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ぼくらのTRPG生活  作者: K島あるふ
#07_僕らの洋上生活

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107/208

12海防艦と輸送船

 海防艦『ヴォルフラム号』が停船中の輸送船『タンホイザー号』に向けて放った『大型弩砲(バリスタ)』の矢がグングンと迫る中、アルト隊の中でいち早く動いたのは黒衣の『魔術師(メイジ)』カリストだった。

 甲板上で鹵獲品の酒樽を掲げて小躍りしていたカリストは、すぐに樽をモルトとレッドグースに押し付けて走り出す。

 行く先は中央にそびえる船橋塔だ。

 他の誰もが、味方の筈である海防艦『ヴォルフラム号』からの砲射に反応できない中、黒い『外套(マント)』をはためかせたカリストは、難なく船橋へ続く細い階段へと取り付いた。

 だが、そこで輸送船『タンホイザー号』は大きく揺れた。

「おっと」

 咄嗟に手すりに取りすがって転倒を回避したカリストは、『タンホイザー号』船尾方向の海面に立ち上った水柱を見遣る。

 どうやら第一射は外れたらしい。いや、射弾観測か。

 射弾観測とは、長距離射撃をするに先立って行う捨て射撃のことで、これは始めから当てる必要はない。

 射撃は距離が伸びるほど、気温、湿度、風などが強く影響するので、この射弾観測によって、その日、その時の修正値を割り出すのだ。

 ならば狙いを修正した、当てる気で放つ次射がすぐに来るだろう。

 カリストは水柱が落ち着くよりも早く、階段を一気に駆け上り船橋へと飛び込んだ。



 その船橋では、船長メイプル男爵が忌々しそうに舌打ちを放った。

「ええいヴァカンテ卿め、気でも狂ったか」

 彼の言うヴァカンテ卿とは、レギ帝国軍本体所属の騎士であり、今、撃って来た海防艦『ヴォルフラム号』の艦長を務める男だ。

 メイプル男爵も所属は違えど同じ帝国軍人として、少しばかりの人となりくらいは知っていた。

「反乱でしょうか」

 実直そうな副長グレイ中尉もまた、この砲撃の意を理解できずに首を傾げる。

「帝国に反旗を翻すにしても、こんな南海上で輸送船に攻撃する意味がわからん。強いて言うならこのまま物資を奪って、どこかへ遁走する気か?」

「もしそうなら行き先はタキシン王国ロシアード辺りでしょうか。王弟派につくとか」

 レギ帝国が参戦することになったタキシン王国の内戦。その敵側勢力となるのがタキシン王国第2都市であるロシアードを拠点とする王弟派だ。

 帝国の敵に回るというなら、この島ならそれくらいしか無いだろう。

 島を離れ大陸へ逃げる、と言う選択肢もありそうに思うかも知れないが、『ヴォルフラム号』は沿岸警備を目的とした艦なので、大陸まで航海できる能力は無い。

「ふむ、ありえない訳ではないだろうが、さて」

 王太子派についたレギ帝国が派遣するのは、西部方面軍を中心に編成した部隊であり、『タンホイザー号』が輸送しているのは、この派遣軍の為の兵站だ。

 そもそも派遣軍編成時にも妨害かく乱工作として、王弟派から派遣されたドクター・アビスと異形の怪人が、港街ボーウェンを荒らしまわったりした。

 ならここでの襲撃も、やはり王弟派の工作と言う可能性も高いだろう。

 が、レギ帝国軍の高官とも言えるヴァカンテ大佐が敵と通じて離反するなどあるだろうか。

 それがメイプル男爵の引っかかりだった。

「船長、『ヴォルフラム号』から信号です」

「何?」

 思考に沈みかけていたメイプル男爵は、すぐさまそんな声で引き上げられる。そして声につられて迫る『ヴォルフラム号』に目を向ければ、確かに淡い光がチカチカ見えた。

 それは船同士で簡単なやり取りをする為の道具で、簡単に言えば大型のランタンだ。

 光を遮る蓋を開け閉めすることで、あらかじめ決めた信号表に沿ったメッセージを送る事ができる。

 探照灯を使ったモールス信号の様なものである。もっとも、光源が炎なので昼間などはよく目を凝らさないと判りにくい。

「何と言って来ている」

「帝国への反意を見止める。降伏せよ、さもなくば撃沈する」

「馬鹿な!」

 メイプル男爵はカッとなり歯軋りをする。

 『ヴォルフラム号』が反乱したかと思えば、逆にこちらを反逆者呼ばわりだ。腹が立たないわけが無い。

 しかし、さらに腹立たしいことに、現在の『タンホイザー号』は戦闘行動も、射撃への回避行動すらままならない状態だ。

 なぜなら、大型輸送帆船『タンホイザー号』は現在停船中であり、また先の戦いで制した海賊船を拿捕している最中だからだ。

 ここから動き始める為には、海賊船拿捕作業を一時中断、船員の収容、碇と帆を上げて前進と言う手順が要る。

 口で言うのは簡単だが、どれもたかだか数分で済む話ではない。

 ところが、この世界においての『戦闘』とは10秒単位で事が進むのだ。

 まず『ヴォルフラム号』が『大型弩砲(バリスタ)』を1射した訳だが、『大型弩砲(バリスタ)』は巻上げに3ラウンド、つまり30秒かかるので、次に同じ『大型弩砲(バリスタ)』が撃てるのは5ラウンド目だ。

