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ぼくらのTRPG生活  作者: K島あるふ
#10_ぼくらのダンジョン生活(最終章)

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174/208

18反攻作戦

 最終章 ここまでのあらすじ


 真なる創造主にして氷原の魔狼ヴァナルガンドは、この世界を自らの糧とする為に創りたもうた。

 だが、彼を追い異世界から来たウォーデン老とその弟子ハリエットにより窮地に立たされたヴァナルガンドは、彼の忠実なる(しもべ)である人狼ギャリソンによって造られた迷宮『グレイプニル』へと逃げ込む。

 そしてヴァナルガンドとの戦いで深い傷を負ったウォーデン老は、迷宮の攻略をアルト隊に託した。

 いくつもの敵や罠を破り、アルト隊は第5階層へとたどり着き、またウォーデン老は新たな迷宮探索の手を求め出発し、すでに解散した冒険者(パーティ)放蕩者たち(プロディカラ)』をスカウトする事に成功した。

 ただ、第5階層の攻略を開始したアルト隊だったが、スタート地点で発生した『ミイラ男(レッサーマミー)』の軍団に押しつぶされ全滅したのであった。

 迷宮「グレイプニル」。

 この中では外とは少し違うルールがある。

 それは「この迷宮で死した者は、迷宮の門前にて復活する」ということだ。

 その超常的な現象の代償はと言えば、少しばかりの「記憶」である。

 異世界から来た者たちは、その異世界における記憶の一部を。

 純粋なるこの世界の者は、過去の大切な記憶の一部を。

 また、復活後の門前で迷宮の創造者の幽霊と会った記憶を。


 ともあれ、第5階層にて全滅したアルトたちは、全員揃って門前へと復活を果たし、これまでの例の如く、この迷宮(グレイプニル)の創造者であるギャリソンの幽霊に出迎えられた。

