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ぼくらのTRPG生活  作者: K島あるふ
#08_僕らの潜入生活
127/208

14進撃の巨王

前回までのあらすじ

アルト隊が目指す、謎の『リルガ王国』の情報と引き換えに、タキシン王国王太子アムロドから命じられた任務は、敵である王弟軍へ援軍派遣を画策している、ニューガルズ公国の後方かく乱だった。

ニューガルズ公国は今、行方不明となった公国王オットールに代わり、『ラ・ガイン教会』法王キャンベルによって実権を握られていた。

そんなニューガルズ公国へ潜入したアルト隊は、派遣軍の兵糧調達を失敗に追い込み『後方かく乱』の任を果たした。

また同時期に潜入した王太子側近の冒険者『放蕩者たち(プロディカラ)』の活躍で、行方不明であった公国王オットールは公国北部より挙兵。首都ニューガルズ市へ進軍を開始した。

季節は冬。いよいよ帰還王による公国奪還戦が始まろうとしていた。

 ニューガルズ公国首都近郊にある林、その中央付近にある広場にて、アルト隊の面々はニューガルズ公国『帰還王』オットールに謁見していた。

 アルトたちが公国宰相キャンベルからの追手である『首都防衛連隊』下のノイマン中隊を降し、小麦行商人たちを各地へ送り出してから5日が経過している。

 その間は黒魔導士カリストの使い魔・黒猫のヤマトを利用し、『帰還王軍』との間に連絡線構築に成功、それゆえの速やかなる合流だ。

 現在、北方フルート公爵領兵を基幹とした『帰還王軍』は、林内で分散キャンプ中である。

 この後、1日の休養と再編成を経て、首都へ攻め上がる予定だった。

 いよいよ『ラ・ガイン教会』法王と公国宰相を僭称し、現在、公国を我が物顔で仕切っている逆徒キャンベルを討伐するのだ、と、『帰還王軍』の士気は高い。

 そんな中での謁見である。行軍中につき、豪華な謁見の広間という訳にはいかず、せいぜい広さだけは確保した粗末な天幕での事だ。

 天幕の上座たる奥に質素な床几を開いて座すのは、優し気な面差しながらも侵しが難い無感動な雰囲気を纏う中年。彼こそが『眠れる獅子(ドルミーレ・レオ)』と称される、ニューガルズ公国王オットールだ。

