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ぼくらのTRPG生活  作者: K島あるふ
#03_ぼくらの新生活

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32/208

02ボーウェン治安維持隊

 中央大陸で『魔術師(メイジ)』たちによる『大魔法文明』が栄えた古い時代。このアルセリア島は古エルフ族の楽園だった。

 しかし『大魔法文明』の崩壊により、それまで奴隷同然だった魔法を使わない人間たちは一斉蜂起、膨張の一途を辿り、ついにはアルセリア島へ侵略を開始する。

 人間に対抗するために、古エルフ族は結束し王国を興す。名をタキシン王国と言う。タキシン王国は時代とともに衰退し、今では島の北東地域の小国となった。

 また侵略を果たした人間は、島の南に王国を興す。名をオルク王国と言う。オルク王国は一時期、隆盛を誇ったが、いつしか砂漠の一部族に蹂躙され、レギ帝国へと取って代わった。

 アルセリア島、今は昔の物語である。




 レギ帝国領西部方面都市、港街ボーウェン。

 そこにやって来たばかりの冒険者たちを出迎えた、この中肉中背で浅黒い肌の帝国軍人は、自分で出来る限りの笑顔で対応した、つもりだった。

 それは相手を刺激しないように、圧迫しないようにするのが目的だ。

 この冒険者たちをボーウェン治安維持隊の詰め所へ『招待』する役目は、彼が治安維持隊の責任者より、直接受けた指示だった。

 平和で手柄を立てる機会があまりないこの街では、こうした細かい仕事を積み重ねるしか出世の道がない。つまりこの帝国軍人は、自分に失敗を許さぬ覚悟でこの任務に望んでいた。

 だが何がいけなかったのか、長旅に薄汚れた約4名の冒険者たちは、彼の登場に、戸惑い、焦り、そして恐れているように見て取れた。

 まずい、何とかこの場をフォローして、任務を成功に導かねばならない。

 さて、いったい何がいけなかったのだろうか。生真面目なこの帝国軍人は、素早く脳を巡らせる。

 これだろうか? 思いついたのは手にした4枚の似顔絵だ。

 サムライ風体の若い『傭兵(ファイター)』、『太陽神の一派(スメラギ)』に属する女『聖職者(クレリック)』、ねこ耳童女(ケットシー)の『精霊使い(シャーマン)』、『手風琴(アコーディオン)』を背負った酒樽紳士(ドワーフ)の『吟遊詩人(バード)』。

 これは正式な国交のない隣国である、ニューガルズ公国からもたらされた、某事件の容疑者とされる者たちの手配書だ。

 ああ、そうか、と彼は合点が行った。ここまでの思考でおよそ3秒を要した。

 彼は再び、相手を安心させるべく、表情に笑顔を湛えた。

「安心してください、冒険者さん。今回の件は『逮捕』や『連行』じゃありません。『任意同行の要請』です」

 言葉の意味を理解した者は、少しだけホッとし、それ以外の数人は眉根のシワを更に深くするのだった。


「何が違うにゃ?」

 さっきまで欠伸をかみ殺していたマーベルだったが、それ所ではないと理解したのかその両のねこ耳をピンと立てて尋ねる。隣に立ったアルトは「あー」とわかった風なフリでそっぽを向いた。

「わからないなら無理しないでいいにゃ」

 マーベルはやさしくアルトの肩を叩き、回答への期待を別の者に向ける事にする。その先は彼と違い、ハッキリと理解の度合いがわかるほど頷いていた酒樽紳士だった。

 レッドグースはマーベルの視線に気付くと、彼女がもう一度問いを発するより早く、求められる回答を口にする。

「つまり『来てくれませんか』と言うお願いですな」

「さすが酒樽兄貴は博識でありますな」

「ほなお断りしてもええの?」

 この説明を受け、『太陽神の一派(スメラギ)』は『酒神キフネ』に仕えるモルトが浅黒い肌の帝国軍人に向けて頭を傾げる。浅黒い肌の軍人氏は、冒険者たちの不安を煽らない様に注意深く頷いた。

