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第1章 異世界へ 23

 転生前 23



「…さあ、どのようなギフトを望みますか?」


 …ならば、お願いする。

 

 せめてずっと思い続けていられるように、けしてくじけぬ意思を。

 

 そして、愛する人に幸運をもたらす力が欲しい。

 

 あと、かなうなら…、再会のための力を。


「けしてくじけぬ意思、愛する人の幸運、再会のための力、の3つですね。分かりました。かなり風変りなギフトになりそうですね。ですが、どんなギフトを得ても、結局はその力をどう使うかです。…まあ、あなたなら大丈夫だと信じています。それでは次のあなたの人生が、あなたの魂に安らぎを与えんことを。」


 その言葉を最後に、光の珠と光の世界は薄れていった。







 転生後 23



 サクラがパーティーに加入して1週間が経った。

 俺はすでにDランクに昇格していた。

 この1週間は、3回の討伐依頼をこなすハードスケジュールとなった。

 今日の討伐も討伐自体は成功だった。

 5匹のオークの討伐だった。

 俺達の奇襲で始まった討伐は、最初に遠距離からサクラの弓でオーク1匹の目を射抜き一時戦闘不能にし、さらにマリナの結界魔法で1匹のオークを足止め。

 残り3匹のうちの2匹を俺が引き受け、残りをカルナとマリナの近接攻撃とサクラの弓で仕留め、最後に足止めしていた2匹を仕留めた。


 サクラはさすがDランクなだけはあり、弓の威力、精度はかなりの物だった。

 俺はあれだけ苦戦したオークをかなり楽に倒せるようになっていた。

 気を用いるようになってから動体視力、反射速度、筋力が格段に上がった。

 マリナもかなり気力を使いこなせるようになっていた。

 気力には、驚いたことに魔法の威力増強効果もあった。

 それは、結界魔法の展開中に、自身が格闘を行えるレベルにまで達していた。

 さらに魔法の威力が増しただけでなく、メイスを用いての近接格闘もかなりのレベルでこなせるようになっていた。

 

 ただ、討伐成功にもかかわらず、パーティーの空気は重かった。

 明らかな成長にもかかわらず、マリナの表情には後ろめたさが現れていた。

 そして、


「くそっ……、なんで……。」


 カルナは自身のふがいなさに、体を震わせていた。

 カルナの剣よりも、マリナのメイスの方が明らかにオークにダメージを与えていた。


 カルナだけは気力をお世辞にも使いこなせてるとは言えなかった。

 多少の筋力及び反射速度の増加はあるようだが、マリナと比べると微々たるものだった。  




 ○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●




「”オーラの力”は誰もが元々持つ力だよ。そして、自然に使っているけど、自由には使えない力だとも言える。高レベル冒険者は無意識に使っている人が多いんだけどね。効果も個人差が大きいんだ。肉体の強化が中心なんだけど、魔法使いの場合には魔法の威力や扱える魔力の増加にもつながる。意識して使っている少数の人達が、”オーラの力”と呼んでるんだ。」


 ”オーラの力”ねえ。


「なんでそんなに便利な力が知られていないんだ?」


「便利な力だからだよ。そして同時に便利なだけの力じゃないからともいえる。」


「どういう意味ですかマモルお兄様?」


「まず、魔力と”オーラの力”を誤解している人が多いんだ。肉体の強化そのものを行う魔法もあるから無理もないんだけどね。魔力は世界が持つ力。世界の意思が顕現するための力とも言われている。魔力をどれだけ取り込み、どれだけ操作できるかはその人の素質次第。だから、素質がない人は魔法使いになれない。それで多くの人は魔法が使えないから肉体の強化なんかできないと思い込んでいる。これが理由の一つ。」


