少年少女爆発 少年Aサイド
最近俺の友人が可愛い子に目をつけられた。
「ぐふっ!?」
「……」
「え、あ……ありがとうございます」
見事なローリングソバット後、何故か頭を撫でられお礼を言ってしまう。
混乱してたってそれはない、と思いながらその様子を見た。
少女が去った後、友人は唸りながら立ち上がる。
「いやあ、見事だったな」
「てかお前、本当に何したんだ?」
「だから何も……でも何か今日は労られた?」
自分でも理解できていない状況を、回りが分かるはずも無い。
まあ、面白いのでしばらくは傍観をしていようと思う。
「うええ……寝過ぎた」
時間は昼休みがもう終わるころ。
中庭で昼寝をしていて寝すぎてしまったらしい。
まあ、予鈴が鳴る前でよかったと思いながら伸びをする。
少し強い風が吹き抜けた。
「あ」
視界に映った一人の少女。
そして、宙を舞いひらりと落ちていく白い紙。
きれいだ。
素直にそう思える光景がそこにあった。
よく見ると、少女の姿には見覚えがある。
あの友人に技をかけに来た少女と一緒にいた子だ。
そして、内の学年でも1、2を争う美少女。
俺的には、美人というより可愛いの方があうと思う。
ふわりとした雰囲気や、いかにもお嬢様、といったところが。
何をしてるんだろう、と見ていると、少女は上履きのまま地面に飛び出した。
どうやら先程の風で飛んだ紙を集めているらしい。
ふと。
立ち止まったのは池の前。
よく見ると、池の上に一枚、白い四角がふわりと浮いている。
池のふちから手を伸ばしても届かない距離。
池の深さは、確かそんなに深くはなかったとは思う。
少女は暫く池の前で迷っているようだった。
が、一人うなづくと。
「え」
大人しそうに見えた少女は、どうやらすごく大胆だったようだ。
上履きを脱ぎ始めた少女を見て、思わず俺は立ち上がっていた。
「ちょい待った!!」
「え」
がし、と肩をつかんで、今にも池に足を入れそうな少女を止めた。
驚いた少女は、目線をこちらへと向ける。
遠めで見てもそうだったが、彼女はいたく綺麗だった。
長く伸びた黒髪がふわりとゆれ、その下の肌は対照的に白く。
ぱちりとした目は、不思議そうにこちらを見つめていた。
思わず見とれそうになるが、はっとして。
「俺が取るから、とりあえず上履きはいて!」
「え、いえ、そういうわけには」
「いいのいいの!汚れちゃうでしょ」
大胆な上に真面目であったか。
言葉では聞きそうにないので、すぐさま行動に移すことにした。
上履きを吐き捨てるように脱いで、池に足を踏み込む。
浮いていた紙を拾い上げ、すぐに戻った。
紙は水に濡れているが、そこそこ頑丈な紙だったらしく破れたりはしていなかった。
「よし、乾かせば大丈夫そうだな」
「ありがとうございます、助かりました」
「どういたしましてー」
キーン コーン
「やべ!?」
予鈴が小さく聞こえてきた。
このままでは俺も彼女も授業に間に合わない。
「これ、何処にもってくの?」
「あ、職員室です」
「よし、じゃ行こう!」
彼女の持つ残りのプリントを持ち、空いた手で彼女の手を掴んだ。
もたもたしている暇は無い。
「全力疾走ー!」
「ふわっ!!」
濡れた足が冷たかったが、気にせずに思いっきり走った。
二度目のチャイムが鳴るまで、もう少し。
「お前は……」
いつものため息を吐く教師を見て、はは、と軽く笑っておく。
何時ものこととはいえ、お説教は勘弁して欲しい。
「そうかっかしないで、ほらプリント持ってきたんだし」
「あの、汚れたのも遅れたのも私がプリントを池に落としてしまったからなんです」
教師が言葉を言う前に、俺の隣で彼女が頭を下げた。
いつもならもう少し言葉があるのに、今回は仕方ない、といった様にため息を吐いて。
「とりあえず授業始まってるから急いで教室にいけ。お前は足拭いてからな」
「ありがとうございます」
「え、何で先生何時もより優しくない?」
「日ごろの行いとだけ言っておこう」
「何それ!?」
何か納得はいかないけど、隣でくすりと笑う顔を見ると得した気分になったのでよしとしよう。