「もちろんです。ただ、先ほども言いました通り、我々、治安維持隊は無用なトラブルを避ける為に動いております。ご理解頂けると助かります」

 だが、やっぱりこの帝国軍人の思惑は伝わらないようで、冒険者たちは引きつった笑顔を浮かべるばかりだった。

 帝国軍人氏は「面倒が起こる前に問題を片付けた方がいいですよ」と言いたかっただけなのだが、アルトたちには「こっちが下手に出てる内に付いて来いやオラ」という脅しにさえ聞こえていた。帝国軍人氏の気遣いの笑顔も、逆に怖いくらいだ。

 そのような意思のすれ違いにより、逃亡生活にすっかりくたびれた約4名の冒険者たちは、かの軍人氏におとなしく従う事にする。逆らえば今度の敵は帝国軍だ。まじめにそう思ったからだ。

「ご協力に感謝します」

 軍人氏は自らの任務の成功に、更に満面の笑みを浮かべるのだった。


 浅黒い帝国軍人に連れられてやって来た詰め所は、北門徴税所からも程近い位置にあった。それは1階建て平屋の小さく簡素なレンガ建築で、開け放たれた出入り口には、やはり別の帝国軍人が歩哨に立っている。

「小さいにゃ?」

 聖都レナスで彼らがぶち込まれた留置所の、母屋であるレナス教会警護隊本部を思い出しつつ、マーベルが目を点にする。この街はレナス同等の規模に見えたので、あまりの簡素さに呆気にとられたのだ。

「詰め所ですからな、つまり交番みたいなものでしょう」

 そんな様子に気付いたレッドグースが答え、このねこ耳童女はやっと納得したように頷いた。

「さ、こちらでしばらくお待ちください」

 先導するように歩いていた帝国軍人は、歩哨の軍人と互いに敬礼で挨拶すると、アルトたちに詰め所内へ入るよう促す。ちょっと中を覗いて見れば、そこにはがらんとした待機部屋があるだけだ。

「なんや簡単に逃げられそうやな」

「いや、勘弁してくださいモルトさん。もう揉め事を増やすのはゴメンです」

 またなにやら悪い顔で呟くモルトに、アルトは首を横に振るのだった。

 さて、アルトたちを狭い待機部屋に押し込めた浅黒い肌の帝国軍人氏は、任務の成功を報告する為、さらに奥の部屋へと向かう。向かって、すぐに踵を返し、再びアルトたちの前へと現れた。

「おい、隊長はどこ行ったんだ?」

 それはアルトたちへ向けた言葉ではなく、出入り口の歩哨へ向けたものだった。歩哨は特に勿体振るでもなく即答する。

「隊長ならさっき帰ったよ」

「え、本部に戻ったのか?」

「いや、隊長ん()の執事さんが来て、屋敷に戻った」

 浅黒い肌の軍人氏の目はしばし点となり、じきに諦めた様にため息をついた。

「またマクラン卿の悪い癖が出たか」

「まーああいう方だ。客人は屋敷に寄越してくれってさ」

 軍人氏はおどけて両手をヒラヒラと挙げ、もう一度だけ深くため息をつき、アルトたちを振り返る。

「すいませんがそういうことらしいので、冒険者さんたちは直接マクラン卿の屋敷まで行ってください」

 ここに来てようやく、アルトは自分たちの心構えと、相手方の思惑にズレがある事を認識する。てっきり、このまま拘束されてニューガルズ公国へ引き渡される、くらいの覚悟をしていたのに、この野放し同然の緩さは一体全体どうなのだ。

 それともこれは「街中にいる限りは逃がさないぜ」と言う自信の顕れなのだろうか。などとアルトは疑心暗鬼になってみる。だがこの詰め所の雰囲気は、どう見積もっても罪人に対する臨戦態勢には見えなかった。