「くっくっく、全滅とは派手でいいですなぁ。ねぇ、今、どんな気持ち?」

 ギャリソンは、まるで若者のような嘲りを込めた笑いをアルトたちに浴びせる。

 その姿といえばまるで初老の紳士といった風体のくせに、である。

 そんな言葉にまんまと煽られたアルトは、当然カッとなって立ち上がり、そして何か言い返すために頭を巡らせた。

 ただ、どうもいい具合の返し言葉が浮かばない。

 そも、彼は口喧嘩などあまり強くないのだ。

 代わりと言っては何だが、そんなアルトの肩を押し止めるように手をかけた黒衣の魔導士カリストが眼鏡をクイと上げて口を開いた。

「ギャリソンさん、あなた、アレでしょ? 誰も知らないような古いネタ引っ張ってくれば、パクリがばれないと思っているんでしょう?」

 当然、迷宮デザインの話である。

「くっ」

 ついさっきまでニヤけていたギャリソンが、これには苦々しい表情になった。

 どうやら図星だったようだ。

「ふん、ネタが分かったからと言って、攻略できねば意味がない。せいぜい頑張ることだな」

 しばし睨み合い、最後にはギャリソンがそう言い捨てて虚空へと掻き消え、ここで、復活した各人の『代償の記憶』が奪われた。

 ただ、ギャリソンの幽霊との邂逅の記憶すら奪われているので、この事に気づく者はいなかった。

 さて、アルトなどはすでに数回死んでいるので慣れたものだ。

 未だ戸惑う他のメンバーを振り返ると、小さく一息ついてから声をかけた。

「今日の攻略も終わっちまったことだし、帰ろうぜ」

 各々、少しだけ黙考し、状況に自分なりの折り合いをつけてから、彼の言葉に従って穴グラから這い出る。

 時間はまだ真昼間であり、少しだけ暖かくなった風が彼らの頬を撫でた。



「あれま、お早いお帰りダネ」

 拠点に使っている白い建物へと戻ると、いつも通り眼鏡の錬金少女ハリエットが一同を出迎えた。

 その表情はいつも通りの営業スマイルだ。

「全滅したんだよ。言わせないでくれ恥ずかしいから」

 戦乙女然とした女戦士アスカが憮然とした表情で答え、同意するように金髪の魔法少女マリオンが肩をすくめる。

「ま、そういう訳で今日はこの後お休みね」

 『お休み』などというウキウキするような言葉面とは裏腹に、一同は憂鬱そうに顔を背けてため息をついた。

「ふむ、その人数で全滅か。なかなか一筋縄ではいかないようだな」

 と、そこに年若い美声の割に固い言葉が聞こえた。

 見れば、集会場としても利用している食堂広間の奥の席にいくつかの人影があった。

 一人は彼らに迷宮踏破を依頼したスポンサーであるウォーデン老だ。

 そしてかの老人の周りに4人の冒険者風体がいる。

 白磁のような肌の少年魔導士にしてタキシン王国新国王の参謀を務めるカイン。

 『両手持ち大剣(ツーハンドソード)』を傍らに立てかけた黒髪の少年剣士にしてニューガルズ公国王の甥にあたる公爵家令息ドリー。

 亜麻色の髪の優し気な『警護官(ガード)』にして『ラ・ガイン教会』新法王猊下の側近アッシュ。

 この3人はアルトたちもすでに知るところである『放蕩者たち(プロディカラ)』の面々だ。

 さらにもう一人、アルト隊が互いに知る者でありながら、敵であった小柄な黒装束の少女がいた。

 かつてアルト隊が斬った偽法王キャンベルの忠実なる手勢であった、シノビ少女ヒビキである。

「あんた、なんでここにおるん?」

「またやるにゃ?」

 白法衣の乙女神官モルトが怪訝そうに首を傾げれば、アルト隊いち喧嘩っ早いと噂のねこ耳童女マーベルが、小さなコブシを握ってファイティングポーズを取った。

 (くう)に繰り出すワンツーパンチが意外と様になっている。

「ちっ」

