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また会う日まで 

「ハァ!ハァ!ハァ!」


 荒い息遣いが、城の壁に木霊する。

 目の前……城門の外側に群がっているのは、竜のシンボルを掲げる侵略者数千人。

 対して、城側に立っている兵は百人を切ってしまった。

 圧倒的な戦力差。敗北は目に見えてわかっているようなものだった。

 それでも、逃げる訳にはいかない。


「……ハァ!ハァ!……モンキ、まだやれるかい?」

「誰に向かって聞いてんだ、アゲハ?星一番の戦士によぉ……アゲハ殿下こそ、足が震えてマスヨ」

「ハハッ、流石にね。……君は星を護る要だ。僕が最初に突っ込む。遠慮なくありったけの力で帝国軍を倒してくれ」

「…………」


『モンキ』と呼ばれたマントに身を包んだ青年は、『アゲハ』と呼ぶ青年に応えなかった。

 前方の帝国軍を見据えれば、視線を逸らすことなく「殿下」と口を開く。


「ここは俺に……“()()()()()()()”たる自分にお任せください」

「?……な、何を言って……?」

「アグリ様、殿下のことを頼みます」


 モンキが告げると同時に、アゲハの手首を誰かが握った。アゲハが振り返れば、そこにはドレスを纏った美しい美女が一人。


「アグリ!?何で……」

「アゲハ、速く!」

「ウワッ、ちょっ!!?」


 アグリはアゲハの腕を引っ張り、城の中へと駆け出した。

 そんな二人の背中を横目で見送り、モンキは右手の槍を軍団へと構える。


「俺が相手だ!!帝国軍!!!」



 *       *       *



「ちょっ、アグリ!?ちょっと……待ってくれ!!」


 城の廊下を走ること五分。

 アゲハは足を踏ん張り、アグリの足を無理矢理止めた。

 息が切れる中、アゲハは「アグリ」と怒ったように眉根を寄せる。


「一体何を……早く戦場に戻らないと!!いくら何でも、モンキだけじゃ帝国軍を相手にすることはできない!門が破られれば、城の中に避難している国民全ての命が奪われてしまう!!」

「…………」

「……もし違っていれば、笑ってくれて構わない。この道……先にあるのは宇宙船だけだ。君は僕に『民を捨てて逃げろ』って言ってるの?」

「…………」


 アグリは応えない。

 図星と捉えたアゲハは「絶対にそんなことできない」とアグリを手を振り払った。


「僕は王子だ!!この星を!民の皆を護る義務がある!!勝てなかったとしても、無駄死にだとしても!!王家の人間なら、星と一緒に死んでこそだ!!絶対に逃げない!!皆を置いて逃げるもんか!!最期まで皆と一緒に闘うぞ!!」

「……知ってるわ、貴方がどういう人か。そんな貴方だから、私達は“希望”を託すことができるの……」


 小さく呟けば、アグリはフワリとアゲハに微笑みを向けた。

 そして「勘違いさせてしまい、申し訳ありませんが」と言葉を続ける。


「星を脱出するのは私です。民を護るのが王家の義務なら、種を未来へ繋ぐこともまた王家の義務です。私は正式にはまだ王家の人間ではないですけど……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。アゲハには私の護衛兼、種の生存をその目で確と見届けて欲しいのです」