「マクラン卿って誰にゃ?」

「『卿』と言うからには貴族ですかな」

 迷うアルトをさて置き、好奇心旺盛なマーベルが問い、追う様にレッドグースが問を付け足す。

「帝国騎士マーカス・マクラン卿です。ボーウェン治安維持隊の隊長なんですよ」

「ほな屋敷ってどこ?」

「あそこです」

 アルトたちを連れてきた軍人は素直に答え、詰め所の出入り口から街の北東側にある高台を指差した。そこは『山手地区』と呼ばれる、特に裕福層の屋敷が集まる高級住宅地であった。

 モルトの笑顔が引きつる。

 さっきはあの高級住宅街を眺めて、いいお屋敷にあるいいお酒を空想して楽しんだが、実際今すぐそこに行け等と言われると躊躇せざるを得ない。

 なぜなら、そのようなセレブ町をを歩くには、彼らは余りにも薄汚かったからだ。

 なにせ平原荒野を1ヶ月も旅して、先程この街にたどり着いたばかりである。途中にあった小川や澄んだ泉で身体を洗った事もあるが、それだけでは旅の埃はいかんともしがたい。

「あの、明日じゃあかんかな? ウチら今こんなやし」

 アルトたちすべての面々はどれも埃まみれだったが、純白の法衣を着こむモルトの汚れは特に目立った。

「あー、そうか」

 その薄汚れた面々を見渡し、思惑を正確に読み取った軍人氏は自分の顎に手を当てて思案する。ここで「ではまた明日」などというと、任務完了が先延ばしされて気持ち悪い。具体的には晩酌が不味くなる。

 だが結局、貴族も住まうような『山手地区』に、旅に汚れた冒険者を寄越す訳にはいかないと結論し、彼は仕方なく頷いた。

「では明日。ここじゃなくて本部の方に行ってください。隊長は普段なら向こうにいますから。場所は…宿で聞いてもらえばわかるでしょう」

 こうしてこの日はあっさり放免となった。


 北門から南へ延びる大通りに戻り、しばらく進むと『冒険者の店』は案外簡単に見つかった。

 冒険者の店とは、その名の通り冒険者の為の店である。

 それは宿屋であり、食事処であり、冒険用の道具屋でもあり、小規模ながら銀貨や荷物の預かりまでこなす、大変便利な場所だ。

 冒険者、などと呼ぶと聞こえは良いが、遺跡の盗掘のかたわら、金銭でいろいろな仕事も請け負うただのアウトローである。

 彼らにとって便利である上に、街のアウトローを隔離すると言う、まさに一石二鳥の良く考えられたシステムだ。

 ただ冒険者は大変な危険を伴う生き様ゆえ、この世界ではそれほど人数もいない筈なのだが、はたしてその数少ない冒険者を相手にする『冒険者の店』は商売が成り立つのだろうか。

 非常に興味深い点ではあるが、「ゲームだから」と言う事で成り立ってしまうので仕方がない。今更ながらにこの世界は酷く歪んでいる。

 さて、アルトたちが見つけた店は『金糸雀(カナリア)亭』と言った。立地的に非常に恵まれた路面店と言えよう。お陰で出入口の扉も明るく、入りやすい。

「ささ、アル君はよ入ろ」

 早く荷物を置いてサッパリしたいモルトが、いつもの隊列の癖で先頭を歩いていたアルトを押し、一行は明るい店構えの内側へと、扉をくぐった。

 店内も程よく採光されており、とても明るかった。

 まだ昼間だからかガランとしており、客は長い黒髪の、戦士風な女性が一人だけで、奥のカウンターでは、デップリとしたおばさん店主(マスター)が頬杖をついていた。

 唯一の客は戦士風、と言ったがその出で立ちはというと、全身を覆う鈍色の『板金鎧(プレートメイル)』、傍らには巨大な逆三角の『凧型の盾(カイトシールド)』、そして手慰みに磨き上げている片手持ちの『両刃の長剣(ロングソード)』である。その装備から『警護官(ガード)』であることが推測できるだろう。ソロの冒険者だろうか。