 シノビ少女ヒビキは苦々しい顔で舌打ちを鳴らすと、両手で持っていた紅茶のカップをテーブルに置いた。

「金が必要なんだ。お前らと顔を合わすのは嫌だったが、仕方なく雇われてやった」

 少女らしい高い声を精一杯低くするように言って視線を逸らす。

 そんな言葉を補足するように、黒髪の剣士ドリー能天気そうにが口をはさんだ。

「彼女が育った孤児院がね、今ちょっと経営難なんだってさ。なかなかいい()でしょ?」

「そこまで言わなくていい!」

 ドスと鈍い音がしたかと思うと、叫んだヒビキの小さなコブシがドリーの横腹を鋭く突いていた。

 ドリーは弱々しくなった笑みを浮かべながらテーブルに突っ伏した。

 ちなみに、彼女のいた孤児院の出資者は、成敗された偽法王キャンベルであった。

 彼は自分の忠実な手ごまを手に入れるために孤児を養っていたのだ。

 そんな経緯を『放蕩者たち(プロディカラ)』の面々も承知していたが、特に態々口に出すことはしなかった。

「さて、各々、旧交を温め合ったところで、そろそろ迷宮攻略の話でもしよう」

 しばし、やいのやいのと「言葉のドッチボール」が弾み、一区切りしたところでしかめ面の美少年魔導士カインが盛大にため息をつき切り出した。

 一同はそれぞれ口をつぐみ、静かに席について配膳された紅茶に口をつけた。



 アスカ隊こと『シュテルネンハオフェン』とドリー隊こと『放蕩者たち(プロディカラ)withヒビキ』は初顔合わせでもあったので、ひとまず自己紹介をすることになった。

 一通り名乗りや職業(クラス)を互いに言い終え、「さて、会議を」というところで、亜麻色の髪の教会剣士アッシュが、ふと、声を上げた。

「あ、そういえば、アルトさんの(パーティ)には、名前ないんですか?」

 言われ、アルト隊の面々は互いに気まずそうに視線を交わす。

「無い訳ではないんですがな。まぁ、ワタクシどもが自分で付けたわけじゃないのですが」

 乾いた笑いとともに、ドワーフの『音楽家(ミュージシャン)』レッドグースが言い難そうにのたまう。

「たしか『金糸雀(カナリア)亭』の店主(マスター)は『逃亡者(バグアウター)』と呼んでいた」

 誰もが口を噤む中、アスカ隊の『精霊使い(シャーマン)』、銀の髪の無表情少女が言った。

 言ってしまった。

 アルト隊の面々は苦い顔で目を逸らした。

 そして問うたアッシュもまた、苦い顔でやはり目を逸らした。

「うん、なんかゴメンね?」

「まぁ、元を正せばキャンベルのせいだし」

 あんたのせいじゃない、というつもりで出たアルトの言葉だったが、結局それはキャンベルなどという男の台頭を許した『ラ・ガイン教会』の責任だ、と言うようなもので、ますます気まずくなったと言う。


 さて、そんな閑話を挟んで会議は始まった。

 まず迷宮グレイプニルの第4階層までの様子と、第5階層で全滅した下りがカリストから説明される。

 付け加えて、第5階層でアルト隊・アスカ隊の合同(パーティ)を退けた『レッサーマミー』の大群についての所見を述べる。

「僕が思うに、アレは『無限湧き』なんじゃないかな」

「あー、無限かー」

「それにゃ」

 カリストの言葉にアルトとマーベルが揃ってうなずく。

 見れば2人だけじゃなく、アルト隊のほかのメンバーと、さらにアスカも思い当たったように「あー」と力なくつぶやいていた。

「『無限湧き』とは、なんだ?」

 ピンと来なかったは当然現地民たちであり、その代表として白磁のカインが怪訝そうに訊ねる。

 これにはレッドグースが自慢のカストロ髭を撫でつつ答えた。

「言葉の通り無限に敵が湧いて出ることですが、場合によっては場所を移動したり、敵の出現を止める仕掛けがあったりなかったりしますな。アクションRPGやSTGによく見られますぞ」