「!!……それならそうと予め言って貰って良い?何でモンキは知ってて、僕は知らないの?」

「先に知ってしまえば、殿下は戦場離脱を中々なさらないかと思いまして……」

「絶対嘘だろ。そもそも君の護衛をしないなんて選択肢ある訳ないよ。……そういうことなら、喜んで。君のことは僕が何に置いても護ってみせる。さあ急ごう」


 二人は再び廊下を蹴った。



 *       *       *



 宇宙ステーションへと無事辿り着いた二人は、宇宙船を打ち上げる準備に取り掛かっていた。


「アゲハはハッチをお願いします!」

「ああ!」


 分担作業だ。

 アグリは宇宙船へと乗り込むと、進路設定を打ち込んでいく。アゲハがステーションの天井ハッチを開放できた所で、アグリの作業も終わった。


「アグリ、こっちは準備オッケーだよ!」

「こちらもです!……アゲハ……」


 側へと駆け寄ってくれたアゲハに、アグリが両腕を広げる。

 意図がわかったアゲハは眉を下げて微笑むと、アグリの身体を抱き締めた。


「もしこの闘いに勝ったら、絶対に君を迎えに行く。約束するよ」

「えぇ。ずっと……待ってますから」


 そして二人はキスを交わす。


「……ッ!?」


 口の中に無理矢理入れられた固形物に、アゲハが目を見開く。アグリは真剣な眼差しでアゲハを見つめていた。

 悲しげに……しかし誇らしそうに笑うアグリ。


「ごめんなさい……愛しているわ、私の王子様アゲハ

「!!?…………」


 言葉を伝えたいのに、アゲハの口は開閉するだけで声を発することができなかった。

 段々と意識が保てなくなり、視界が落ちていく。

 完全に眠ってしまう頃には、アゲハは宇宙船の中。母星を脱出し、宇宙へと飛び立ったのであった。



 *       *       *



「ッ!!?…………」


 凄まじい衝撃により、アゲハの意識が覚醒する。


 ……ここは……?


 頭がぼんやりとしたまま、辺りを見回せば自分が宇宙船の中に居ることに気が付いた。


「ッ!……」


 すぐにシートベルトを外し、宇宙船のパネルを確認する。

 現在地が表示されれば、元居た故郷とは遠く離れた見知らぬ土地であることがわかった。しかも日付けが変わっており、約一日宇宙を飛行していたことを知る。


 ……そんな……何故……僕一人助かったって、何の意味もないのにッ!!


 悔しさの余り、力一杯握り締めた拳を宇宙船の壁に打ち付けた。宇宙船の素材は小惑星にぶつかっても耐えられる超合金。逆にアゲハの拳が酷く痛むが、そんなことを気にしてる余裕はなかった。


 ……とにかく戻らないと……宇宙船は……ダメだ。メインのコンピュータがやられてる。着陸に失敗したのだろうか……どうしよう……僕じゃ直せない……アグリ、モンキ……皆…………。


 絶望感に打ちひしがれるアゲハ。

 そんな中、ふと人間の声が聞こえた気がした。心なしか、衝撃音と共に宇宙船が揺れている。


 ……この宇宙船には情報が入ってないけど、もしかして人の住んでる星なのかも……。


 アゲハは宇宙船の扉を開けた――。

読んで頂きありがとうございました!!


前話の後書きで伝えていた、飛行術の裏設定です。


リーファもシアも当たり前のように空を飛んでいる描写がありますが、空を飛ぶ種族は限られています。

一つはシアのように、身体の一部に羽が生えている種族(鳥人種や虫人間など)

そしてもう一つが、超能力持ちの種族です。

羽を持っていない種族が飛べる原理は飛行機と似たようなもので、重力に逆らえる巨大なエネルギーを発射することで、その反動で空気を押し、空を飛んでいます。その使われるエネルギーが超能力の元と同じで、体内に流れるその種族だけのオリジナルの力の源です。(シアなら身体を循環している熱エネルギー。リーファは金属を操る時に使う月猫族のみに与えられたエネルギー)そのオリジナルのエネルギーを外へ放出することで、重力に反して空を飛んでます。

ちなみに、超能力を持っていない種族も飛ぶことはできますが、オリジナルのエネルギーがないので、命を削ることでエネルギーを生み出し、空を飛びます。その為、余程追い詰められた状況でない限り、超能力も羽もない種族が空を飛ぶことはあり得ません。

飛ぶこと自体はどの種族もできる!


こんな感じです。次回もお楽しみに!

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