 ところが『ヴォルフラム号』は『大型弩砲(バリスタ)』を5門搭載しており、その5門中、『タンホイザー号』へ向いているのが、艦首、右舷前、左舷前の3門である。

 つまりたった1分の内に最大で約6回の射撃が可能になる訳だ。

 こちらの戦闘準備が整うまで、いったい何発の砲矢を受けることになるのか。

 メイプル男爵は忌々しく思いつつも、いかにすれば最も損害が軽微に済むか、熱くなった思考を必死に抑えつつ回転させる。

 その間にも、波間を挟んで向こうに見える『ヴォルフラム号』右舷前の『大型弩砲(バリスタ)』が、着々と発射準備を終えつつあった。

 と、その時、船橋の扉が勢い良くバタンと音をたてて開かれた。

「進言します!」

 飛び込んで来たのは、客分として乗り込んでいる冒険者の一人、黒魔道士などと影で呼ばれているカリストと言う青年だった。

「説明している時間がありませんが、悪いようにはしません。船長殿、今すぐ我ら『アルト隊の傘下に入る』と宣言して下さい」

 階段を駆け上って来たせいだろう。息も絶え絶え、と言った風情でカリストがそう吐き出すと、船橋にいた『タンホイザー号』の幹部達は一様に眉をひそめ不快感を表した。

 ただメイプル男爵だけは無表情のまま、カリストの目をじっと見ていた。

「何を馬鹿なことを。レギ帝国所属船である『タンホイザー号』が、貴公らの傘下にだと? 何を言っているのかわかっているのか」

 幹部達を代表してそう言うのは、副長のグレイ中尉だ。だが、その言をメイプル男爵は止めてカリストの前に出る。

「カリストさん。私はアルトさんたちを信じていますが、あなたのことはまだ良く知りません。真意は?」

「もちろん、『タンホイザー号』が生き残ることです。それに、たかがこの戦闘の間だけですよ」

 カリストは即答した。その真摯な視線には迷いもない。

 そう読み取ったメイプル男爵はすぐさま決断した。

「よし、その策に乗った。たった今より『タンホイザー号』は一時、アルト隊の旗下に入る。総員、戦闘配備急げ」

 決断し、各員に向けて大声を張り上げた。船長が言うなら、旗下の船員はその言に従わなくてはならない。その心の内にどんな不満があろうともだ。

 これは軍人であり、また海に生きる者なら当然の常識だった。

 なので各員はすぐさま不満を飲み込んで各職域に没頭した。

「『タンホイザー号』の指揮はそのままお任せしますよ」

 それらの様子を見て満足げに頷いたカリストは、軽く息を整えつつ次の行動に移る。

 船橋の、開いた窓から甲板を見下ろし、見つけたねこ耳童女へと声をかけるのだ。

「マーベル君、『風の精霊(シルフ)』召喚だ。そして次のラウンドは…」

 そう言い掛け、マーベルがカリストを見上げた時、『ヴォルフラム号』の『大型弩砲(バリスタ)』が第二の矢を発射した。



「『タンホイザー号』は一時、アルト隊の旗下に入る。総員、戦闘配備急げ」

 頭上から降って来たメイプル男爵の言葉に、甲板で事の成り行きを呆然と見ていたマーベルは、怪訝そうに振り返って船橋塔を見上げた。

 アルト隊とはつまり彼女が属する冒険者仲間のことだ。

 港街ボーウェンで知り合ったアスカ隊には『シュテルネンハオフェン』と言う正式な隊名があったが、アルト隊は結局正式に決めない内に、なんとなく『アルト隊』で定着してしまった。

