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ぼくらのTRPG生活  作者: K島あるふ
#07_僕らの洋上生活

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106/208

11アルトと王子の苦悩

 カリストから、どう判断して良いか判断に迷う話を聞いたアルト隊一行は、皆、微妙な気持ちになりつつ解散した。

 解散、と言っても彼らにやるべき仕事が割り振られているわけではなく、船内で様々な点検に忙殺されている船員たちの邪魔をしない様に散策するくらいしかない。

 場合によっては簡単な仕事を手伝うつもりの者もいるだろう。

 そんな中、アルトは先の戦闘で乱れた心を落ち着けようと、そのまま船室に残ってベッドに横になる。

 先の戦闘、対海賊戦において斬り捨てた連中は人間だ。

 いくら相手がこちらを襲って来た犯罪者であろうと、やはり人間を殺すのは気分が良いものではない。

 もちろん、これまでにも何人も斬ってきたアルトなので、今更だろうと言うかもしれないが、それでも沈む気持ちを無しにするほど慣れた訳ではなかった。

「ま、考えたってしょうがないか」

 しばし、グルグル巡るマイナス思考を続けた後に、やっと思い出したように呟き、アルトはベッドからそっと身を起す。

 さて、外の様子でも見てくるか。

 気分転換をしようという意味も込め、アルトはベッド脇に置いてあった『胴田貫』を腰に差して甲板上へと向かった。


 甲板に上がると、想像の通り多くの船員が各担当部署の点検や、海賊船の鹵獲作業に追われていた。

 特に海賊船側は、投降者の捕縛、櫂漕ぎ奴隷の救助・海葬、物資の押収と、海戦の勝利を匂わせる作業も多く、携わる者たちは陽気で賑やかだった。

 そんな中を良く見れば、ちょうど船倉から3つの樽を運び出す数人の船員と、それを監督するように煽り立てるモルトの姿がある。

 アルトが首を傾げつつその様子をしばらく眺めていると、樽は渡し板を通って『タンホイザー号』の甲板にそっと降ろされた。

「うひゃひゃ。ほんならひと樽貰ってくでー」

「ええっ」

 ものすごい良い笑顔を振りまきながら、白い法衣の聖女が樽に抱きついて宣言すれば、ここまで運んでいた船員達が驚愕に揃って声を上げた。

 ああ、あの中身は酒だな。と、アルトは即座に納得だ。

 酒が関わったモルトに近付くのは愚の骨頂なので、アルトは半眼閉じたまま遠くから眺めるに止めることにした。

「横暴だー」

「なんの権利があって俺たちの酒をとり上げようってんだ」

 そう考えているうちに、我に返った船員たちが何とか自分らの取り分を増やそうと抗議の声を上げる。と言うか、行軍中の鹵獲品なので、別に船員達の懐に入るわけじゃないのだが、まぁそれはそれである。

 もちろん、モルトの笑顔はそんなことで崩れはしない。

「なに言うとんのや。ウチのこと、誰やと思っとるの?」

 普段のモルトからはあまり想像もつかない押しの強い言葉だったので、まだ付き合いの短い船員達もつい息を飲んで彼女の言葉の続きを待った。

「ウチは、『太陽神の一派(スメラギ)』の属神であり酒造と飲酒を司るキフネ神に仕える神官やで。そこにお酒があるんなら、お供えするんがウチの使命や」

 まぁ言っている事は解らんでもないが、その理屈でいくと供えるのはあくまでモルトの使命であり、船員側の提供意思は任意になるはずだ。無理やり徴収するのはおかしい。

 加えて言えば供えたからと言え、供物が消えるたり減ったりするわけではない。そしてしばらくしたらお下がりする訳で、誰がそのお下がりを頂くかと言えば、結局の所、モルトである。