「後半は意味が分からないが、なんとなく解った。しかし、そんなことがありえるのか?」

 説明を聞き、ドリー隊の面々がさらに眉を寄せ、カインは渋そうな表情で首を傾げた。

 魔法のある世界で物理法則などを言い出すのも野暮ではあるが、それでも魔法には魔法なりの理屈があり、無から何かが生み出されるわけではない。

 つまりこの世界にもこの世界なりの「質量保存の法則」の様なものがあるのだ。

 だが止めなければ無限に怪物(モンスター)が出てくるなど、常軌を逸しているとしか言いようがない。

 いったい、そのエネルギーや素はどこから出てくるのか。

 そういうことをカインは言ったのだ。

「ちゅーてもなぁ、どうやらゲームどマニアはんがデザインしとるらしいし? 無いとも言えんわなぁ」

 モルトが手慰みに自分の帽子の形を直しながら言う。

 これには日本組のすべてが肯定するように頷いた。

「そうか…では対策は?」

 納得できない、と言った表情でカインは先を促した。

 現象として事実そこに発生しているなら、裏に何かの仕掛けや理論があるに違いないとは思ったが、今は迷宮攻略が大事であり、理を解き明かす時ではない。

 非常に興味深く、断腸の思いではあったが、カインは好奇心を抑え込んだ。

「対策か」

 復唱し、カリストは自分が過去プレイした様々なゲームを思い浮かべる。

「場所を変えればいいなら強引に突破するしかないかな」

「あの部屋には湧きを止めるような仕掛けも無さそうでしたしな。結局は無理やり押し通るしか、ありませんなぁ」

 続けてレッドグースも賛同する。

 が、聞いていたカインがその言を真っ向から否定した。

「いや、聞いた状況から判断するに、それは無理だ」

 あまりにハッキリとした断言に、カリストもレッドグースも困惑気味に首を傾げた。

「無理かな?」

 確かに難しいとは思えた。

 が、ここにはアルト隊、アスカ隊に加え、ドリー隊も加わった。

 この3隊合同の(パーティ)なら、やりようはあるのではないだろうか。

 そう思ったからこその困惑だった。

 そんな2人の様子に眉をしかめ、カインはため息をつく。

「あんた、もう少し頭が回ると思っていたんだが、見込み違いだったようだな」

 そう前置き言葉を続ける。

「いいか? 2列以上の横隊を組んでいる相手の後方へ押し通るなんて不可能なんだよ。対象を大きく迂回するならまだしもな」

 カインの強弁にカリストの困惑も深まる。

 ただレッドグースは少し引っかかることがあったようで、顎に指を這わせてブツブツと思案を始めた。

 ただ、その回答が出る前に、彼らがGMたる薄茶色の宝珠(オーブ)が、マーベルのベルトポーチからカインの言葉を解るように翻訳してくれた。

「皆さん思い出してください。メリクルリングRPGでは、接敵状態で相手の横隊の間をすり抜けることは、()()()()出来ません」

「あ!」

 ここに来てやっとカリストもピンときた。

 彼らのやり取りを黙って聞いていたアルトやマーベルなどは、さも「初めから解っていましたとも」と大きくうなずいていた。

 つまりゲームシステム上の問題なのだ。

 これを将棋盤のような升目、またはヘックス盤でもいいので思い浮かべてほしい。

 この盤上で隙間なく横一列に並んでいた場合、すり抜ける隙間など存在しないのだ。

 ただメリクルリングRPGには「ノックバック攻撃」という特殊攻撃も存在する。

 これは攻撃と同時に相手を数マス下がらせる攻撃なので、相手が横一列なら押し通ることも可能なのだ。

 だが、カインも聞いていた通り、今回の相手は無尽蔵に列をなす『レッサーマミー』である。

 後退させたくても、後退できるマスに別の個体が詰まっているのだ。

「そういうことか」

 カリストは憎々しげに呟き、ドシリと背もたれに身を任せて爪を噛む。

 メリクルリングRPGのルールを尊守した上で、まったく別のゲームのギミックを解かなければならない。

 第3階層ではこれが功を奏したが、第5階層では足を引っ張る結果になっている。

 さて、どうしたものか。

 会議はその後、夕飯の時間まで続けられた。



 そして3月14日。

 一行は揃って第5階層へと向かった。

 先日よりもさらに戦力強化された一行だが、ここまで降るための罠やギミックを解くのに時間は大して圧縮されてはいない。

 なぜなら、考える頭は増えても作業できるのは所詮は一人だからだ。

 さらに言えばギミックや謎解き(リドル)についてはすでに解答を得ているので、今更頭が増えても変わらないのだ。

 それでも新階層の攻略には時間が欲しいので、なるべく早朝から準備して、なんとか午前のうちには第5階層スタートの小屋にたどり着いた。

「それぞれ、準備はいいな?」

 ワンルームの小屋に人間サイズが12人もいればさすがに狭いので、とっとと出てしまいたい、と、カインは不快そうに顔をしかめてそう言った。

 聞いた面々も異論はなく、剣を抜く者は抜き、杖や道具を準備する者は身構える。