 またその傍らに従卒の様に立つのは、黒髪の少年剣士ドリーであった。

 ドリーは冒険者なれど、そもそもが公国北方のフルート公爵が継子であり、またタキシン王国王太子アムロドとも知己がある。

 政治的にはかなり有力な立場と言えるだろうし、この配置は必然だ。

 彼らニューガルズ公国勢の御前で片膝をつき頭を下げている1隊は、ご存知アルト隊の面々である。

「陛下、この者たちは我々同様に、タキシン王国王太子アムロド殿下からの命を受けて公国入りした冒険者です」

「うむ、大儀である。面を上げよ」

 黒髪のドリーが無遠慮にそう紹介すると、オットール陛下もまた特に気にした風もなくうなずいた。

 対するアルト隊の面々は、「いいのかな?」という僅かな困惑を含みつつ、恐る恐る顔を上げて文字通り公国王オットールと対面を果たした。

「む? おぬしら、どこかで見たな」

 と、思いがけず公国王オットールの口から疑問が漏れた。彼は首をかしげしばし思案する。

 たまったものではない、という心境なのはアルトを筆頭とした3人だ。

 すなわち、サムライ少年アルト、白い法衣のモルト、ねこ耳童女マーベルである。

「ああ、思い出した。以前、おぬしらの面相描き付きの手配書が『ラ・ガイン教会』からが回っておったな。ウッドペック司祭と前法王ランドン師の殺害の犯人であったか」

「へ、陛下! 濡れ衣です。オレは悪くない」

 この言に慌てたアルトは思わずと言った態で立ち上がった。立ち上がり、つい腰の『無銘の打刀』を左手で探ってしまった。

 探ってから、アルトもさすがに「マズった」と後悔した。

「落ち着いてアルト君。陛下の御前だよ」

 だが、すかさず動いた黒髪のドリーは、躊躇いなく『両手持ち大剣(ツーハンドソード)』を抜き、その切っ先をアルトに向けた。

 向けはしたが言葉にも構えにも殺気はなく、アルトはすぐにそれを察して再び膝を地に着いた。

「スンマセ、いや失礼しました」

 その動作を最後まで見届け、ドリーもまた剣を収めて息をついた。

 一瞬の緊迫場面だったが、公国王オットールは特に動じもせず大仰にうなずいた。

 さすがはただ『獅子』と呼ばれるわけでなく、『眠れる』などと冠するだけはある。肝が据わっているというか、どこか暢気で腰が重そうだ。

「それからその方」

 アルトたちの指名手配について述べたわりにこだわりなく視線を外した公国王オットールは、次に後ろの方で平然としていた黒衣の『魔術師(メイジ)』へ興味を向ける。

 「今度はこっちか」か、もしくは「気付かれたか」と言った表情を一瞬だけ浮かべたカリストは、すぐ面倒な感情を眼鏡の下に押し込み、笑顔を貼り付けた。

「はっ」

 相手が何を言い出すか、予想はつくがまだ確定はないので、カリストはそう短く返事をするに至り、ただ続く言葉を待つ。

 公国王オットールはしばしカリストを眺めてから、やはりたいした興味も無さそうに口を開く。

 どうもこの態度はかの陛下の平常態度のようだ。

「確かキヨタヒロムと言ったか。キャンベルめの推挙で男爵位を授けたと記憶するが」

 暗に「お前、キャンベルの子飼いだろう。裏切りか?」と問う僅かなる眼光を感じ、カリストはすぐさま恭しく頭を下げた。

「その件につきましては、先の疑問共々併せて説明させていただきたく」

「よかろう。釈明して見せろ。手短にな」

「ははぁ」

 それからカリストはこれまでの経緯を順を追って話した。

 大魔法帝国時代からあらゆる陰謀を成してきた、精神生命体キヨタヒロムについて。

 かの者に運悪く身体を乗っ取られた事について。

 宿場町アルパにてキヨタが司祭を殺害した事について。

 その現場を、運悪くアルトたちが目撃し、濡れ衣を被せられた事について。

 逃亡先の聖都レナスで、ついでに前法王ランドン師暗殺の濡れ衣も着せられた事について。

 一か八かで巨人の住まう荒野を南下して、レギ帝国領へ逃げ込んだ事について。

 その後、アルトたちがキヨタを討ち果たし、カリストが開放されたことについて。

 もちろん、異世界(にほん)から来ました、などとは言わずにおいた。

「よって、見た目はキヨタ氏と同じですが、私はキヨタではなくカリスト・カルディアと申す一介の『魔術師(メイジ)』でございます。もっとも、此度の任務中は『キヨタ男爵』の名を便利に使わせていただきましたが」

