実力だ。
このエルフの眼鏡青年の、緒元魔法の実力はなんと5レベルだった。
『魔術師ギルド』に所属しない在野の『魔術師』と言うのもいないわけではない。だがその殆どは3レベルを超えることはなく、在野でそのレベルに達するような者は、会員でなくともその名が必ず轟いてくる。20代と言う若さであればなおさらだ。
若さで言えば我がギルド支部にも、10代で4レベルに到達した天才と呼ばれる者がいる。ボーウェン治安維持隊隊長、マクラン卿の妹君であるマリオン嬢だ。
ただ彼女の場合は、幼少の頃から3レベルになるまで『教導部』でみっちり学び、その後は冒険者として活躍しているので、その素性も育った過程も皆知っている。
しかしギルドにおいても超エリート扱いされるレベルのこの青年の名は、ついぞ聞いたことが無い。霞の中から出て来たと言われても信じてしまいそうなくらい、突如として現れたのだ。
そんな謎がギルド内でも噂になっている。
曰く「ギルド長が密かに育てた秘蔵っ子だ」とか、「大陸の遠い所からやって来た亡国の王子である」などが有力。
そんな中で私が支持するのは「今まで裏社会で生きて来た『魔術師』」と言う説だ。この説を推すのは残念ながら少数派だ。
裏社会と言うのは、つまり『盗賊ギルド』などが仕切っている、犯罪者どもの社会であり、当然その情報が表に出てくる事はとても稀なこと。
そんな裏社会で裏の仕事に手を染めて来た『魔術師』であれば、確かに有名にならないのも頷ける。
なぜそんな人物が突如として表に顔を出したのかと言うのはやはり謎だが、その説が本当なら何か怪しい企みが背後にあるかもしれない。
これが、私がその人物を怪しんでいる理由だ。
なのに、当ギルドの『導師』や『教授』は、彼の魔法の実力や知識見識をとても評価して、やって来るたびにチヤホヤする。
彼が冒険者で、『魔術師ギルド』に入り浸っていないのがまだ救いだ。
私は長年『魔術師ギルド』で過ごしているので、この場所には大変な思い入れがある。だから何かの陰謀でこの場所が滅茶苦茶にされるのは、到底我慢なら無い。
何か私たちの知らない魔法を使っているのか、ギルドの人々は殆どが彼に好意的で、それ以外でも無関心なだけ。
これは私がシッカリしなければならないと思うのだ。
あの爽やかな微笑みにドキドキしたり、ちょっと危険な香りがする所が素敵に見える、などと考えている場合ではない。と言うか、眼鏡をかけた、ガツガツしていないスマート男子なんて、私の好みのどストライクを持ってくる所がすでに怪しい。
いけない。私がシッカリしないと。私が取り込まれたら、このギルド支部は何かの企みの犠牲となって崩壊してしまうかもしれない。
だから、今日も『魔術師ギルド』へやって来た彼を、シッカリ監視しようと思う。
後を付回す、黄色い声を上げている貴族の子女達を押しのけてでも。