 それはともかく、その太ましい店主(マスター)はアルトたちの入店に気づくと、ニンマリと笑って両手を広げる。

「ようこそ暗殺犯ども。ラ・ガインの首魁(田舎者)の刺し心地はどうだった?」

 一同、すぐさま回頭した。


「わっはっは、冗談だよ冗談。この国にいる情報通は、真犯人がアンタらじゃないって大体わかってるのさ」

 結局引き止められカウンターに着くと、でっぷりとした体格通りの豪快な笑いを発しながら、店主(マスター)はアルトたちの肩を順に叩いた。

「確かにそれは濡れ衣です。ですがなぜわかるのですかな?」

 冗談のお詫びに、と出された中ジョッキの麦芽酒を半分飲み干し、髭周りを泡だらけにしたレッドグースが問う。ニューガルズ公国にいた時は、誰もが彼らの濡れ衣を疑わず追い回したものだが、国が変わればこうも違うものか。

「もう誰が黒幕かわかりきってるからね。なら、その実行犯もおのずと決まるのさ」

 これまたアルトたちには全く心当りがない話だった。しかし彼女に言わせれば、それは情報通の常識だという。

「なんだ、アンタらわからないのかい。しょうがない、今日はサービスで教えてやるよ。次からはちゃんと情報料貰うからね」

 呆れたように腰に手を当てた店主(マスター)が言うと、彼ら以外で唯一の客だった『警護官(ガード)』の女も、そんな様子にくすりと笑った。

 モノ知らずすぎて少々恥ずかしかったが、本当に知らないものは仕方がない。この際は素直に教えてもらおう。と、4人は顔を見合わせて頷きあった。

 ちなみにティラミスは現在、マーベルの鞄内に設えられた簡易寝所にて、薄茶色の宝珠(オーブ)を枕にお昼寝中だ。

 聞く準備が出来たと判断したようで、店主(マスター)は勿体振るように腕を組んで語り始める。

「暗殺されたラ・ガイン教会の法王ランドン老師。さて彼が死んで得したのは誰か。それは教会ナンバー2だった大司教キャンベルさ。今頃、新法王に就任してウハウハだね」

 なるほど、とアルトは頷くが、だが少しの引っ掛かりもあった。

「そりゃ確かにそうかも知れないけど。でもその大司教が黒幕って確証はあるのか?」

 得した者が真犯人。単純な探偵漫画でも誠しやかに言われる理屈だが、果たしてそれだけで断じていいものだろうか。それがアルトの喉に引っかかった小骨だった。

 しかしその問いは、更に店主(マスター)から笑われる結果となる。

「アンタ本当に何も知らないんだ。キャンベルって奴は聖職者のくせに、もう野心バリバリの男でね。原点回帰派のボスがランドンなら、教会腐敗派のボスはキャンベルってくらいなもんさ」

 つまり、元から真っ黒な男だったらしい。その真っ黒が教会トップとは、いかに教会が腐敗しているかが窺い知れると言うものだ。

「にゃぁ、実行犯は誰にゃ? さっき『おのずと分かる』とか言ってたにゃ?」

 ひとまず黒幕に納得し、続いて合いの手の様に疑問を投げかける。店主(マスター)はよく聞いてくれた、とばかりにニヤリと笑う。

「キャンベルの配下にはね、以前から暗殺専門の怪人がいるのさ」

 まさか、とモルトは眉をしかめた。レッドグースもその様子に気づき、自慢のカストロ髭をなでつける。

「カリストのにーちゃんや、ないやろーね」

「可能性はありますな。ただカリスト殿ではなく、それを操るあの『魔術師(メイジ)』でしょうがの」

 カリストは、アルトたちがこのメリクルリングRPGの世界に迷い込んだ時に、一緒にやってきた仲間である。

 ただ合流を果たす前に、身体乗っ取り(ボディキャプチャー)系悪の魔法使いに囚われ、そして乗っ取られた。

 ちなみにカリストを乗っ取る前にその『魔術師(メイジ)』が操っていたのが、アルパと言う街の司祭ウッドペック老師だった。彼の殺害もアルトたちに着せられた濡れ衣の一枚だ。

「怪人、燃えるにゃ」

 嫌な考えに陥った大人の男女をさておき、8才児の身体を持つねこ耳童女は、密かにガッツポーズをキメた。どうやら特撮ヒーローが好きらしく、怪人という単語に反応したようだ。