 カリストがこう言葉を締めると、公国王オットールはこれまでの興味なさそうな表情から一転、髭を揺らしてたいそう可笑しそうに大笑いを始めた。

「ははははは。ご苦労だったな。なかなか波乱万丈な人生ではないか。稀有な冒険者、という事だな」

 稀有な「実力を持つ」冒険者と言う評価でなかった事を憐れに思ったか、黒髪のドリーがそっと付け足す。

「しかもそ彼ら、この話だけでなく、帝国では『南海の勇者』と呼ばれるほどの大活躍だったそうですよ陛下」

 するとそれを聞いた公国王オットールは、何度か頷いて笑いを治めるに至った。

「ふむ、いやすまんな。なるほど、実力も折り紙つき、と言うことか。アムロド殿下が仕事を任すだけの事はあるのだろうな」

 さもありなん、と頷き、天幕内は静寂を取り戻した。

「して、おぬしらはこれからどうする?」

 一呼吸を置いて、公国王オットールはそう訊ねる。

 アルトやモルトなどは、これには少々戸惑って顔を見合わせた。ちなみにマーベルは姿こそ畏まっているが、どこかそ知らぬ態度を貫いている。

 これに答えたのは酒樽紳士レッドグースだった。

「ワタクシどもがアムロド殿下よりご依頼受けたのは、タキシン王国へ派兵される軍の後方かく乱でありましてな。それについては兵糧調達を邪魔した事で果たしてましてございます。まぁついでに『首都防衛連隊』をかき乱す事でオットール陛下のご帰還を少しばかりお手伝いさせていただいた次第でして。かくなる上は任務終了でタキシン王国へ帰還させていただこうかと思っております」

 よくもまぁ偉い人を前にこうツラツラと言葉が出るものだ、などとアルトは横目でチラリと、このドワーフ『音楽家(ミュージシャン)』を見遣る。

 いい意味でも悪い意味でも場慣れしているのは、ステージ根性なのか、それとも元の世界、日本での経験在りしなのか。

「なるほどのう」

 ドワーフ紳士のもっともな言葉を聞き、公国王オットールは思案気に顎鬚を撫でる。

 彼にしてみれば、帝国で名を馳せるほどの腕利きであれば、自らの戦列に加えたい所だったが、こうもハッキリ言われては難しいか、と諦めかけた。

 そこでまた見かねた黒髪のドリーが口を挟む。

 今度はアルト隊へではなく、公国王オットールへのアシストだ。

「陛下、彼らもまた冒険者なれば」

「おお、そうであったな」

 これを聞き、公国王オットールは感心して喜ばしげに頷いた。

 頷き、少しばかり意地悪そうな顔で口を開く。

「ではこうしよう。その方らも戦列に加わり、武功を立てたならば相応の褒美を出そうではないか」

「ほほう褒美。それはいいですな」

 途端、「早く帰ろうよ」と言う表情だったアルト隊に、輝きが差した。

「何くれるにゃ?」

「欲しいのは『無銘の打刀』よりマシな刀だな」

 一部に欲望全開なヒソヒソ声を聞き、ドリーもオットールも苦笑いをこぼした。まぁ、これくらい正直な方が扱いやすいだろう。

 ところが僅かにも知恵が回る者もいる。

 公国王の認識上で、キヨタ男爵改め黒魔道士カリストという青年だ。

「陛下、失礼を承知でお尋ねします。逆徒キャンベルとその配下の偽司祭どものせいで公国経済は荒れております。果たして満足な報奨が出せましょうか?」

 ホント、失礼なやっちゃな。と本音の部分で公国王オットールは眉をしかめた。しかめつつも、その通りなので憮然として思案した。

 元々が豊かな国ではないニューガルズ公国である。

 その上で新法王となったキャンベルがさらに公国宰相にもなって、両権力を好き放題に振りかざしたから、たった数ヶ月で公国は建て直しに10数年はかかるだろうというダメージを受けた。

 だが、それでも冒険者や従軍してくれた諸侯の兵に報奨を出すくらいは何とかなろう。いや、何とかなるに違いない。何とかなって欲しいなぁ。と、公国に返り咲く予定のオットールは悩ましげに息を漏らした。