 ようするに、色々理屈をつけて自分がひと樽キープしたいだけだろう。

 アルトだけでなく船員達もすぐにそう理解したが、あまりに堂々としたモルトの態度にどう反論して良いかと顔を見合わせた。

 その様子にモルトも、もうひと押し必要か、と小さく舌打ちしてから笑顔に戻って口を開く。

「それになー、ウチ、ちょっと前まで水神ミツハの社寺にも出仕しとったんやで」

 この言葉にアルトはすかさず「汚い。さすがモルト、汚い」と叫びそうになる。

 アルトだけでなく、船員たちもまた「ずるい」と内心叫んだ。

 水神ミツハもまた酒神キフネと共に『太陽神の一派(スメラギ)』の属神であり、水に関わるあらゆる行いを司る神だ。

 当然、航海をも司るので、船員たちにとっては無視出来ない神である。

 その名を出されては、船員達も黙るしかなかった。

 もっとも、モルトが水神ミツハの社寺に出仕していたのは間違い無いが、あくまでアルバイトだったので、それを笠に着るのは詐欺と言われても仕方ないだろう。

 だが一部始終を遠くから眺めていたアルトは、そもそも口出しする気はないので、ガックリと項垂れる船員達に「オレのせいじゃないがスマン」と呟きながら頭を下げるだけだった。

 そんな船員達とは裏腹に酒樽を勝ち取った側はと言えば、どこから出て来たのかいつの間にやって来たレッドグースとカリストが、モルトの指示で樽を掲げて小躍りだ。

「やったー酒盛りだー」

「酒盛りですぞー」

 本音ダダ漏れだよ。隠す気ゼロかよ。

 彼らの言葉に、アルトもまたガックリと項垂れるのだった。



 すっかり呆れ返ってアルト隊大人組から意識を逸らしつつ、アルトは再び海賊船へと視線を向けた。

 向けて、ギョッとした。

 酒樽を抱えて出て来たモルトたちとしばし遅れて海賊船の甲板に上がってきたのは、金髪混じりのメガネ少女ハリエットと、人形サイズの人工知能搭載型(インテリジェンス)ゴーレム少女ティラミスだ。