 そしてアルトはなるほど、と再び頷いた。だから治安維持隊でも犯罪者扱いを受けなかったのか。

「ま、ニューガルズ(田舎)のことはどうでもいいさね。そんなわけだから改めて言わせてもらうよ。ようこそボーウェンへ。ようこそ『金糸雀(カナリア)亭』へ」

 店主(マスター)はそう言って片目を閉じた。


「1泊15銀貨(メリクル)。1ヶ月連泊なら先払いで400銀貨(メリクル)にオマケするよ。部屋は男女別2部屋でいいかい」

 奢りのウエルカムドリンクを飲み干したら、そこから宿泊に向けての交渉開始だ。

 と言っても値段はすでに固定のようで交渉の余地はない。せいぜい、単品支払いかセット支払いかの選択があるだけだった。

「いや、オレ、どっちにしろセットは無理。しかも早々に仕事見つけないと3日しか泊まれねーわ」

「ウチはせいぜい10日やね」

「アタシも似たようなもんにゃ」

「なんだい、結構な使い手のくせに貧乏だね」

 そう言われても仕方がない。

 確かにレベルはすでに中堅冒険者の部類。特にアルトなどは5レベルの『傭兵(ファイター)』だ。これだけの手練なら、騎士の叙勲も夢ではない。

 だが、これまで逃亡生活ばかりで銀貨を稼ぐ機会がことごとく無かったのだ。最も金持ちのレッドグースでさえ、2ヶ月強の宿賃しかない。

 もっとも彼の場合は、演奏で日々の糧を得る事ができるという強みがあるのだが。

「食事は別だからね」

 店主(マスター)の無情な宣告に、一同は涙ながらに宿泊計算から日数を減らした。

 ちなみにこの世界の銀貨1枚は日本円にして約100円と考える事ができる。すなわち『金糸雀(カナリア)亭』は1泊1500円。しかも雑魚寝の大部屋ではない。普通に考えても格安である。「ゲームだから」と言って、これで本当に店主(おばちゃん)が食べていけるのか心配だ。

 さて、その後は軽くセルフ食べ放題気味の食事で飢えた腹と心を満たし、入浴、そして買い物へ出かけた。

 さすがに『金糸雀(カナリア)亭』には内風呂などという高級な存在はなかったが、幸いな事に歩いてすぐの場所に共同浴場があった。

 もちろん有料なので、宿泊計算からはまた日数が減った。

 また『金糸雀(カナリア)亭』の所在が目抜き通りなので、すぐ近隣で様々な店を見つけることが出来た。

 マーベルやモルトは薄汚れた衣服の着替えを買い求め、アルトはよそ行き用に、『鎖帷子(チェインメイル)』の上からもスッポリ着込めるサーコートを、レッドグースも新しい外套を買い求めた。

 結局みな、レッドグースから借金することにした。早く仕事を見つけないと、また低賃金でレッドグースのステージスタッフかバックダンサーだ。


 そして明くる日、食事と風呂と安眠ですっかりリフレッシュした彼らは、のんびりと朝食を摂った後、ツヤツヤの笑顔でボーウェン治安維持隊本部へと向かった。

 治安維持隊本部はちょうど街の中央付近にある、3階建てのビルだ。

「おっはよーさーん。アルト様ご一行やねんけど、隊長はんおります?」

「え、何故オレの名なのか。酔ってます?」

「え、アル君リーダーやし。あと酔ってまふ」

 いつの間にリーダーになったのか全く以って不明だったが、アルトも悪い気はしなかったのでそれ以上は追求しなかった。彼以外からすると、アルトは全く以て都合いいからこそのリーダーだった。

 それはさておき、アルトたちを出迎えた歩哨番のおじさんは、肩をすくめて苦笑い気味に答える。

「ああ、隊長ね。今日休みだから。アンタ達が来たら、直接屋敷に来てくれってさ」

 一同、「フラグが立たないと話が進まない」系のシナリオじゃないかと、真面目に疑ったという。

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