「仕方あるまい。城の宝物庫を開こう。その方らの武功次第で、その中から良いものを選び持って行くが良い」

 この言葉にアルトとマーベルの顔は再び輝いた。

「刀はあるか。いやありますか?」

「サムライの武具には詳しくないが、見た憶えがある」

「よっしゃ、その話、乗った」

 特に、『胴田貫』を破損してから暗い顔をしていたアルトはまたもや思わず立ち上がってガッツポーズである。

 もちろんすぐさま礼を失した事に気づき、今まで以上に恭しく膝をついた。

「陛下の御為に微力を尽くしましょう」

「アっくん、調子良過ぎにゃ」

 態度の豹変を真横で眺め、ねこ耳童女は唖然として呟いた。

 まぁ、自分もこの話を受けるに賛成であったから、黙って頭を垂れた。

 ただ、未だ納得行かぬ表情を晒す者もいた。誰あろう、白い法衣を纏った『聖職者(クレリック)』モルトだ。

「ふむ、聖女殿は宝物庫ではお気に召さぬか」

 これでも大盤振る舞いなのだが、と公国王オットールは顎鬚を撫でる。

 戦において『聖職者(クレリック)』の有無は重大な勝ち負けの要因となる。

 戦場で傷を負った兵が、かの職業(クラス)にある者の魔法で、瞬く間に戦列復帰を果たす事ができるのだ。

 優れた戦士同様に、ぜひとも欲しい人材である。

 だが真に『聖職者(クレリック)』ともなれば、金では動かぬか? と、公国王オットールは少しばかりの感心と共に思案した。

 ニューガルズ公国で生まれ育ったオットールにとって、『聖職者(クレリック)』とは、無私無欲で高潔な、前法王ランドン師こそがそのイメージにあった。

 ゆえに、キャンベルこそは邪道であり、他宗派の『聖職者(クレリック)』の生き様などは想像の範疇外だった。

 なので、この後、黒髪のドリーに囁かれた一言には酷く困惑した。

 困惑しつつも、彼の言う通りに言葉を紡いだ。

「ならばそちには酒蔵を開放しよう」

「僅かばかりの忠誠心を捧げましょう」

 一転、モルトは珍しくも標準語を吐き出しつつ、平伏した。


 こうしてアルト隊も『帰還王軍』の列に加わる事になった訳だが、そうした再編成と一時の休息を終え、翌日の早朝には首都へと向けて進軍を開始した。

 とは言え、アルトたちがキャンプ地としていた林は首都ニューガルズ市から徒歩で半日かからぬ場所である。

 いくら集団行進が個人の歩みより遅くなるとは言え、昼食を終えてしばらく進んだ頃にはニューガルズ市の街壁の外までたどり着いた。

 ちなみに昼食と言っても、行軍しながら各自が携帯したパンをかじる程度だった。

 一応、アルトたちにも配給してもらえたが、とてもじゃないが好き好んでまた食べたいと思える物ではなかった。

「まだ口の中が粉っぽくてパサつくにゃ」

「『ふっくらパン工房マッカチン』が恋しいわぁ」

 特に、女性陣は大きな溜め息と共にそう呟き合った。

 さて、街壁である。

 ここから軍勢を押して街門を開き、城下を抜けて城壁へ至り、そこからが攻城戦の本番となる。

 これが城攻めの手順と言う事になる訳だが、果たして何日かかるか、と、一旦整列した兵たちを眺めて公国王オットールは鼻を鳴らした。

 首都に詰める守備兵は寡兵とは言え、攻める『帰還王軍』はその倍程度である。

 攻城戦において「攻め手は3倍の兵を欲する」という経験則から来る法則はこの世界でも知られていたので、まともに戦えば勝利するは難しい。

 それゆえ王は思案した。

 が、その思案は杞憂であった。

 アルトと、街壁に上りこちらの様子を伺っている守備側の物見兵の目が合った瞬間、向こうが小さく手を振ったのが見えたからだ。

「あれ、ノイマン軍曹っておっさんじゃないか?」

 そう、その物見兵は『首都防衛連隊』所属の中隊長、ノイマン軍曹その人だった。

 ノイマンの率いる中隊は、先日、林にてアルトたちに降され、その上で公国王オットールの生存を知り、「王の帰還を迎えるために」と首都へ戻った連中だ。