 ティラミスは、カリストの使い魔である黒猫ヤマトに騎乗しての登場である。

 さて、その2人連れの何にギョッとしたかといえば、ハリエットの両手が赤黒い液体でべっとりと汚れ、所々同色で染まった大きい皮袋を提げていたからだ。

 いつも前線で戦うアルトからすれば一目瞭然。あの赤黒は何かの血液だ。ならばあの袋にあるのは何だろうか。

 アルトとしてはおおよそ見当つくのだが、解りたくないという気持ちから咄嗟に心の目耳を塞いだ。

「やぁアルト君、ごきげんダネ」

 嫌な顔で出迎えるアルトに向けて、とてもいい笑顔でハリエットはそう言った。この笑顔はさっき酒を手に入れたモルトと同類の笑顔だ、とアルトは思った。

「おや、兄貴殿はご機嫌でありますか?」

 アルトの表情とハリエットの言葉が矛盾状態だったので、ティラミスは不思議そうに首を傾げる。

 彼女の騎乗する黒猫の足元は特に血で汚れていないので、おそらく出て来る時に合流しただけなのだろう、とホッとしながら、アルトは首を横に振った。

「ご機嫌なのはアンタだろ、ハリエットさん」

「まーネー」

 アルトとしてはとっとと会話を切り上げてこの場を去りたかったが、思わず否定の言葉を吐いてしまった。

 お陰でハリエットは「待ってました」とばかりに自慢げに応えて、提げていた皮袋をアルトの足元にドンと降ろした。

「いやー、ただ数日遊んでるだけのつもりだったケド、お陰で希少な素材が色々手に入ったヨ」

 そう言いながらおもむろに皮袋へ手を突っ込む。入手したという素材を見せびらかせるつもりなのだろう。

 だが、たまらずアルトは声を上げた。

「見せないでいいから!」

 先でも述べた通り、もちろんアルトだってその中身が何か予想している。

 だが予想しているからこそ、その回答を開示して欲しくはなかった。

 アルト流の現実逃避でもあったが、他にも、明確に回答を知ってしまえば、今まで通りの態度でハリエットと話す事が出来なくなりそうだという理由もあった。

 ハリエットはそんなアルトを怪訝そうに見てから、袋より手を抜いて肩をすくめた。

「ふむ、それは何の素材でありますか」

 素材と訊いて興味を持ったのだろう。

 人間2人の微妙なやり取りなど気にもせず、皮袋に寄ったティラミスが尋ねる。

 彼女の騎獣となっているヤマトは、皮袋の匂いをスンスンと嗅いでから、アルト同様の嫌な顔をした。

 彼にも袋の中身がわかったのだろうか。

 ティラミスの問いに胸を張ったハリエットが答える。

「色々出来るヨ。二日酔いに効く薬とか、足のむくみが取れる薬とか、胃薬とかカナ」

「言わないでいいっつーの」

 ハリエットはさらに続けようとしたが、アルトはまたも悲鳴を上げる。

 上げつつ、「今後、ハリエットの薬は絶対飲まん」と心中で叫んだ。

「そお?」

 ハリエットはやはり不思議そうに首をかしげてから、残念そうに言葉を切った。

 本当に理解できないらしい、と言うのが彼女の声色から窺えた。

 なぜ解らないのだろう、とアルトは少しばかり苛立った。

 が、彼自身も「彼女が採取した素材がなぜダメなのか」と問われれば、感情論を除いた理論的な回答が出来ないことに気が回り、ただ口を噤むしかなかった。

 それに、ハリエットとは生まれ育った世界すら違うのだ、そもそも文化、特に生死感なんかが根本的に違うのだろう。そう自分を納得させた。

 そんな感情から生まれたバツの悪さを誤魔化すように、アルトはもう一人、解っていない様子のティラミスに目を向ける。

「そっちは何やってたんだ? 出航してからはずっと寝てたろう」

 彼の言う通り、航海中のティラミスは日向でヤマトと共に昼寝してばかりだった。

 船旅に併せておやつをたくさん鞄に詰めてきたようで、起きていると思えばだいたい目撃されるのはおやつタイムだ。

「この海賊騒ぎで停船しているでありますから、揺れがおさまったでありますよ」

 言われて、確かにあまり揺れていない事にアルトも気づいて頷く。そう言うのなら、ティラミスが寝てばかりだったのは、揺れのせいで出歩きにくかったのだろう。

「なのでティラミスも何か面白い素材はないかと、探検していたであります」

 「も」と言うからには目的はハリエットと同じである。

 その事に気付いて身構えたアルトだったが、考えてみれば『魔法工学士(マキニスト)』のティラミスが探すとすれば、魔法装置関連の素材だろう、と思い至った。

 だから彼女も黒猫ヤマトも血に汚れている、という事は無かった。

「まぁ、旧世代のガレー帆船でありますから、目ぼしいモノなど、何も無かったでありますが」

「そうか、そりゃ残念だったな」

「そうでありますな」

