とある女子高生の寄り道
根古屋凛子は女子高生である。
戸籍上の年齢なら2年生になるはずだが、実は少し前にちょっと1年ほど行方不明になったりしたので、1年生をコンティニューしている最中だ。
放課後、凛子は学校の友達と別れた後、すこし足を延ばしてフラフラと隣の市までやってきた。
彼女の生活において隣の市は全く行動範囲から外れていたが、それでも「一度は見ておくべきだろう」と思ったのだ。
駅からしばらく歩くとすぐにいろんなお店は見なくなり、住宅街へと入る。
凛子は気にせずズンズン進む。
そして、ある一つの、どこにでもありそうな一軒家で立ち止まった。
表札には「鈴木」と書いてあった。
「ここにゃ……おっと、癖になっちゃった」
凛子はつぶやき、その住宅を見上げる。
築年数はおそらく15年程度の2階建てだ。
家族4人くらいで暮らすにはちょうど良いだろう。
そうやって少しだけ眺めていると、住宅のドアから慌ただしく少女が飛び出して来た。
「あの馬鹿アニキがどっか行っちゃったせいで。なんで私が。もう、もうもう!」
少女はそうブツクサと呟きながら、急ぎ凛子が来た道をたどるように走っていった。
つまりそっちは駅があり、商店街がある。
少女は、凛子と共に行方不明になって、未だ行方不明のままの少年に幾分か似ていた。
「にゃぁ、にゃぁにゃぁ」
凛子は意味もなくそう呟き、踵を返して少女の行った道を追う。
いや追いかけたわけではない。
ただ、自分も帰るだけだ。
「アっくんたち、元気でやってるかにゃぁ」
凛子は茜色に染まっていく空を眺めながらつぶいた。




