一夜*心と体
”こちら”の世界へようこそ。此処は夜が続く世界。そして今から物語が始まる世界。
「…」
「…よう」
「やっほぅ、こんばんは!」
「こんなかっこうしてたんだな、おまえって」
「そっちもそんな格好してたんだね、素敵っ!」
「そう…?」
「うん!」
このお話の主人公達です。お2人とも女の子です。1人は”こちら”のお方ですが、もう1人は”あちら”のお方です。
「っていうかほんとに目の前に居るんだよね!?あっ軟らかいしあったかい!!本物だぁ!」
「それいがいにだれだっていうんだよ、このばかが」
「そうだね…ww…『はじめまして』心!!」
「『はじめまして』体…」
”こちら”のお方が『心』で、”あちら”のお方が『体』と言うお名前です。
「へぇー…やっぱ”こっち”に来ちゃったんだなぁ…。あ、今気づいたけど、外見は変わらないんだね…なんか悲しーいwww」
「そうだな…ずいぶんいたいたしいかっこうだな」
「うん。まぁ其処まで気にしないけどね!何か慣れちゃったし?」
「ふうん…そうか、ならいいけど」
「まぁ、自分の傷もあるしねー」
体の身体は傷だらけです。見ているだけでも痛々しいです。「慣れちゃった」で、済む様な代物では無い気がしますが、本人が其れで良いのなら良いのでしょう。其れに対して心の身体はすべすべぴかぴか。傷1つ付いていない、箱の中の人形の様です。差が凄まじいです。体の傷の事も出ましたので、少し2人の外見などを観察してみます。2人は見るからに不健康な身体の色をしています。かと言って病弱そうな雰囲気はまるで感じません。そして2人の服も白、と言っても乳白色で、形は違えどお揃いのワンピースです。それぞれの個性が判る様なデザインです。
「やっぱ暗いねぇ!!テンション上がるわーwwwww深夜テンションぅわっほい!!!!」
こちらはテンションの高い体。随分顔色が悪いですが、元気はつらつです。地面を擦るほど長い黒髪で、毛先30センチ位は痛みすぎてばさばさ広がっています。前髪はぱっつんですが、センター分けしていて、小さなおでこにある変色した皮膚とくっきりと浮き出たクマが丸見えです。腕、脚、首、頬、ちらりと見える胸元に至るまで、処狭しと傷が並んでいます。一般庶民から見れば随分痛々しく思うものです。所々青黒く変色した大小様々な痣が特に目立ちます。鈍器か何かで殴られた痕なのでしょうが、詳細は体自信が話してくれないとさっぱりです。
「あたりまえだろ…なんたってよるのせかいなんだからな」
こちらは何だか落ち着いた態度を一貫して貫いている心。体よりかは顔色が良いですが、何となくこちらの方が気だるそうな印象です。膝位の長髪で、青みがかった白色をしています。緩く2つで結び、結んだ時に使った薄い青磁色のリボンの端で、ばってんを毛束の上に作っています。前髪は体と同じくぱっつんですが、前に出しています。横髪は首を一周させ、正面で結んでいます。
「っはー…段々慣れてきたから移動しようよ」
「そうだな、いどうするか」
此処は夜の世界。2人にとって、とても大切な世界。