37 杏子、打ち明ける
「“召喚の儀”……ですか………」
「えぇ。その4人の名前が、ハルマ、イツキ、サヤカ、ミオ。着ている服が、キョウコと同じだったわ」
膝の上に置いている手をギュッと握る。
「それにね、ハルマが、“もう一人居る筈だ”って。“キョウコも一緒に居た筈だ”って」
「…………」
ーあの4人だ。間違い無いー
「私の言っていた4人に、間違い無いと思います。でも……何で今なんですか?」
私がこの世界に落ちて来てから2年。あの時、一緒に召喚されたんじゃなかったのだろうか?
「それに関しては、予想でしかないのだけれど……キョウコは、ここに落ちて来る前に、サヤカに押し退けられたと言っていたでしょう?その時に魔法陣からはみ出てしまって、他の4人と時間軸がズレたのかもしれないわ」
「なる…ほど?」
なんだろうか?でも、あの時は、何故1人だけ?と思ったりもしたけど……。今にして思えば、あの4人と離れ離れになって良かったのかもしれない。
「ん?と言う事は……私とあの4人とは、歳が2つ差があるって事ですよね?」
「そうなるわね。」
私は次の誕生日を迎えると20歳になる。大学生と高校生。
ー何だろう……歳が違うだけでも嬉しいと思ってしまうー
「それでね、キョウコはどうしたい?」
「どうしたい……とは?」
「ハルマは、キョウコを探して欲しいと願っているわ。勿論、探す事になるわ。召喚した側のミスもあるからね。それで、キョウコは、あの4人の所に戻りたい?それとも───」
“戻りたい”
ー違う。もともと、あそこは私の居る場所じゃなかったー
「キョウコは既に聖女ではないと分かっているから、聖女として動かないといけない事はないから、ハルマ達には“探したけど見付からなかった。この世界に来た様子もない”と答える事ができるわ。そもそも、ウンディーネ様の加護もあるから、キョウコが嫌がる事はしないけれど……。ただ、白狼は本当は、異世界から来たキョウコだと言う事を、国王陛下には報告しなければいけなくなるかもしれないわ」
できる事なら、もう陽真達と関わりたくなんてない。ないけど──
『──きょうこ!』
あの時、陽真の顔は、いつも私を揶揄ったり嫌味を言う顔じゃなくて、本当に必死な顔で──
幼い頃は優しかった。いつも私の心配をして──
「正直に言うと、もう、あの4人とは関わりたく無いんです。でも、陽真は……私の幼馴染みなんです。あの日、私1人だけ離れた場所で光に包まれた時、陽真は私を助けようとして手を伸ばしてくれたんです」
「──そう」
アシーナさんは、それだけ口に出した後、私がポツポツと話す事をただただ聞いてくれていた。リュークレインさんも。
昔は仲が良かった幼馴染み。それが段々疎遠になって─と思えば、私に絡んで来るようになり、それを疎んだ女子から苛めにあい──ようやく離れられると思えば、まさかの同じ高校。そこからの、陽真から振り回される日々と、更なる女子からの苛め───
ー一気に話してみると、私って結構可哀想な学生生活を送ってるよねー
なんて、ちょっと呑気?な思考に傾いていたせいか、目の前にいる笑顔のアシーナさんとリュークレインさんの目が全く笑っていなかった事には気付かなかった。
それに、あの変な執着心がある陽真の事だ。“見付からなかった”では、素直に納得しないかもしれない。
「一つ、提案?お願い?なんですけど──」
と、私はアシーナさんにとあるお願いをする事にした。
******
杏子からのお願いを聞いた後、アシーナとリュークレインはまた王城へと戻って来た。そのまま国王陛下の謁見を願い出て、今は、その返事待ちの為に第二騎士団副団長の執務室にやって来ている。
「レイン、大丈夫?」
「叔母上こそ……」
「「…………」」
「召喚される聖女の条件に、“清廉潔白”はないのかしら?」
「“死に直面した者”、“こちらの世界に魂と身体が馴染む者”です」
「腐った魂でも良いのね……」
「叔母上………」
リュークレインが苦笑すると、アシーナはふぅ─と、軽く息を吐いた。
「ハルマは…アレよね?好きな子を苛めるタイプのお馬鹿ね。おまけに、そのイジメに“愛があると伝わっている”と思ってる自惚れタイプの………」
そんな愛情は、杏子には一切伝わってはいないし、寧ろ嫌われているなどとは微塵も思っていない。痛い男の子だろう。
「あの4人の鑑定で、どんな結果が出るのか……楽しみだわ」
と、東の森の魔女がニッコリ微笑めば、第二騎士団副団長も
「本当に……楽しみですね」
と、ニッコリと微笑み返した。
そして、そのタイミングで、国王陛下への謁見の許可がおり、2人で謁見室へと向かった。