 精神的に疲れ切ったアルトは、早くこの場を去りたい、と幾らかおざなりな返事をして2人と別れた。


 気分転換のつもりで甲板に出たのに、2連続で疲れるモノを見聞きしてしまったアルトは、もう船室に戻って寝ちまうか、などと肩を落として溜め息を付く。

 そして暗い気分になりつつも、未練がましく甲板上を見渡した。

 そんな彼の視線が、メインマストから下がったロープでラペリングごっこに興じるマーベルを捉える。

 またアホを発見してしまった。と思いつつもしばし見ていると、スルスルと降りたマーベルが、一人の操帆手に捕まって拳骨を落とされた。

 おかげでちょっとだけ和んだ。

 少し浮上した心持で甲板をもう一度見渡すと、今度は舳先の方で一人海を見ながらたそがれている少年を見つけた。

 タキシン王国王太子の長子、セナトール殿下である。

 アルト隊にとっては単に護衛対象であり、別に彼の無事さえ確保できれば、それ以上をどうにかしてやる筋合いなどアルトには無い。

 だが、なにやら酷く落ち込んでいるさまを見るに、どうにもいたたまれなくなった。

 この護衛任務の前にも彼の言葉は聞いた。

 内乱中のタキシン王国、その争う片方の軍の統領が彼の父であり、タキシン王国の正統な王太子だ。

 そんな父の役に立つ事はないだろうか、とセナトール小王子は10歳の幼い考えで兵士の慰問へと出かけた。

 しかしそこを刺客に狙われ、何人もの側近を喪い、果てに逃げ延びて今に至る。

 その事を、彼が酷く後悔し嘆いているのを、アルトも知っていた。

 きっと今も、それらの事に思い悩み沈んでいるのだろう。

「しょうがない。話くらい聞いてやるか」

 そんな気になり、アルトは頭を掻き毟りながら大股で舳先へと向かった。


 停船中とは言え、舳先に立つとさすがに強い潮風が頬を叩き、アルトは目に渇きを覚えて何度か瞬いた。

「うへ、わざわざこんな所にいなくても良くね?」

 先客として膝を抱えて座っていたセナトール小王子は、気楽に声をかけて来た若サムライを眩しそうに見上げ、直後、思い出したようにまた俯いた。

「あー、なんだ。色々あるけど、考えたってしょうがない事もあるぜ?」

 アルトは、人を慰めるとか、良いこと言うとか、そういうのは苦手だな。などと思いつつ、言葉を選びながら口を開く。

 色々大変そうだな、とも思ったが、人から「へーそりゃ大変だね」などと言われると、かえって腹が立つこともあるよな。と自分を省みつつ、避けた。

 小王子はこくりと頷きながら呟く。

「力が、欲しい」

「力?」

 何やら暗黒堕ちして邪神の力にでも目覚めそうな台詞である。が、さすがにそう茶化す場面でもなく、アルトは復唱だけして先を促した。

「これまで、僕の周りでたくさん死んだ。僕にもっと力があれば、こんなことにはならなかったのに」

 確かに、彼の言う事も間違いじゃないが。とアルトは眉を寄せる。

「いや、えーと殿下? お前、10歳じゃん? まだこれからだよ」

 アルト自身、10歳の頃どうしてたかといえば、勉強そっちのけで遊び呆けていただけだ。いや、この世界のアルト・ライナーはさすがに傭兵団で拾われた後に剣の練習くらいは始めていたが、それでも大人を降し助けるような力は無かった。

 だが、それでもセナトール小王子は、側近たちが次々に目の前で果てる所を見てきたせいだろう、どうしても納得しきれないという表情で波間に視線を落とした。

「あなたは強い。うらやましい。さっきの海賊の時も、僕は怖くて仕方が無かった。アルト殿ほど強ければ、何も怖くはないだろう」

「あ?」

 気の毒に思う気持ちが強かった今までだったが、さすがにこの言葉にカチンと来て、思わずガラの悪い声を上げた。

 言葉遣いは悪いが一応気遣う雰囲気があったアルトの豹変に、セナトール小王子は咄嗟にビクリと身を竦ませる。

「怖くないわけ無いだろ。オレはいつだって怖んだよ」

 続けて怒りの声色で告げられた言葉で、セナトール小王子は驚きに目を見開いた。

「考えればわかるだろ。戦いになれば斬られる事もあるし、斬られれば滅茶苦茶痛い。それに戦いは試合じゃないから、相手はこっちを殺す気で来る。この時の迫力と言うか、殺気ってのを浴びると、慣れたって身が竦むんだ」

 話すうちにその場面を思い出したのだろうか、アルトの顔は見る見る青褪めていく。その様子を見て、小王子も海賊戦前の船橋でのアルトの思い出した。

 確かに、あの時のアルトは小刻みに震えていた。

「オレは確かに強くなったよ。それでも上には上がいるし、油断すれば格下に斬られる事もある。一歩間違えばいつだって死と隣り合わせだ。これが怖くないわけ無い。怖くないなんて狂人の言うことだ」