 まぁそんなことは今、どうでも良く、ともかくマーベルはただ首を傾げた。

「なんで、お国の船がアタシらの下に付くにゃ?」

 意味がわからないが、それを聞いた船員達はすぐに戦闘配備に向けて各々の仕事に慌しく手をつけ始める。

 そんな様子に、マーベルもまた何かするべきなのかと自分の仕事を探した。

 とは言え、マーベルたちはあくまで客分なので、『タンホイザー号』において職分など何も無い。

 結局、特にやることを見つけられずにキョロキョロするばかりだった。

 そこに、また頭上から声が降って来た。

 今度はアルト隊の仲間である、カリストからだ。

「マーベル君、『風の精霊(シルフ)』召喚だ。そして次のラウンドは…」

 言葉は何か続けようとしたが、その時、ちょうど敵艦がまた『大型弩砲(バリスタ)』から太い矢を発射し、それを見た船員達のワッと言う声で聞えなかった。

 だがマーベルの行動は早かった。

 未だそれぞれの意味はわからない。

 だが、味方の誰かがわかっているならとやかく言わず従えばいい。一刻を争うなら、論議している時間も惜しいだろうから。

 頭脳役をカリストが務めるなら、自分は手足だ。

 マーベルはそう頭をめぐらせてから、すぐ虚空に向けて両手を広げた。

「『風の精霊(シルフ)』、召喚にゃ」

 その声が空気に融けるとそよ風が舞い、彼女の金色の長い髪をはためかせる。

 目を凝らせばいつの間に現れたのか、向こうが透けて見える様な儚げな羽の生えた乙女がマーベルを包み込むように纏わり付いていた。

 ちょうどその時、『ヴォルフラム号』からの第二射が、『タンホイザー号』の後部甲板に突き刺さり、第一射に比べてさらに大きく船を揺らした。

 マーベルもバランスを崩して小さな身体が一瞬宙に浮いたが、纏わり付く風の乙女がすぐフワリと彼女の身体を支えて事無きを得る。

 マーベルと風の精霊(シルフ)は、互いに視線を合せて二パッと笑い合った。

「助かったにゃ」

「□□□□□□□□」

 普通に人間の言葉でマーベルが呟き、風の精霊(シルフ)は解ってか解らずか、精霊語で応えて頷いた。

「ん、矢、風の精霊(シルフ)、そう言うことかにゃ?」

 そこで、マーベルはカリストの意図に気づいて僅かに首を傾げた。意図は解ったが、果たしてそれが本当に上手くいくのか判らなかったからだ。

 だが、そこでマーベルは考えるのをやめた。

 そうだ、この戦闘において、自分は手足役だと決めたのだから、最後まで頭役(カリスト)に従えば良い。

 そうマーベルは思いなおして、3ラウンド目に使うべき精霊魔法を思い浮かべて備える事にした。



「がっはっは、見ろ、どうやら『タンホイザー号』(あちらさん)は動けんらしいぞ」

 その頃、『ヴォルフラム号』艦橋に嘲りの笑いが高鳴った。