 そのノイマン軍曹が街壁上にいるということは、戦わずして城下へ入る事が出来るだろう。

 後は、そのタイミングだ。

 ノイマン中隊の面々が公国王オットールに再び忠誠を誓ったのは確認しているが、その他の守備兵までもが全て味方になった、とは判らない。

 未だ敵兵がいるとすれば、ノイマン軍曹が街壁開放を行った際にその背後を襲われてしまいかねない。下手すればノイマン中隊を失い、さらに籠城される事もありえる。

「陛下、一案があります」

 と、そこへやって来たのは薄金色の綺麗な髪を持つ、白磁の様な美少年だ。

 タキシン王国王太子の甥に当たり、また黒髪のドリーと共に冒険者に身をやつしている『魔術師(メイジ)』カインである。

 いつも通りのしかめ面だが、美少年ゆえ、それも絵になる。

 かの白磁の『魔術師(メイジ)』は、公国王オットールの頷きを確認してからそっと耳元で彼の案を述べた。

「ただ、この策が成るかどうかは陛下の人徳次第、というところですがね」

 最後に意地悪そうな笑みと共にそう括ったカインに対し、公国王オットールは挑戦的なものを感じて鼻を鳴らした。

「よかろう。その策が成らぬ様であれば、ワシが返り咲いても無意味。このまま野に降るまでよ」

 そう答え、公国王オットールは居並ぶ『帰還王軍』兵士たちを、いつでも門へ進めるようにと配置させた。

 果たして、白磁の『魔術師(メイジ)』カインは、公国王の傍らで緒元魔法の準備を始めた。

 と、同時に公国王オットールもまた立ち上がり、まるで城下の街にいる公国民へ向けるかのごとく大仰に言葉を紡ぎ始めた。

「公国民よ、ワシはニューガルズ公国の正当なる王、オットールである。

 ワシの不在によりにはそなたらには苦難を味会わせてしまった事、誠、我が不徳の致す所と詫びねばならん。

 だがワシは帰ってきた。

 公国を私する逆徒キャンベルを打倒し、公国を元の、貧しくとも平和な国と戻すためである。

 我が帰還を望む者は門を開けよ。望まぬ者は我に対する戦列を()くがいい。

 戦いは望まぬが、そちらが望むとあれば『眠れる獅子(ドルミーレ・レオ)』と言われた我が双眸を開き、獅子たる所以を見せてくれようぞ」

 その口上を聞きつつ、白磁のカインが魔法を紡ぐ。

「『魔法強化(マグスメソッド)』『ファタモルガナ』」

 途端、眼前で1人演説を繰り広げる公国王の姿が、街壁越しに城下へと見えるほど高く大きく映し出された。

 そして、その幻影が、一字一句もらさずに、王の言葉を城下へ伝えた。




 『ファタモルガナ』は5レベルの緒元魔法であり、3レベル『シムラクルム』の強化版といえるだろう。

 幻影にて映像、画像だけを作り出す『シムラクルム』に、さらに音声を加えたものが『ファタモルガナ』の効果だ。

 幻影として映し出す像は術者の任意に作り出せるが、実際に見た光景を再生する場合はより完成度の高い幻影を生み出す事ができる。




「王だ。オットール陛下が帰ってきた」

 市内で「正体不明の軍勢が迫っている」と噂を聞いて不安に思っていた公国民の大多数は、この空にそびえる公国王オットールの幻影に喜声を上げた。

 そして次に何をすべきかと知った者たちは、群れを成して街門へと集る。

 もちろん、この日に偶々街壁当番であったノイマン中隊はこの邪魔などせず、それどころか混乱から怪我人などが出ないようにと、交通整理に当たった。

 また開かれた門からいち早く飛び出して合流したノイマン軍曹により、城下城内の公国兵と公国騎士のほとんどはオットール王に再度忠誠を誓う旨を伝えられた。

 かくして、ニューガルズ市の街門は、公国王オットールの人徳により、平和裏に開かれたのであった。


 と、その様子を唖然としてみていたアルトが人知れず呟いた。

「あれ? 敵がいないこの状況で戦功を立てるって、もしかして難しくね?」

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