 徐々に、アルトの蒼褪めた顔は赤みが戻り、彼は震えが止まった両手を見ながら、まるで自分に言い聞かせるかのように言葉を続ける。

「みんな怖いんだよ。怖いけど、踏ん張って戦ってんだ。だってそうしなきゃ、オレが前に出なきゃ誰が出るって言うんだ。なら、出るしかないじゃないか」

 ここへ来て、セナトール小王子には僅かに理解しにくい話になったが、つまりはアルト隊の戦陣についての言及だった。しばし考え、小王子も理解できたのか無言のまま固唾を呑む。

 アルトの言葉には鬼気迫るものが感じられた。それもそのはず、彼が今吐き出している言葉は、彼がこの世界で戦ってきた実感なのだ。

 ここまで語り、つい感情的になっていた自分に気付いたアルトは、少し恥ずかしくなって咳払いをする。

 高校生が小学生ほどの少年に向かって、こんな叩きつける様に「怖いんだよ」などと言うのは、さすがにカッコ悪いと思わざるを得ない赤面モノの行為だった。

「えーと、だから、その。な? 強くなりたいなら前に進むしかない。怖いかもしれないし、カッコ悪いこともあるだろう。だけど、それを飲み込んで前に進むんだ」

 もう自分でも何を言っているか判らなかったが、とにかく言葉を結ばなければ話が終わらない。そう言う思いで必死に言葉を紡ぐ。

 だが、アルトの内心はともかく、セナトール小王子にはアルトの言葉は衝撃的であり感じ入る物だったようで、いつの間にかアルトを見る視線は驚きから真剣な物へと変わっていた。

 視線が痛い。失敗した。子供相手に熱く語るなんて、どうかしてた。どうしてこうなった。

 アルトは、いっそ頭を抱えたい思いだったが、尊敬を含んだ眼差しがセナトール小王子から向けられていたので、我慢してカッコつけ続けるしか無かった。

 しばしそんな居心地の悪い空間で、ただ波間に視線を漂わせていたが、その時、雰囲気を変える切っ掛けになり得る声が後方から上がった。

「海防艦が来たぞー!」

 初めに言ったのは船員の誰かだったが、同様に気付いた船員達は俄かに歓声を上げて東に見えた新たなガレー帆船に向かってしきりに手を振っていた。

 『タンホイザー号』は、対海賊戦後の処理をしつつ、海賊と海賊船を引き渡す海防艦を待っていたのだ。

 レギ帝国において海防艦とは、輸送船『タンホイザー号』とは違い純粋な戦闘艦なのだが、まだ海軍と言う発想があまり浸透していないこの世界での海防艦の役割は、海賊や海の魔物の討伐である。

 ただそれらも滅多に現れるものではないので、レギ帝国にある海防艦といえば、ここでお目見えした『ヴォルフラム号』だけだった。

 海防艦『ヴォルフラム号』。先に戦った海賊船よりひと回り大きく、左右から突き出た櫂の数は併せて46本。しかも漕手はいずれも奴隷などではなく、歴とした帝国軍人たちである。お陰で海賊船の様な異臭に悩まされることはない。

 もっとも、現在は海賊船を接舷させているので臭いには変わりなかった。

 白兵小隊は『タンホイザー号』の倍で2小隊12名が乗り込み、兵装は『大型弩砲(バリスタ)』を左右に2門ずつ、艦首に1門で、計5門装備している。実に頼もしいといえる陣容だ。

 セナトール小王子との話を打ち切る切っ掛けとなったこの海防艦の来訪は、アルトにとって神の救いとさえ感じられ、思わず頬を緩ませた。

 だが、そんなホッとしたのも束の間、マスト最上部の物見の慌てた声で、船内は一気に緊迫感で包まれた。

「何かおかしい。戦闘旗が上がってる! 撃って来やがった!」

 見れば、どんどん大きく見えてきた海防艦『ヴォルフラム号』の船首から、『大型弩砲(バリスタ)』の太い矢が放たれたところだった。

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