 声を発したのは『ヴォルフラム号』艦長の、レギ帝国軍ヴァカンテ大佐。髪も髭もまともに整えていないボサボサで、獣然とした獰猛な顔の男だ。

 海の男と言うよりは、蛮族の戦士とでも評した方が誰もが納得するだろう。

 実際、彼の経歴を紐解けば、帝国騎士の中でも屈指の陸戦巧者だった。

 それがなぜ海防艦『ヴォルフラム号』の艦長などしているのか。有体に言えば左遷である。

 レギ帝国軍本体である中央軍では、未だ海の任務は閑職扱いなのだ。

 この辺り、開明的な西部方面軍とは扱いが違う訳だが、それはともかく、この高笑いを受けて線の細いこれまた海の男とは見えない『ヴォルフラム号』副長は溜め息をつく。

「本当によろしいのですか?」

「何がだ?」

 気分が良かった所に水を差され、ヴァカンテ大佐は眉を寄せて聞き返した。副長はすぐに言葉を続けた。

「『タンホイザー号』が反乱、などといいますが、何も証拠はないでしょう? それなのに一方的に攻撃など行って良いのですね?」

 本来、軍人としては上官の指示に疑問を挟むなどあってはならない事である。

 ただそれでも、同帝国所属船に対する攻撃となれば、指示を下した艦長の思惑を確認せねばいられなかった。

 場合によっては、『ヴォルフラム号』の方こそ反乱だと断じられかねない事態なのだから。

「ふん、何を言っている。見ろ、海賊船と接舷して物資のやり取りなどしているではないか。西部方面軍が賊と繋がっているという現行犯であり、背任行為だぞ」

「何をバカ…ヴァカンテ大佐!」

 副長は思わず「バカな」といいかけて言葉を飲み込んで誤魔化した。彼からすればヴァカンテ大佐の言い分は思い込みか言いがかりと思えた。

 副長の、いや大体ほとんどの船員からすれば、海賊船と接舷している『タンホイザー号』は、海賊船との戦闘を行い、勝利し、鹵獲作業をしている様にしか見えなかった。

 だが、蛮勇で知られるヴァカンテ大佐のひと睨みに、副長はそれ以上の言葉を吐くことができなくなってしまった。

 こうなれば、嫌でも彼に従い『タンホイザー号』を降すしかないだろう。その上で「反逆罪」をでっち上げるのだ。

 そうしなければ、彼と船員たちに未来はないのだ。

「とにかく敵はまだ動けんのだ。こちらも足を止めて砲射攻撃に徹しろ」

「アイサー。操舵班、帆操班各員に告ぐ、船速を最低限に止め敵船との位置関係維持に努めよ」

 感情をかみ殺し、副長は命令伝達の為に声を張り上げる。艦橋いる担当員は、すぐさまそれぞれの任務に没頭した。

「『大型弩砲(バリスタ)』第三射、準備次第、発射だ」

「アイサー、準備完了。発射!」

 続けてヴァカンテ大佐が指示を出し、砲射班長がさらに左舷前に据え付けられた『大型弩砲(バリスタ)』へと伝達。すぐさま『大型弩砲(バリスタ)』の操作を行っていた各員の掛け声と共に太い矢が放たれた。

