タイプ
「矢切さんて、どういう人がタイプなんですか?」
「……おお」
休憩室で休憩中、隣に座る年下の子にそう言われた。
齢30歳、この歳になってそんな新鮮な質問をされると思わなかった。
思わず変な声を出してしまった。そんなこと気になるだろうか。
「それは仕事仲間として?恋愛対象として?」
「後者のつもりで聞いたんですけど、前者も気になりますね」
「どっちも気になるんだ…」
奇特な子。柊君はいつだって変わってるな。
両手に挟んだ缶コーヒーをぐりぐりとこねながら考える。
「仕事仲間としてなら、効率がいい人。お喋りが長くない人、めんどくさい愚痴言わない人」
「矢切さん効率重視ですもんね」
「慣れなくてとかはしょうがないんだけど、自分のこだわりとか好き嫌いで無駄が発生する人は内心ぶん殴ってる」
あははと楽しそうに笑われる。私は本気ですけどね。
後者は…と頭を悩ませる。
「恋愛対象としてか~…好きってより、嫌いなのが束縛されること。干渉されること。それをしないなら別に好きになれるんじゃないかな」
「条件少なすぎません?見た目とかは?」
「ええー清潔感あってくれれば別に…いや、でもわかんないよね。いざ付き合うとかしたら絶対に無理な見た目とかあるかもしれないし」
私が今その気がなさ過ぎて思い浮かばないだけで。
そうかあ、と少しだけ視線をさまよわせて、ずいとこちらへ体を寄せてくる。
思わずちょっと後退する。近いな。
「俺はどうですか?見た目的に無理な感じします?」
「…柊君はかっこいいほうなんじゃないの?まあ、ひとつ言わせてもらえば」
よいしょ、と席を立つ。こちらにのめっていた柊君の肩を人差し指で押して距離をとる。
「私はパーソナルスペース狭いのが苦手だよ。今後はよろしくね?」
にっこり笑ってその場を離れる。
覚えておきます、と呟くような声が聞こえたのでちょっと笑った。
矢切十子 30歳
柊春近 24歳
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