 そしていつも通り、最も防御力に優れた装備を持つ『警護官(ガード)』のアスカが『凧型の盾(カイトシールド)』に半身以上を隠しながら、小屋の扉を開けて飛び出した。

 後方に続くのは『傭兵(ファイター)』のアルト、ドリー、『警護官(ガード)』のアッシュだ。

 モルトも『警護官(ガード)』ではあるが、『聖職者(クレリック)』としてのレベルの方が高いので、回復役に専念するため後方と決まっている。

 ともかく飛び出した4人が、上から見るとちょうど『へ』の字のような隊列を組み、その陰に隠れるように後衛たちが着いた。

 小屋も使い、これで何とか後衛を囲む算段だった。

 先にも述べたが人間サイズが総勢12人。

 これに対し前衛を務めることができる人数が4人というのはいかにも少ない。

 それでも相手が同数前後であれば問題はないのだろうが、今回の怪物(モンスター)は無限湧きらしいので、とにかく倒すより守ることを主眼とした陣形となった。

 さて、彼らがそうして陣を組み上げたところで、昨日と同じように前方の通路、そして左右の通路から敵影が現れる。

「ん?」

「…聞いていたのと、様子が違いますね」

 最初にそれを視界へとらえた前衛たちが呟く。

 昨日現れたのは『ミイラ男(レッサーマミー)』の軍団だったのだが、今回現れたのは人間サイズの二足歩行爬虫類。

 例えるなら小型のティラノサウルスの様な風体だ。

 もちろん、それが例に違わず通路からワラワラとまろび出てくる。

「GM、『ズールジー(動物学)』を使う」

「承認します」

 『学者』クラスを持つのは、今回でカリスト、マリオン、カインの3人となった。

 その3人がそれぞれ怪物(モンスター)鑑定の為のスキルで敵を見る。

 そしてそれぞれの知識ロールの結果が脳に流れた。

「確定名『ペディサウルス』。レベルこそ昨日と同じ2だけど、防御力が高い。数が多いから厄介だ」

「でも病毒がない分、回復魔法は『キュアライズ』に集中できそうね」

「ふむ、攻撃力は左程でもないようだな。今回のミッションには好都合か」

 最後にカインが呟いた「今回のミッション」とは、大半のメンバーで守りを固めて敵をひきつけつつ、一部が迂回して、通路の先で無限湧きを止める方法を探ることだ。

「ともかく、まずは第一段階いくぞ。『ワーニングロア』!」

 最先頭に立った戦乙女アスカが吼えた。

 その声が小屋を含むこの広場に木霊する。

 この咆哮を聞き、8匹の『ペディサウルス』がアスカを睨みつけ、そして短い脚で距離を詰め始めた。

 『ワーニングロア』は『警護官(ガード)』のスキルだ。

 その不思議な力をはらむ叫びを聞いた敵は、敵愾心を使用者に向けるようになる。

 いわるゆる挑発(タウント)スキルというわけだ。

 そしてこの挑発(タウント)に掛かった8匹に引きずられるように、他の『ペディサウルス』もまた前衛たちに向かって殺到し始めた。

「よっしゃ来い。『木の葉打ち』だ」

「承認します」

 アルトが気合とともに寄ってきたところで、『蛍丸』を振るう。

 淡い光の軌道と刀身に纏う青い稲妻が1匹の『ペディサウルス』をとらえ、そして『麻痺(パラライズ)』させた。

 『木の葉打ち』は『傭兵(ファイター)』のうち『サムライ』が身に着ける初期のスキルで、「木の葉を打つ様に、正確に小さな急所を打ち据えることで対象を『マヒ状態』にするスキル」なのだが、この青い稲妻のエフェクトを見る限り、どうも電撃によるマヒにしか思えないのがミソである。

 ともかく、そうして前衛たちは敏捷順に寄ってきた『ペディサウルス』に一撃入れて気を引く。

 後衛たちは攻撃魔法より補助魔法に重点を置く。

 前後衛ともに持久戦の構えでMP(マナポイント)を節約する方向だ。


 そして怪物(モンスター)軍団の第一波が途切れるころを見計らって、迂回部隊が動き出す。

「マーベル、行きますにゃ」

「ふん、俺に任せろ」

 ねこ耳童女マーベルが、白磁のカインが、『空飛ぶ庭箒』1号2号に跨ってそれぞれ飛び出す。

 この階層は石壁で仕切られるタイプではあるが、天井はなく紫色のまがまがしい空が見えている状態だ。

 よって空さえ飛べれば敵も壁も越えて行けるという作戦である。

 ちなみにカインも高レベル『魔術師(メイジ)』なので、『飛行魔法(パリオート)』は使える。

 が、まぁせっかくの飛行アイテムなのでMP(マナポイント)節約だ。

 そして、続いて別の方法で迂回するメンバーが声を上げる。

「『シャドウダイブ』」

 黒装束のシノビ少女ヒビキだ。

 彼女は「忍法」と揶揄されるスキルで自らの影へと沈んでゆく。

「それではワタクシも。『ハイディング(潜伏)』」

「承認します」

 そして鈍重『盗賊(スカウト)』レッドグースが使い慣れたスキルで虚空へと掻き消えた。

 先日の全滅を経た彼ら探索隊の、反攻の始まりになることを祈りつつ、残された面々は彼らを見送った。

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