「魔力に対して”オーラの力”は、魂が肉体を動かすための力だと言われているんだ。だから、本来は魔法と違い素質に関係なく誰もが使える力のはず。だけど、どうやら魂が肉体を身にまとう時に、扱える”オーラの力”が決まってしまうようなんだ。だから、同じ種類の生物は、大体同じ程度の力を持つことになる。つまり、人間だったら人間が使える”オーラの力”は大体一定なので、それほど個人差が出ないってこと。それで、平均的な上限が、ギルドランクDに届かないあたり。それに対して、オークは元々平均がギルドランクDの位置にいる。それだけ生まれ持った肉体に縛られた力ってことだね。つまり、種族の平均を超えれるのは少数の例外だけなんだ。だから、ある意味魔法と同じように素質が左右するとも言える。個人ごとの上限があらかじめ決められていると言い換えてもいい。いちいち”オーラの力”なんて堅苦しい言葉を使わなくても、結局はあらゆる肉体強化のトレーニングが”オーラの力”の強化になっているってこと。これがあまり知られていないもう一つの理由。」


「そして3番目の最大の理由。”オーラの力”の使い方は基本的に個人個人で全く異なるんだ。つまり、”オーラの力”を意識して使える人がいくら自分のやり方を人に伝えても、教えられた人が”オーラの力”を使えるようになるとは限らない。むしろ、普通なら使えるようになるほうが珍しいってこと。ほとんどのDランク以上の人は肉体強化を繰り返しながら、少しずつ少しずつ”オーラの力”が増えていただけのこと。使うことが可能になれば大きな力をもたらしてくれるけど、その方法を伝えることができない。だから、使える人も教えようとしない。」


「そんな、嘘だ!だって、兄ちゃんもサクラさんもマモル兄ちゃんに教わったって言ったじゃないか!兄ちゃんはあんなに急に強くなったじゃないか。」


 カルナが必死になって声を上げた。


「そうだね、僕の故郷では”気”と呼んでいる力。僕は”気”の概念が”オーラの力”と同質の物だと気がついたんだ。そして気の流れはコントロールすることでバラバラの状態よりも大きくすることができる。簡単に説明するとね、気とは肉体を動かすために体の中を循環しているエネルギーのようなものなんだ。体の中心、ヘソのやや下の腹部に位置する丹田から体中をめぐる不可視のエネルギー。普通は意識に乗ることもなく、ただゆっくりと体をめぐってるだけの力。この”気”の概念を理解して、”気”の循環を認識して、意識して”気”を循環させることで、”気”の循環ルートを整え、循環量を増やすことができるようになる。つまり気力が増大し、気力が増大することで肉体の力も強化される。サクラはエルフ。元々人間よりも肉体の上限値が高いんだ。だから”気”の概念を理解したことで、その成長速度が一気に上昇し、肉体強化が進んだ。そして、タツヤは僕と同郷だ。覚えてないようだけど、元々”気”の概念は知っていたんだよ。あちらではそれなりに知られているんでね。なじみがあったと言えばいいのかな。だからすんなりと理解できた。そして肉体が持つポテンシャルを最大限使えるようになったってことだね。もちろんタツヤ本来のポテンシャルが高かったと言うのもあるよ。」


「それは結局は、元々の素質がなければどんなに”気”の力を用いても強くはなれないと言うことでしょうか?」


 恐る恐る聞くマリナの言葉に、マモルは首を横に振る。


「元々人の肉体は、潜在能力の3割ほどしか使われていないんだ。”気”の循環をコントロールすことで今まで使われていなかった力を使いこなせるようになる。そして今まで使われていなかった力を使うことで、さらなる肉体の強化につながる。だから、”気”の概念を理解し、”気”をコントロールできるようにさえなれば誰でも強くなれる。」


 それを聞いてカルナとマリナの顔に喜びの笑みが浮かんだ。


「でも、どれだけの速度で強くなれるかは結局その人次第だよ。同じ剣術を教わっても、どれだけ強くなれるかはその人次第なのと一緒だね。それに、デメリットもある。」


「それは気になるな。デメリットとはなんだ?」


「元々潜在能力の3割しか使われていないのは、本来それ以上使うと体に無理がかかるからなんだ。だから制限されている。その制限を外すわけだから、無理をすれば肉体への負担は増える。そして、”気”は魂が肉体を動かすための力だ。”気”の使い方に無理があると、魂に負担がかかる。ただ、”気”のコントロールで肉体の負担も軽減できるし、”オーラの力”の増強は魂の強化につながるとも言われている。バランスが難しいんだ。」


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