「相手は止まってるんだ。そろそろ船橋に当てろよ」

 いかにも楽しそうにヴァカンテ大佐が呟く。もう完全に勝ち戦のつもりの様で、その表情には一抹の不安も見えない。

 だが、数秒の後、その笑みは驚きに変わった。いや、驚愕に目を見開いたのはヴァカンテだけではない。砲矢の跡を目で追っていた船員のすべてだった。

 人では引けぬ強い弦から放たれた大きな矢が、吸い込まれる様に『タンホイザー号』の船橋へと向っていた。

 そして誰もが「命中」、と声を上げる準備をしたその時、砲矢が急に力を失い、あらぬ方向へと放り投げられたかのごとく失墜したのだ。

「なんだ、何が起きた!」

 艦長席から立ち上がり、艦橋の窓まで駆け寄ったヴァカンテ大佐が叫ぶ。

 あの弾道は明らかに自然法則あらざる動きだった。そしてさすが陸戦巧者をならす男だけあり、ピンと来た。

「魔法か。しかし…」

 その首を傾げる艦長の言葉でピンと来た副長もまた首を傾げる。

「魔法ですか。確か精霊魔法に『ヴィントシルト』と言う矢弾を防ぐ魔法がありますが、船を守るほどの大規模なものは聞いた事が」

「だがたった今、『タンホイザー号』はやってのけたぞ。ええい、確認の為にも次射を準備しろ!」

 副長の「信じられぬ」という表情からの言を遮り、ヴァカンテ大佐はすぐ甲板を見下ろす。眼下には、未だ弦の巻き上げ作業中の『大型弩砲(バリスタ)』が3基あるだけだ。

「は、第一射を行った『大型弩砲(バリスタ)』があと約10秒で発射可能です」

 答えるのは艦橋から砲射班各員に指示を出している砲射班長だ。

 『大型弩砲(バリスタ)』は弦の巻上げに3ラウンドかかるので、3基の『大型弩砲(バリスタ)』を使った波状攻撃だと、どうしても1ラウンド休みが出来てしまう。これはこの世界のシステム上、どうにもならないことであった。

 ちなみに海防艦『ヴォルフラム号』には5基の『大型弩砲(バリスタ)』が搭載されているが、砲射対象に船首を向けている今の状態では、左右舷前部にある『大型弩砲(バリスタ)』が邪魔で左右舷後部にある2基の『大型弩砲(バリスタ)』は使えない。

 メリクルリングRPGの戦闘ルールに『曲射』が無いので狙えないのだ。

「く、とにかく射撃準備を急げ」

 ヴァカンテ大佐は思惑を外され悔しげに表情を歪め、呻くようにそう洩らした。



 精霊魔法『ヴィントシルト』を使い『大型弩砲(バリスタ)』の砲射を防いだ当人であるねこ耳童女マーベルもまた、『ヴォルフラム号』の乗員同様に驚いた。

 ただこちらは騒ぐでなく、キョトンとした表情で墜落した矢と船橋を交互に見る。しかし船橋には解答をもたらす筈の黒衣の『魔術師(メイジ)』はすでにいなかった。




 風の盾『ヴィントシルト』は6レベルの精霊魔法だ。

 その効果はルールブックの説明によれば「あらゆる矢弾から(パーティ)を守る」とあり、具体的には「効果範囲:パーティ全体」「効果:飛び道具攻撃無効」である。

 ルールブックを読んだ者の多くが「説明の記述が少なすぎるな」と思うのだが、これは何もこの魔法に限ったことではない。

 メリクルリングRPGのルールブック中で魔法の説明をしている項の順番は『緒元魔法』『神聖魔法』『精霊魔法』の順。つまり『精霊魔法』ま一番最後だ。

 また、各魔法の説明文は後になるほど少なくなる傾向にあった。特に6レベル以上の魔法に関してはこの傾向が顕著だ。

 ここから導き出された読者各位の談するところ曰く「ああ、デザイナー疲れているな」であった。

 まぁ、メインデザイナーであるキヨタ氏がすでにいないので真実は闇の中であるが、そう言うわけで『ヴィントシルト』は人による解釈の違いが多い魔法だ。

 なのにあまり突っ込まれなかったのは、魔法使用する為の精霊召喚に1ラウンドを消費しなければならない『精霊使い(シャーマン)』が、実際のプレイヤーの中で不人気だった事が原因とも言われている。




「という訳で、アルト隊旗下と宣言した『タンホイザー号』全体に効果が及ぶのさ」

「そんなアホな」

 などと、いつの間にか甲板まで降りてきていたカリストがのたまい、同じ様に集って来ていたアルト隊の面々が呆れた様に吐き出した。

「驚くことに承認が降りてますし、その通りに効果が及びましたね」

 と、これはシステムに繋がりを持つ薄茶色の宝珠(オーブ)の呟きだった。

「さて、これで『タンホイザー号』の守りは差し当たって問題なし。では次、行って見ようか」

 カリストは、未だモヤモヤとした感情と戦うアルト隊の面々に目を向ける。その視線は特に、アルト、モルト、そしてハリエットに向けられていた。

ちなみに、ソード○ールドRPGというTRPGの最初のルールブックだと、実際にページ後ろの方に載っている魔法は、説明がかなり適当だったように記憶しております。

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