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6 満月の夜

夕方になり、少し早めの夕食をとる。

白狼になっているとしても、どうしても生肉は受け付けないから、アシーナさんが食べる物と同じように、肉は火を通した物を食べるけど、基本は果物だけでもお腹がいっぱいになる。この東の森には色んな果物が生っているから、色んな果物が食べれて嬉しい。


そうして、外が段々暗くなってくるにつれて、何となく…身体がムズムズすると言うか、違和感?のようなモノを感じてくるようになり──



「太陽が完璧に沈むわ。今日は満月。どうなるかしら?」


と、アシーナさんが呟いた後、私の体が銀色の光に包まれだした。


『─っ!?』


眩しくて、何が起こっているのか分からなくて、ギュッと目を瞑る。すると、少しずつ光が落ち着いていったのか、眩しい感じがなくなり、ソロソロと目を開けると──


「あ、視線が………高い?」


右手を持ち上げて見ると、グウ、チョキ、パーができる5本指の手があった。


「戻ってる!?」


両手でガッツポーズをしながら、後ろに居るアシーナさんを振り返ると「良かったわね」と笑いながら手鏡を渡してくれた。その鏡を覗くと、確かに、人間(ひと)の姿に戻った私が映っている。


ただ──


黒い瞳の中にあるキラキラはそのままそこにある。

肩程迄ある髪色は黒だけど、毛先に近付く程色が薄く─アッシュグレーになり、毛先はホワイトアッシュな色になっている。


きっと、月の加護の影響なんだろう。お金を掛けずに、カラーリングをした─感じかな?


そして、とっても不思議な事に、この世界にやって来る前の服装である制服を着ていた。


ーこれも、ファンタジーな要素だよね?ー






*アシーナ視点*


私の目の前で、白狼から人間(ひと)の姿に戻った“ルーナ”である“キョウコ”は、まだまだ幼さの残る女の子だった。

白狼として対応している様子が、あまりにも落ち着いていて、言葉遣いも丁寧だった為、良いところの成人した女性だと思っていた。

それが、今は手に持っている手鏡を、クリクリとした目で覗き込んでいる姿は、子供っぽくて可愛らしい。


ー白狼姿のルーナも、とても可愛らしいけどー


となれば──異世界に居るであろう親にとっては、子が居なくなる─“死”と言うのは……辛い事だろう。それは、キョウコも同じ事。元の世界には還れず、親にももう二度と会えないのだから。


「キョウコは、まだまだ幼かったのね。いくつなの?」


「幼い……ですか?えっと……一応18歳です」


「18!?」


これには驚いた。この世界では18歳で成人と見做される為、キョウコもこの世界では成人扱いとなる。キョウコは貴族でも無い為、社交界デビューをする必要な無いけど。


兎に角。これで、キョウコが完璧に白狼になった訳ではないと言う事が分かった。1人はぐれてしまったキョウコを護る為の、水の精霊の加護の一つなんだろう。


「ところで、その服は……」


「あ、これは、私がここに来る前に着ていた服です。何て言うか…不思議な原理ですけど……元の姿に戻った時に、裸じゃなくて良かったです」


ニッコリ笑うキョウコ。


ー気になったところはソコなのね?ー


一晩泣いただけで、気持ちに区切りがついた訳でも、消化できた訳でもないだろう。でも、キョウコは、あの日以降は泣く事も怒る事もない。

一緒に召喚された筈の4人。話を聞いてから、あちこちから情報を探ってみたけど、キョウコ以外に異世界から()()()()()ような者達は見付からなかった。一緒に召喚されて、1人居なくなっていたら探されるだろうけど、そう言う話も何処にもなかった。この国以外の国に召喚されたのか──もう少し調べる必要がある。


キョウコは召喚の魔法陣から外れて飛ばされてしまったけど、魔力と、月と水の加護を得たと言う事は、この世界に()()()()()()()()()と言う事。弾かれてしまっても、同じ月属性の魔女(わたし)の管理する東の森に落ちて来たのも、何かしらの理由があるかもしれない。ならば、私が、この世界でのキョウコの親となり師となろう。



「その服では、この世界では浮いてしまうから、明日は…服やこれから必要な物を買いに行きましょうか」


「これから…必要な物…。あの…私…このままここで、アシーナさんと一緒に居ても良いんですか?」


クリクリとした目を更に大きくして、驚いたような顔をしているキョウコは、とても可愛らしい。


「勿論、キョウコが嫌だと言うなら無理強いはしないけど─」

「嫌じゃありません!嬉しいです!ありがとうございます!」


と、キョウコは本当に嬉しそうに笑う。そんな嬉しそうに笑うキョウコを見ていると、私まで嬉しくなる。


ーこの笑顔を守ってあげたいー


素直にそう思えた。





ー勿論、白狼姿のルーナも、とっても可愛らしいと言う事は……言うまでもないー






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